【完結】《BL》殺るか、ヤられるか??悩める転生勇者、この雑用係は魔王の配下らしい!

白雨 音

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おまけ(本編後のお話です)

四天王ファザーブルの行方

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※ディー視点です。

◆◆

「ファザーブル様はどうやら勇者の近くで監視をなさっている様だ」
「隙を見て殺るつもりですな!流石は四天王の内でも最強と名高いファザーブル様だ!」
「魔王様も安心して復活の刻を迎えられるでしょう…」

魔王の側近たちが口々に言う中、異議を唱えた者がいた。

「ファザーブルが四天王最強だと!?ふざけるな!!
魔王様の二番手はこの俺!四天王最強バーサーク様だ!!
ファザーブルのヤツは少しばかり早く復活しただけだ!俺を出し抜くなんざ、百年早いぜ!!」

◆◆

「アレクさー、最近朝食、ずっと台所で食べてんじゃん、どういう心境なワケ?」

ロリーは内情を知っている、故に、これはアレクを揶揄う為にワザと言っているのだ。その証拠に、口の端がピクピクとしているし、後ろではクリスタルが面白そうに覗き込んで来ている。ドーンなど、『興味は無い』とばかりに顔を本で隠しているが、しっかりこちらに向けている所、魔法で透視でもしていそうだ。
だが、こういう揶揄いも、マックスの居ない時を狙ってやっている為、責められない。

「べ、別に心境の変化などない、ちょ、朝食を台所でとるのは効率が良いんだ、
出来たてをその場で食べられるし、注文もし易い、片付けも楽だ」

アレクは平静を装っているが、長い付き合いの者たちを騙せるものではない。
皆、嬉々とした表情で更に揶揄いにいった。

「まぁ!食べられればなんでも良いという、あのアレクさんが、出来たてを食したいのですって!?」
「ああ、食べられればなんでも良いアレクが、何を注文してんのか、知りたいねー」
「あのアレクさんが、お片付けを気になさっているなんて…ふふふ」

皆、アレクの反応が見たいのだ…
可愛いから…
ああ、あんなに目をまん丸くして、真っ赤になって!!
ああ、見せたくない!!自分だけのものなのにーーー!!!

「皆様、アレク様の食事の邪魔はなさらないで頂けますか?
ロリーさん、今日は忙しくて、ビスケットを焼けないかもしれません。
クリスタルさん、お気に入りの紅茶の茶葉が手に入り難くなっています。
ドーンさん、研究室にコーヒーをお持ちするのを忘れてしまうかもしれません」

それとなく脅すと、皆「ひゅっ!!」と息を飲み、散っていった。

「なんだ、あいつら?」

キョトンとしているのは、アレクだけだ。
俺は「気にせず、朝食にしましょう」とアレクの椅子を引いた。

「ディー、パンケーキがいい!おまえの焼くパンケーキは甘くなくて、ふわふわで好きだ!」

子供の様に強請るアレクが可愛い、『好き』も自分に言われているみたいでうれしくて舞い上がりそうだ。

「はい!直ぐに焼けますから、お待ち下さいね!」
「急がなくていい、おまえの料理してる姿を見るのが好きなんだ、不思議だけど、全然飽きない、それにいい匂いだし…」

頬杖をつき、寝起きの猫の様にうっとりとした表情のアレク…
ああああ!!
最高のパンケーキを焼いて差し上げたいのに、胸はバクバクしているし、手もぶるぶると震えて…無理かも!!


俺の将来を約束した人…アレクが可愛い!可愛過ぎる!!
それを全世界に叫びたいのだが、理性がそれを邪魔し、叶える事は出来ないでいる為、自分の中はアレクへの愛で一杯だった。


「ああ!アレク様が可愛過ぎる!理性がぶち切れないか心配だ…」

早く魔王討伐したい!!頼むから早く出て来て、殺られてくれ!!

