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こんなにショックを受けるなんて知りません
カフェのあと、手芸用品店に行った。
「本当に、本当に退屈したら声をかけてくださいね。私、熱中したら時間を忘れてしまうので」
アルフレッド様は少し離れて店内を見ているから気にしなくていいとおっしゃいました。
私は刺繍糸を選んだり、珍しいハギレの詰め合わせを見つけたのでネリーにお土産にしようと思いました。
「あの人素敵ねえ」
女性の声に、視線の先を見ればやっぱりアルフレッド様がいました。男性がいるだけでも珍しいのに。
「恋人が買い物する間、待っててくれるなんて優しいのね」
「私なんて、婚約者は自分の行きたいところばかり。こういうところは友達と行けばいいだろうって」
そうですよね、と心の中で申し訳なく思いました。
アルフレッド様がこちらに歩いてきて、さっきの女性たちは気まずそうに離れました。
「エリーゼ、荷物持とうか?」
買い物かごを持ってくれようとします。
小さな籠で、重いものなんてないので
大丈夫だと断りました。
「アルフレッド様のものに何か刺繍をしてみてもいいですか?」
「いいの?」
「ハンカチとか、もし作れば使ってくださいますか?」
「もったいなくて使えないかも」
笑いながらアルフレッド様が後ろから覗き込む。
「どんな色がいいですか?イニシャルか、紋章か、あとは騎士へ贈る図案もありますよ」
「何でもいいよ、糸はこんなに種類があるんだね」
「お好きな色で刺繍入れますね。これはアルフレッド様の瞳の色に似ているのではないですか?」
小さな引き出しの並んだ棚にさまざまな色糸が納められている。
「色の名前も面白いんだね。青にもこんなに種類がある。でも、僕は緑がいいな、ほら、これ。」
彼が指したのは森の名前の緑色。
「エリーゼが恥ずかしい時の少し潤んだ時の目にそっくり。こっちは赤面した時の頬、噛み締めたあとの唇は、これかな。」
後ろから腰に回された腕に少しだけ力が込められる。
「僕が好きなのはエリーゼの色だよ」
そんなことを言われたら、また恥ずかしくなる。きっと赤くなっていると思って、両手で顔を覆った。
「出先で意地悪を言うのはやめてください」
「本当のことを言っただけなのに」
帰りの馬車では、アルフレッド様はからかってこなかった。
まだ早い時間なので、屋敷に寄っていきますか?と聞くと、
少し考えたあと
「今日は、やめておくよ」
と言われた。
少し残念だった。今後のことや卒業後のことについて話をするタイミングがなくて、なかなか二人で会うことも次はいつになるかわからない。
家に呼ぶなんてまだそういう関係ではないと思われたのか。
「エリーゼ、何か心配なことがあるの?」
「心配というか、その、アルフレッド様が気遣ってくださってるのはわかっていますし、大切にされて幸せなのですが」
じっと目を見て聞いてくれる。この人は優しい。
優しいけれど、いつも本当の気持ちを言ってくれない。
「ゆっくりでいいよ、続けて」
「……私との、これからの関係をどのように考えてらっしゃるのですか」
言ってしまった、これで彼の答えを聞いてしまったらもう戻れないかもしれない。重いって思われるだろうな
「え?ちょっと待って」
アルフレッド様の表情が固くなった
「……それは、エリーゼのことを僕がどういうつもりで恋人として考えているかってこと?エリーゼを不安にさせてた?
もしかして恋人って思ってるのは僕だけ?伝わってない?」
「いえ、恋人で幸せです。ごめんなさい、忘れてください。」
「待って、エリーゼ。ちょっと僕たちの認識にズレがあるみたい。このまま別れたら絶対ダメだ。」
馬車の中で手を握られる。
「やっぱり、屋敷にお邪魔するよ」
いつもの彼ではなく、怒っているように見えた。
「本当に、本当に退屈したら声をかけてくださいね。私、熱中したら時間を忘れてしまうので」
アルフレッド様は少し離れて店内を見ているから気にしなくていいとおっしゃいました。
私は刺繍糸を選んだり、珍しいハギレの詰め合わせを見つけたのでネリーにお土産にしようと思いました。
「あの人素敵ねえ」
女性の声に、視線の先を見ればやっぱりアルフレッド様がいました。男性がいるだけでも珍しいのに。
「恋人が買い物する間、待っててくれるなんて優しいのね」
「私なんて、婚約者は自分の行きたいところばかり。こういうところは友達と行けばいいだろうって」
そうですよね、と心の中で申し訳なく思いました。
アルフレッド様がこちらに歩いてきて、さっきの女性たちは気まずそうに離れました。
「エリーゼ、荷物持とうか?」
買い物かごを持ってくれようとします。
小さな籠で、重いものなんてないので
大丈夫だと断りました。
「アルフレッド様のものに何か刺繍をしてみてもいいですか?」
「いいの?」
「ハンカチとか、もし作れば使ってくださいますか?」
「もったいなくて使えないかも」
笑いながらアルフレッド様が後ろから覗き込む。
「どんな色がいいですか?イニシャルか、紋章か、あとは騎士へ贈る図案もありますよ」
「何でもいいよ、糸はこんなに種類があるんだね」
「お好きな色で刺繍入れますね。これはアルフレッド様の瞳の色に似ているのではないですか?」
小さな引き出しの並んだ棚にさまざまな色糸が納められている。
「色の名前も面白いんだね。青にもこんなに種類がある。でも、僕は緑がいいな、ほら、これ。」
彼が指したのは森の名前の緑色。
「エリーゼが恥ずかしい時の少し潤んだ時の目にそっくり。こっちは赤面した時の頬、噛み締めたあとの唇は、これかな。」
後ろから腰に回された腕に少しだけ力が込められる。
「僕が好きなのはエリーゼの色だよ」
そんなことを言われたら、また恥ずかしくなる。きっと赤くなっていると思って、両手で顔を覆った。
「出先で意地悪を言うのはやめてください」
「本当のことを言っただけなのに」
帰りの馬車では、アルフレッド様はからかってこなかった。
まだ早い時間なので、屋敷に寄っていきますか?と聞くと、
少し考えたあと
「今日は、やめておくよ」
と言われた。
少し残念だった。今後のことや卒業後のことについて話をするタイミングがなくて、なかなか二人で会うことも次はいつになるかわからない。
家に呼ぶなんてまだそういう関係ではないと思われたのか。
「エリーゼ、何か心配なことがあるの?」
「心配というか、その、アルフレッド様が気遣ってくださってるのはわかっていますし、大切にされて幸せなのですが」
じっと目を見て聞いてくれる。この人は優しい。
優しいけれど、いつも本当の気持ちを言ってくれない。
「ゆっくりでいいよ、続けて」
「……私との、これからの関係をどのように考えてらっしゃるのですか」
言ってしまった、これで彼の答えを聞いてしまったらもう戻れないかもしれない。重いって思われるだろうな
「え?ちょっと待って」
アルフレッド様の表情が固くなった
「……それは、エリーゼのことを僕がどういうつもりで恋人として考えているかってこと?エリーゼを不安にさせてた?
もしかして恋人って思ってるのは僕だけ?伝わってない?」
「いえ、恋人で幸せです。ごめんなさい、忘れてください。」
「待って、エリーゼ。ちょっと僕たちの認識にズレがあるみたい。このまま別れたら絶対ダメだ。」
馬車の中で手を握られる。
「やっぱり、屋敷にお邪魔するよ」
いつもの彼ではなく、怒っているように見えた。
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