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おまけ(本編後のお話です)
四天王ファザーブルの行方
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※ディー視点です。
◆◆
「ファザーブル様はどうやら勇者の近くで監視をなさっている様だ」
「隙を見て殺るつもりですな!流石は四天王の内でも最強と名高いファザーブル様だ!」
「魔王様も安心して復活の刻を迎えられるでしょう…」
魔王の側近たちが口々に言う中、異議を唱えた者がいた。
「ファザーブルが四天王最強だと!?ふざけるな!!
魔王様の二番手はこの俺!四天王最強バーサーク様だ!!
ファザーブルのヤツは少しばかり早く復活しただけだ!俺を出し抜くなんざ、百年早いぜ!!」
◆◆
「アレクさー、最近朝食、ずっと台所で食べてんじゃん、どういう心境なワケ?」
ロリーは内情を知っている、故に、これはアレクを揶揄う為にワザと言っているのだ。その証拠に、口の端がピクピクとしているし、後ろではクリスタルが面白そうに覗き込んで来ている。ドーンなど、『興味は無い』とばかりに顔を本で隠しているが、しっかりこちらに向けている所、魔法で透視でもしていそうだ。
だが、こういう揶揄いも、マックスの居ない時を狙ってやっている為、責められない。
「べ、別に心境の変化などない、ちょ、朝食を台所でとるのは効率が良いんだ、
出来たてをその場で食べられるし、注文もし易い、片付けも楽だ」
アレクは平静を装っているが、長い付き合いの者たちを騙せるものではない。
皆、嬉々とした表情で更に揶揄いにいった。
「まぁ!食べられればなんでも良いという、あのアレクさんが、出来たてを食したいのですって!?」
「ああ、食べられればなんでも良いアレクが、何を注文してんのか、知りたいねー」
「あのアレクさんが、お片付けを気になさっているなんて…ふふふ」
皆、アレクの反応が見たいのだ…
可愛いから…
ああ、あんなに目をまん丸くして、真っ赤になって!!
ああ、見せたくない!!自分だけのものなのにーーー!!!
「皆様、アレク様の食事の邪魔はなさらないで頂けますか?
ロリーさん、今日は忙しくて、ビスケットを焼けないかもしれません。
クリスタルさん、お気に入りの紅茶の茶葉が手に入り難くなっています。
ドーンさん、研究室にコーヒーをお持ちするのを忘れてしまうかもしれません」
それとなく脅すと、皆「ひゅっ!!」と息を飲み、散っていった。
「なんだ、あいつら?」
キョトンとしているのは、アレクだけだ。
俺は「気にせず、朝食にしましょう」とアレクの椅子を引いた。
「ディー、パンケーキがいい!おまえの焼くパンケーキは甘くなくて、ふわふわで好きだ!」
子供の様に強請るアレクが可愛い、『好き』も自分に言われているみたいでうれしくて舞い上がりそうだ。
「はい!直ぐに焼けますから、お待ち下さいね!」
「急がなくていい、おまえの料理してる姿を見るのが好きなんだ、不思議だけど、全然飽きない、それにいい匂いだし…」
頬杖をつき、寝起きの猫の様にうっとりとした表情のアレク…
ああああ!!
最高のパンケーキを焼いて差し上げたいのに、胸はバクバクしているし、手もぶるぶると震えて…無理かも!!
俺の将来を約束した人…アレクが可愛い!可愛過ぎる!!
それを全世界に叫びたいのだが、理性がそれを邪魔し、叶える事は出来ないでいる為、自分の中はアレクへの愛で一杯だった。
「ああ!アレク様が可愛過ぎる!理性がぶち切れないか心配だ…」
早く魔王討伐したい!!頼むから早く出て来て、殺られてくれ!!
そんな事を日々願っていたからか、その日、市場に買い出しに行った帰り、魔物に絡まれた。
【茂みの奥へ行け】
風と共に聞こえてきた声を無視しようとしたが、【従わなければこの場で殺る!】と言われ、ここは従う事にした。
魔物に暴れられたらアレクが来てしまう。アレクは前日まで領主に呼ばれ多忙だったのだ。今日一日はゆっくりと休ませてやりたい。
何で来るかな?このタイミングで…
茂みの奥へ進と、少し開けた場所があった。
地面が揺れたかと思うと、黒い靄のようなものが沸き出てきて、それは見上げる程の大男となった。
頭に牛の様な角があり、ほぼ裸で恐ろしく筋肉質だ。髪も肌も黒いが、目は赤くギラギラと光っている。
【よぉ、久しぶりだな、探したぜファザーブル】
「は??人違いでは?」
魔物に知り合いはいない。おまけに、変な名で呼ぶな!