そんな事を日々願っていたからか、その日、市場に買い出しに行った帰り、魔物に絡まれた。

【茂みの奥へ行け】

風と共に聞こえてきた声を無視しようとしたが、【従わなければこの場で殺る!】と言われ、ここは従う事にした。
魔物に暴れられたらアレクが来てしまう。アレクは前日まで領主に呼ばれ多忙だったのだ。今日一日はゆっくりと休ませてやりたい。

何で来るかな?このタイミングで…

茂みの奥へ進と、少し開けた場所があった。
地面が揺れたかと思うと、黒い靄のようなものが沸き出てきて、それは見上げる程の大男となった。
頭に牛の様な角があり、ほぼ裸で恐ろしく筋肉質だ。髪も肌も黒いが、目は赤くギラギラと光っている。

【よぉ、久しぶりだな、探したぜファザーブル】

「は??人違いでは?」

魔物に知り合いはいない。おまけに、変な名で呼ぶな!
愛想良く出来る筈もなく、俺は睨み見たが、相手は面白がるだけだった。

【惚けんなよ、ファザーブル、それとも俺様を前にしてチビってんのか?
おまえ随分暴れてるらしいじゃねーか、だがな、俺様が復活した今じゃ、おまえの功績なんか屑だ!
分かったら目障りな真似すんじゃねーぞ!ゴルアァ】

全く意味が分からない。
だが、大牛男の言い分では、まるで俺が魔物みたいじゃないか…

「人違いです、俺は人間ですし、あなたの事は知りません」
【このバーサーク様を忘れたってーのか!?ふざけんな!ゴルアァ!】

不毛な押問答を繰り返すのが目に見えてきて、俺は辟易した。
ふと、「絡まれても迷惑ですので、巣へお帰り下さい」と言った時、それに気付いた。

「あなたは魔物でしょう?何処から来たんですか?」
【ハアア?魔王様の城に決まってんだろうがよー!】

ビンゴだ!!

「魔王はどうしているんですか?」
【ああ、まだ完全には復活されていねー、側近の奴等、俺たちで時間稼ぎしろとか…ヘボな勇者相手なんざ、俺様だけで十分だ!!】

ピクピク…
ヘボ?

「魔王城は何処にあるんですか?」
【なーんだ、おまえ、迷子になってたのかよー!ダッセー!!】

大牛男が爆笑し終わるのを俺は辛抱強く待ってやった。

【魔王城に帰りたかったら、俺を追ってくりゃいいだろ、ま、追い付ければの話だが!】

こいつの事だ、地に潜っていくだろう。
どうやって場所を吐き出させるか…

「方向は?」
【アッチ】
「地上か地下かというと?」
【地下に決まってんだろーよ!】
「人間が行くにはどうやって行けばいいんですか?」
【魔王様の復活を待つんだな!魔王様と共に城も眷属も地より現れ、人間共を食い尽くし破滅させんのさ!!】
「魔王復活までどの位掛かるんですか?」
【二、三月じゃねーか?その前に、俺様が世界の半分を破壊してやるぜ!!
ファザーブル!おまえには負けねーからな!黙って見とけ!】

大牛男は言うだけ言うと、地に沈んでいった。
結局、人違いをしたままだった。

「役に立つような、立たない様な情報だったなー」

魔物と勘違いされた___
笑い話だが、他人が聞けば要らぬ疑惑を持たれ、裁判に掛けられるかもしれない。悪くすれば絞首刑だ。
それは避けたいが…

「アレク様、喜んでくれるかな?」

敵の情報を仕入れたとなれば、褒めて頂けるかも…!!

「焦るな焦るな…!ここは慎重に交渉しないと…」

頭に色々な妄想が飛び交い、口元がにやけるのを止められ無かった。



「アレク様、今夜、お部屋に行っても構いませんか?」

二人きりになった時を狙い、俺がそれとなく尋ねると、アレクはビクリとし固まった。その顔は真っ赤だ…
か、か、可愛過ぎるーーー!!!

「あ、あの、実は、相談がありまして…」
「そ、そうか、勿論、構わない…待ってる」

アレクは手足をぎくしゃくとさせて階段を上がって行った。
いや、もう、可愛過ぎでしょう!??絶対、期待してたしっ!!
ああ!転がり回りたい!!!

《体の関係》は魔王を討伐するまでお預け、それは分かっている。
だけど、あんな反応を見せられたら…

「どうしよう、また、襲ってしまいそうだ…!!」


夜更け、俺は興奮を鎮め、ホットミルクとビスケットを用意してアレクの部屋を訪ねた。
ホットミルクとビスケットがアレクの色気を消してくれる…そんな期待を持っていた。

「アレク様、私です…」

静かに声を掛けると、直ぐに扉が小さく開き、隙間からアレクの目が見えた。
潤んでいて、輝きもある…
ああ、俺の理性、無理そう!!