愛想良く出来る筈もなく、俺は睨み見たが、相手は面白がるだけだった。
【惚けんなよ、ファザーブル、それとも俺様を前にしてチビってんのか?
おまえ随分暴れてるらしいじゃねーか、だがな、俺様が復活した今じゃ、おまえの功績なんか屑だ!
分かったら目障りな真似すんじゃねーぞ!ゴルアァ】
全く意味が分からない。
だが、大牛男の言い分では、まるで俺が魔物みたいじゃないか…
「人違いです、俺は人間ですし、あなたの事は知りません」
【このバーサーク様を忘れたってーのか!?ふざけんな!ゴルアァ!】
不毛な押問答を繰り返すのが目に見えてきて、俺は辟易した。
ふと、「絡まれても迷惑ですので、巣へお帰り下さい」と言った時、それに気付いた。
「あなたは魔物でしょう?何処から来たんですか?」
【ハアア?魔王様の城に決まってんだろうがよー!】
ビンゴだ!!
「魔王はどうしているんですか?」
【ああ、まだ完全には復活されていねー、側近の奴等、俺たちで時間稼ぎしろとか…ヘボな勇者相手なんざ、俺様だけで十分だ!!】
ピクピク…
ヘボ?
「魔王城は何処にあるんですか?」
【なーんだ、おまえ、迷子になってたのかよー!ダッセー!!】
大牛男が爆笑し終わるのを俺は辛抱強く待ってやった。
【魔王城に帰りたかったら、俺を追ってくりゃいいだろ、ま、追い付ければの話だが!】
こいつの事だ、地に潜っていくだろう。
どうやって場所を吐き出させるか…
「方向は?」
【アッチ】
「地上か地下かというと?」
【地下に決まってんだろーよ!】
「人間が行くにはどうやって行けばいいんですか?」
【魔王様の復活を待つんだな!魔王様と共に城も眷属も地より現れ、人間共を食い尽くし破滅させんのさ!!】
「魔王復活までどの位掛かるんですか?」
【二、三月じゃねーか?その前に、俺様が世界の半分を破壊してやるぜ!!
ファザーブル!おまえには負けねーからな!黙って見とけ!】
大牛男は言うだけ言うと、地に沈んでいった。
結局、人違いをしたままだった。
「役に立つような、立たない様な情報だったなー」
魔物と勘違いされた___
笑い話だが、他人が聞けば要らぬ疑惑を持たれ、裁判に掛けられるかもしれない。悪くすれば絞首刑だ。
それは避けたいが…
「アレク様、喜んでくれるかな?」
敵の情報を仕入れたとなれば、褒めて頂けるかも…!!
「焦るな焦るな…!ここは慎重に交渉しないと…」
頭に色々な妄想が飛び交い、口元がにやけるのを止められ無かった。
◇
「アレク様、今夜、お部屋に行っても構いませんか?」
二人きりになった時を狙い、俺がそれとなく尋ねると、アレクはビクリとし固まった。その顔は真っ赤だ…
か、か、可愛過ぎるーーー!!!
「あ、あの、実は、相談がありまして…」
「そ、そうか、勿論、構わない…待ってる」
アレクは手足をぎくしゃくとさせて階段を上がって行った。
いや、もう、可愛過ぎでしょう!??絶対、期待してたしっ!!
ああ!転がり回りたい!!!
《体の関係》は魔王を討伐するまでお預け、それは分かっている。
だけど、あんな反応を見せられたら…
「どうしよう、また、襲ってしまいそうだ…!!」
夜更け、俺は興奮を鎮め、ホットミルクとビスケットを用意してアレクの部屋を訪ねた。
ホットミルクとビスケットがアレクの色気を消してくれる…そんな期待を持っていた。
「アレク様、私です…」
静かに声を掛けると、直ぐに扉が小さく開き、隙間からアレクの目が見えた。
潤んでいて、輝きもある…
ああ、俺の理性、無理そう!!
「ディー、入って」
小声も色っぽい!!
俺はドキドキとしながら部屋に入り、促されるままに応接セットの長ソファーに座った。
アレクは無意識なのか、意図的なのか、俺の隣に座った。
「こっちの方が話し易いだろう?」
ああ!無意識ちゃんだったーーー!!!
でも、上目で見ちゃ駄目だからーーーー!!!
アレクが危険過ぎる…
この人、男殺しだ…
「どうしたの?何かあった?おまえが相談なんて珍しいから驚いた…」
心配そうな声色に、俺の興奮も鎮火した。
こんなに真剣に心配してくれていたのに…興奮してすみませんでした!!
頭の中で土下座し、俺は昼間に仕入れた情報を話した。
「魔王城は東北方向の地下に?それに、魔王復活は二、三ヵ月後?何処でそんな情報を?」
「実は、バーサークとかいう魔物と遭遇し、どうやら知り合いの魔物と間違えられた様で、誘導尋問をしました」
「はああ!??」
アレクが夜更けだというのに大声を上げた為、俺は慌てて手で彼の可愛い口を塞いだ。
「しーーー!!皆さん眠っていますから!!」
「うぐぐ!!~~~!!」
アレクが一通り叫び終わったのを見越して、俺は手を離した。
「バーサークは魔王軍の四天王の一人だ、その知り合いの魔物に似ているという事は…」
「確か、ファザーブルとか呼んでた様な…」
俺がその名を告げると、アレクが「ぶっ!!!」と盛大にホットミルクを噴き出した。
ああ、もう…可愛いんだから!
俺は内心で悶えつつ、布で丁寧に拭いたが、アレクは俺の手を掴み、俺に顔を近付けた。
「ファザーブルは魔王軍四天王の一人だ!」
「そうなんですかー、でも、そんな大物の魔物が、私に似ているなんてあるでしょうか?」
アレクは茫然とし、肩を落とした。
アレクも冷静になり、『あり得ない』と気付いたのだろう。
「ディー、俺の事好きだよな?」
突然聞かれ、俺は「ぐっ」と息を飲んだ。
アレクの瞳が泣きそうに揺れるのを見て、俺は慌てて「好きです!大好きです!愛しています!!」と叫んでいた。
「ディー、魔王になれる、世界を手に入れられるとしても、それを全て捨てて、俺を選んでくれるか?」
「当たり前でしょう!
魔王とか世界とか欠片も興味ありませんし、それに、私たちの目的は魔王を討伐して結ばれる事でしょう?
私にはあなたとの未来しか考えられません…」
俺はアレクの綺麗な手を取り、その甲に唇を落とした。
「ありがとう、うれしいよ…」
ポロリ…
手に透明な雫が落ち、俺の胸はキュっと締め付けられた。
日頃泣かないアレクが涙を零す…その意味に、俺は耐えられなくなった。
「すみません…!」
唯一残された理性がそう零すと同時に、俺はアレクに口付けていた。
アレクは抵抗しない、いや、寧ろ、積極的に応えてくれ、俺は溺れた。
「はぁ…ん!」
「すき…」
「おれも、すき…」
「ディー、きて…」
瞳がキラキラと輝き、その微笑みは天使の様で、俺は抗う術を持たなかった。
「ごめんなさい、約束、したのに…」
「俺が誘ったんだよ?」
「けど…」
「今夜のはご褒美☆」
アレクがちゅっと、俺の鼻先にキスをした。
「ご、ご褒美最高――――――――!!」
「バカ、皆を起こす気か?」
「す、すみません、私、口に出してましたか??」
アレクは笑い、「次までお預けな」と俺の胸に額を擦りつけた。
お預け…
こんな事されて、俺、耐えられるかな??
ああ、早く、魔王を討伐したい!!!
◆◆
【ファザーブルならば、放っておいて構わぬ】
最近、漸く魔王は言葉を発する様になった。
【ヤツは調子に乗りおったからのぉ…】
【我が記憶を奪い、力だけを残した、自我を持たぬただの器よ!】
【我が再び破滅を迎えた時、我が乗り移る為のな!】
「勇者を出し抜く策ですな!流石にございます、魔王様!」
【ギャッギャッギャ】
魔王が笑う、側近たちも高らかに笑った。
「マジか、あいつ記憶無かったのかよ!けど、自我って奴はあったぞ?」
バーサークの呟きに耳を貸す者はおらず、当のバーサークも直ぐに興味を失ったのだった。
◆◆
「ファザーブル様はどうやら勇者の近くで監視をなさっている様だ」
「隙を見て殺るつもりですな!流石は四天王の内でも最強と名高いファザーブル様だ!」
「魔王様も安心して復活の刻を迎えられるでしょう…」
魔王の側近たちが口々に言う中、異議を唱えた者がいた。
「ファザーブルが四天王最強だと!?ふざけるな!!