「ディー、入って」

小声も色っぽい!!
俺はドキドキとしながら部屋に入り、促されるままに応接セットの長ソファーに座った。
アレクは無意識なのか、意図的なのか、俺の隣に座った。

「こっちの方が話し易いだろう?」

ああ!無意識ちゃんだったーーー!!!
でも、上目で見ちゃ駄目だからーーーー!!!

アレクが危険過ぎる…
この人、男殺しだ…

「どうしたの?何かあった?おまえが相談なんて珍しいから驚いた…」

心配そうな声色に、俺の興奮も鎮火した。
こんなに真剣に心配してくれていたのに…興奮してすみませんでした!!
頭の中で土下座し、俺は昼間に仕入れた情報を話した。

「魔王城は東北方向の地下に?それに、魔王復活は二、三ヵ月後?何処でそんな情報を?」
「実は、バーサークとかいう魔物と遭遇し、どうやら知り合いの魔物と間違えられた様で、誘導尋問をしました」
「はああ!??」

アレクが夜更けだというのに大声を上げた為、俺は慌てて手で彼の可愛い口を塞いだ。

「しーーー!!皆さん眠っていますから!!」
「うぐぐ!!~~~!!」

アレクが一通り叫び終わったのを見越して、俺は手を離した。

「バーサークは魔王軍の四天王の一人だ、その知り合いの魔物に似ているという事は…」
「確か、ファザーブルとか呼んでた様な…」

俺がその名を告げると、アレクが「ぶっ!!!」と盛大にホットミルクを噴き出した。
ああ、もう…可愛いんだから!
俺は内心で悶えつつ、布で丁寧に拭いたが、アレクは俺の手を掴み、俺に顔を近付けた。

「ファザーブルは魔王軍四天王の一人だ!」
「そうなんですかー、でも、そんな大物の魔物が、私に似ているなんてあるでしょうか?」

アレクは茫然とし、肩を落とした。
アレクも冷静になり、『あり得ない』と気付いたのだろう。

「ディー、俺の事好きだよな?」

突然聞かれ、俺は「ぐっ」と息を飲んだ。
アレクの瞳が泣きそうに揺れるのを見て、俺は慌てて「好きです!大好きです!愛しています!!」と叫んでいた。

「ディー、魔王になれる、世界を手に入れられるとしても、それを全て捨てて、俺を選んでくれるか?」

「当たり前でしょう!
魔王とか世界とか欠片も興味ありませんし、それに、私たちの目的は魔王を討伐して結ばれる事でしょう?
私にはあなたとの未来しか考えられません…」

俺はアレクの綺麗な手を取り、その甲に唇を落とした。

「ありがとう、うれしいよ…」

ポロリ…
手に透明な雫が落ち、俺の胸はキュっと締め付けられた。
日頃泣かないアレクが涙を零す…その意味に、俺は耐えられなくなった。

「すみません…!」

唯一残された理性がそう零すと同時に、俺はアレクに口付けていた。
アレクは抵抗しない、いや、寧ろ、積極的に応えてくれ、俺は溺れた。

「はぁ…ん!」
「すき…」
「おれも、すき…」

「ディー、きて…」

瞳がキラキラと輝き、その微笑みは天使の様で、俺は抗う術を持たなかった。

「ごめんなさい、約束、したのに…」
「俺が誘ったんだよ?」
「けど…」
「今夜のはご褒美☆」

アレクがちゅっと、俺の鼻先にキスをした。

「ご、ご褒美最高――――――――!!」

「バカ、皆を起こす気か?」

「す、すみません、私、口に出してましたか??」

アレクは笑い、「次までお預けな」と俺の胸に額を擦りつけた。

お預け…

こんな事されて、俺、耐えられるかな??

ああ、早く、魔王を討伐したい!!!


◆◆

【ファザーブルならば、放っておいて構わぬ】

最近、漸く魔王は言葉を発する様になった。

【ヤツは調子に乗りおったからのぉ…】
【我が記憶を奪い、力だけを残した、自我を持たぬただの器よ!】
【我が再び破滅を迎えた時、我が乗り移る為のな!】

「勇者を出し抜く策ですな!流石にございます、魔王様!」

【ギャッギャッギャ】

魔王が笑う、側近たちも高らかに笑った。


「マジか、あいつ記憶無かったのかよ!けど、自我って奴はあったぞ?」

バーサークの呟きに耳を貸す者はおらず、当のバーサークも直ぐに興味を失ったのだった。


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