魔王様の二番手はこの俺!四天王最強バーサーク様だ!!
ファザーブルのヤツは少しばかり早く復活しただけだ!俺を出し抜くなんざ、百年早いぜ!!」
◆◆
「アレクさー、最近朝食、ずっと台所で食べてんじゃん、どういう心境なワケ?」
ロリーは内情を知っている、故に、これはアレクを揶揄う為にワザと言っているのだ。その証拠に、口の端がピクピクとしているし、後ろではクリスタルが面白そうに覗き込んで来ている。ドーンなど、『興味は無い』とばかりに顔を本で隠しているが、しっかりこちらに向けている所、魔法で透視でもしていそうだ。
だが、こういう揶揄いも、マックスの居ない時を狙ってやっている為、責められない。
「べ、別に心境の変化などない、ちょ、朝食を台所でとるのは効率が良いんだ、
出来たてをその場で食べられるし、注文もし易い、片付けも楽だ」
アレクは平静を装っているが、長い付き合いの者たちを騙せるものではない。
皆、嬉々とした表情で更に揶揄いにいった。
「まぁ!食べられればなんでも良いという、あのアレクさんが、出来たてを食したいのですって!?」
「ああ、食べられればなんでも良いアレクが、何を注文してんのか、知りたいねー」
「あのアレクさんが、お片付けを気になさっているなんて…ふふふ」
皆、アレクの反応が見たいのだ…
可愛いから…
ああ、あんなに目をまん丸くして、真っ赤になって!!
ああ、見せたくない!!自分だけのものなのにーーー!!!
「皆様、アレク様の食事の邪魔はなさらないで頂けますか?
ロリーさん、今日は忙しくて、ビスケットを焼けないかもしれません。
クリスタルさん、お気に入りの紅茶の茶葉が手に入り難くなっています。
ドーンさん、研究室にコーヒーをお持ちするのを忘れてしまうかもしれません」
それとなく脅すと、皆「ひゅっ!!」と息を飲み、散っていった。
「なんだ、あいつら?」
キョトンとしているのは、アレクだけだ。
俺は「気にせず、朝食にしましょう」とアレクの椅子を引いた。
「ディー、パンケーキがいい!おまえの焼くパンケーキは甘くなくて、ふわふわで好きだ!」
子供の様に強請るアレクが可愛い、『好き』も自分に言われているみたいでうれしくて舞い上がりそうだ。
「はい!直ぐに焼けますから、お待ち下さいね!」
「急がなくていい、おまえの料理してる姿を見るのが好きなんだ、不思議だけど、全然飽きない、それにいい匂いだし…」
頬杖をつき、寝起きの猫の様にうっとりとした表情のアレク…
ああああ!!
最高のパンケーキを焼いて差し上げたいのに、胸はバクバクしているし、手もぶるぶると震えて…無理かも!!
俺の将来を約束した人…アレクが可愛い!可愛過ぎる!!
それを全世界に叫びたいのだが、理性がそれを邪魔し、叶える事は出来ないでいる為、自分の中はアレクへの愛で一杯だった。
「ああ!アレク様が可愛過ぎる!理性がぶち切れないか心配だ…」
早く魔王討伐したい!!頼むから早く出て来て、殺られてくれ!!
そんな事を日々願っていたからか、その日、市場に買い出しに行った帰り、魔物に絡まれた。
【茂みの奥へ行け】
風と共に聞こえてきた声を無視しようとしたが、【従わなければこの場で殺る!】と言われ、ここは従う事にした。
魔物に暴れられたらアレクが来てしまう。アレクは前日まで領主に呼ばれ多忙だったのだ。今日一日はゆっくりと休ませてやりたい。
何で来るかな?このタイミングで…
茂みの奥へ進と、少し開けた場所があった。
地面が揺れたかと思うと、黒い靄のようなものが沸き出てきて、それは見上げる程の大男となった。
頭に牛の様な角があり、ほぼ裸で恐ろしく筋肉質だ。髪も肌も黒いが、目は赤くギラギラと光っている。
【よぉ、久しぶりだな、探したぜファザーブル】
「は??人違いでは?」
魔物に知り合いはいない。おまけに、変な名で呼ぶな!
愛想良く出来る筈もなく、俺は睨み見たが、相手は面白がるだけだった。
【惚けんなよ、ファザーブル、それとも俺様を前にしてチビってんのか?
おまえ随分暴れてるらしいじゃねーか、だがな、俺様が復活した今じゃ、おまえの功績なんか屑だ!
分かったら目障りな真似すんじゃねーぞ!ゴルアァ】
全く意味が分からない。
だが、大牛男の言い分では、まるで俺が魔物みたいじゃないか…
「人違いです、俺は人間ですし、あなたの事は知りません」
【このバーサーク様を忘れたってーのか!?ふざけんな!ゴルアァ!】
不毛な押問答を繰り返すのが目に見えてきて、俺は辟易した。
ふと、「絡まれても迷惑ですので、巣へお帰り下さい」と言った時、それに気付いた。
「あなたは魔物でしょう?何処から来たんですか?」
【ハアア?魔王様の城に決まってんだろうがよー!】
ビンゴだ!!
「魔王はどうしているんですか?」
【ああ、まだ完全には復活されていねー、側近の奴等、俺たちで時間稼ぎしろとか…ヘボな勇者相手なんざ、俺様だけで十分だ!!】
ピクピク…
ヘボ?
「魔王城は何処にあるんですか?」
【なーんだ、おまえ、迷子になってたのかよー!ダッセー!!】
大牛男が爆笑し終わるのを俺は辛抱強く待ってやった。
【魔王城に帰りたかったら、俺を追ってくりゃいいだろ、ま、追い付ければの話だが!】
こいつの事だ、地に潜っていくだろう。
どうやって場所を吐き出させるか…
「方向は?」
【アッチ】
「地上か地下かというと?」
【地下に決まってんだろーよ!】
「人間が行くにはどうやって行けばいいんですか?」
【魔王様の復活を待つんだな!魔王様と共に城も眷属も地より現れ、人間共を食い尽くし破滅させんのさ!!】
「魔王復活までどの位掛かるんですか?」
【二、三月じゃねーか?その前に、俺様が世界の半分を破壊してやるぜ!!
ファザーブル!おまえには負けねーからな!黙って見とけ!】
大牛男は言うだけ言うと、地に沈んでいった。
結局、人違いをしたままだった。
「役に立つような、立たない様な情報だったなー」
魔物と勘違いされた___
笑い話だが、他人が聞けば要らぬ疑惑を持たれ、裁判に掛けられるかもしれない。悪くすれば絞首刑だ。
それは避けたいが…
「アレク様、喜んでくれるかな?」
敵の情報を仕入れたとなれば、褒めて頂けるかも…!!
「焦るな焦るな…!ここは慎重に交渉しないと…」
頭に色々な妄想が飛び交い、口元がにやけるのを止められ無かった。
◇
「アレク様、今夜、お部屋に行っても構いませんか?」
二人きりになった時を狙い、俺がそれとなく尋ねると、アレクはビクリとし固まった。その顔は真っ赤だ…
か、か、可愛過ぎるーーー!!!
「あ、あの、実は、相談がありまして…」
「そ、そうか、勿論、構わない…待ってる」
アレクは手足をぎくしゃくとさせて階段を上がって行った。
いや、もう、可愛過ぎでしょう!??絶対、期待してたしっ!!
ああ!転がり回りたい!!!
《体の関係》は魔王を討伐するまでお預け、それは分かっている。
だけど、あんな反応を見せられたら…
「どうしよう、また、襲ってしまいそうだ…!!」
夜更け、俺は興奮を鎮め、ホットミルクとビスケットを用意してアレクの部屋を訪ねた。
ホットミルクとビスケットがアレクの色気を消してくれる…そんな期待を持っていた。
「アレク様、私です…」
静かに声を掛けると、直ぐに扉が小さく開き、隙間からアレクの目が見えた。
潤んでいて、輝きもある…
ああ、俺の理性、無理そう!!
「ディー、入って」
小声も色っぽい!!
俺はドキドキとしながら部屋に入り、促されるままに応接セットの長ソファーに座った。
アレクは無意識なのか、意図的なのか、俺の隣に座った。
「こっちの方が話し易いだろう?」
ああ!無意識ちゃんだったーーー!!!
でも、上目で見ちゃ駄目だからーーーー!!!
アレクが危険過ぎる…
この人、男殺しだ…
「どうしたの?何かあった?おまえが相談なんて珍しいから驚いた…」
心配そうな声色に、俺の興奮も鎮火した。
こんなに真剣に心配してくれていたのに…興奮してすみませんでした!!
頭の中で土下座し、俺は昼間に仕入れた情報を話した。
「魔王城は東北方向の地下に?それに、魔王復活は二、三ヵ月後?何処でそんな情報を?」
「実は、バーサークとかいう魔物と遭遇し、どうやら知り合いの魔物と間違えられた様で、誘導尋問をしました」
「はああ!??」
アレクが夜更けだというのに大声を上げた為、俺は慌てて手で彼の可愛い口を塞いだ。
「しーーー!!皆さん眠っていますから!!」
「うぐぐ!!~~~!!」
アレクが一通り叫び終わったのを見越して、俺は手を離した。
「バーサークは魔王軍の四天王の一人だ、その知り合いの魔物に似ているという事は…」
「確か、ファザーブルとか呼んでた様な…」
俺がその名を告げると、アレクが「ぶっ!!!」と盛大にホットミルクを噴き出した。
ああ、もう…可愛いんだから!
俺は内心で悶えつつ、布で丁寧に拭いたが、アレクは俺の手を掴み、俺に顔を近付けた。
「ファザーブルは魔王軍四天王の一人だ!」
「そうなんですかー、でも、そんな大物の魔物が、私に似ているなんてあるでしょうか?」
アレクは茫然とし、肩を落とした。
アレクも冷静になり、『あり得ない』と気付いたのだろう。
「ディー、俺の事好きだよな?」
突然聞かれ、俺は「ぐっ」と息を飲んだ。
アレクの瞳が泣きそうに揺れるのを見て、俺は慌てて「好きです!大好きです!愛しています!!」と叫んでいた。
「ディー、魔王になれる、世界を手に入れられるとしても、それを全て捨てて、俺を選んでくれるか?」
「当たり前でしょう!
魔王とか世界とか欠片も興味ありませんし、それに、私たちの目的は魔王を討伐して結ばれる事でしょう?
私にはあなたとの未来しか考えられません…」
俺はアレクの綺麗な手を取り、その甲に唇を落とした。
「ありがとう、うれしいよ…」
ポロリ…
手に透明な雫が落ち、俺の胸はキュっと締め付けられた。
日頃泣かないアレクが涙を零す…その意味に、俺は耐えられなくなった。
「すみません…!」
唯一残された理性がそう零すと同時に、俺はアレクに口付けていた。
アレクは抵抗しない、いや、寧ろ、積極的に応えてくれ、俺は溺れた。
「はぁ…ん!」
「すき…」
「おれも、すき…」
「ディー、きて…」
瞳がキラキラと輝き、その微笑みは天使の様で、俺は抗う術を持たなかった。
「ごめんなさい、約束、したのに…」
「俺が誘ったんだよ?」
「けど…」
「今夜のはご褒美☆」
アレクがちゅっと、俺の鼻先にキスをした。
「ご、ご褒美最高――――――――!!」
「バカ、皆を起こす気か?」
「す、すみません、私、口に出してましたか??」
アレクは笑い、「次までお預けな」と俺の胸に額を擦りつけた。
お預け…
こんな事されて、俺、耐えられるかな??
ああ、早く、魔王を討伐したい!!!
◆◆
【ファザーブルならば、放っておいて構わぬ】
最近、漸く魔王は言葉を発する様になった。
【ヤツは調子に乗りおったからのぉ…】
【我が記憶を奪い、力だけを残した、自我を持たぬただの器よ!】
【我が再び破滅を迎えた時、我が乗り移る為のな!】
「勇者を出し抜く策ですな!流石にございます、魔王様!」
【ギャッギャッギャ】
魔王が笑う、側近たちも高らかに笑った。
「マジか、あいつ記憶無かったのかよ!けど、自我って奴はあったぞ?」
バーサークの呟きに耳を貸す者はおらず、当のバーサークも直ぐに興味を失ったのだった。
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