3 / 6
戯曲作家は幕を開けることにした
アートは戯曲を劇団に渡すだけ。実際の公演を見ることはない。
別に名声が欲しいわけではない。劇団の窓口として会う男はアートのことを貴族だと思っているので深く追及してこない。
貴族の道楽息子だから素性を知って親に睨まれるのを避けたいのだろう。
美男の劇作家アーノルド・フィルとして人気があるのは、その劇団の俳優だ。恋多き男だとの振る舞いが戯曲の人気を押し上げている。
アーノルド・フィルは前時代的な貴族の悲恋ものが得意とされている。
でも今書いているのはそういった内容ではない。少し政治的な内容もあり、すれ違いの恋がメインとなる。
これは発表する時期が重要だ。
アートは、ペンを置いた。
「お茶になさいますか」
タイミング良く従者が声をかける。ケビンは幼い頃からの仲で、色々と通常の執務以外にも助けてもらっている。
「王城図書館の司書と塔の魔術師との関係はわかったか」
「いえ、ずっと探っていますが接触は無いですね。あの店にそれぞれ通っていますが、会話は確認されておりません」
偶然だったのだろう。
自分と彼女の出会いや、あいつと彼女の出会いのように。
運命は偶然から動き出す。
王城図書館でシアを見た事があった。王城で働くものは元々整った容姿のものが多い。華やかではないけれど紺色のワンピースが良く似合っていた。グレーのスカーフを首に巻いている。
本を探すときに、笑っていることに本人は気づいていないだろう。書架の間をくるくると動く気配を追ったこともある。
「この王は愚劣だと歴史書に書いてあるけれど、それはあとの時代の人が次の王を讃えるためにわざと貶めたんですよ。
政治的には功績はなかったけれど、美術はこの時代に成熟したんです」
館長に意見しているのを聞いたことがある。
「私は、正史に書かれなかった歴史のほうが興味があります」
しかし、書物を置く場所は限られていて、定期的に整理して処分しなくてはいけない。廃棄図書は貴族や好事家の市民にも無料で譲られる。
本を撫でている姿が忘れられない。
アートは、彼女の言った言葉から
『書かれなかった物語』を書くようになった。戯曲の登場人物には役割が与えられている。定番となった昔の作品に、新たな光を与える遊びに夢中になった。
別に名声が欲しいわけではない。劇団の窓口として会う男はアートのことを貴族だと思っているので深く追及してこない。
貴族の道楽息子だから素性を知って親に睨まれるのを避けたいのだろう。
美男の劇作家アーノルド・フィルとして人気があるのは、その劇団の俳優だ。恋多き男だとの振る舞いが戯曲の人気を押し上げている。
アーノルド・フィルは前時代的な貴族の悲恋ものが得意とされている。
でも今書いているのはそういった内容ではない。少し政治的な内容もあり、すれ違いの恋がメインとなる。
これは発表する時期が重要だ。
アートは、ペンを置いた。
「お茶になさいますか」
タイミング良く従者が声をかける。ケビンは幼い頃からの仲で、色々と通常の執務以外にも助けてもらっている。
「王城図書館の司書と塔の魔術師との関係はわかったか」
「いえ、ずっと探っていますが接触は無いですね。あの店にそれぞれ通っていますが、会話は確認されておりません」
偶然だったのだろう。
自分と彼女の出会いや、あいつと彼女の出会いのように。
運命は偶然から動き出す。
王城図書館でシアを見た事があった。王城で働くものは元々整った容姿のものが多い。華やかではないけれど紺色のワンピースが良く似合っていた。グレーのスカーフを首に巻いている。
本を探すときに、笑っていることに本人は気づいていないだろう。書架の間をくるくると動く気配を追ったこともある。
「この王は愚劣だと歴史書に書いてあるけれど、それはあとの時代の人が次の王を讃えるためにわざと貶めたんですよ。
政治的には功績はなかったけれど、美術はこの時代に成熟したんです」
館長に意見しているのを聞いたことがある。
「私は、正史に書かれなかった歴史のほうが興味があります」
しかし、書物を置く場所は限られていて、定期的に整理して処分しなくてはいけない。廃棄図書は貴族や好事家の市民にも無料で譲られる。
本を撫でている姿が忘れられない。
アートは、彼女の言った言葉から
『書かれなかった物語』を書くようになった。戯曲の登場人物には役割が与えられている。定番となった昔の作品に、新たな光を与える遊びに夢中になった。
あなたにおすすめの小説
地味令嬢の私が婚約破棄された結果、なぜか最強王子に溺愛されてます
白米
恋愛
侯爵家の三女・ミレイアは、控えめで目立たない“地味令嬢”。
特に取り柄もなく、華やかな社交界ではいつも壁の花。だが幼いころに交わされた約束で、彼女は王弟・レオンハルト殿下との婚約者となっていた。
だがある日、突然の婚約破棄通告――。
「やはり君とは釣り合わない」
そう言い放ったのは、表向きには完璧な王弟殿下。そしてその横には、社交界の華と呼ばれる公爵令嬢の姿が。
悲しみも怒りも感じる間もなく、あっさりと手放されたミレイア。
しかしその瞬間を見ていたのが、王家随一の武闘派にして“最強”と噂される第一王子・ユリウスだった。
「……くだらん。お前を手放すなんて、あいつは見る目がないな」
「よければ、俺が貰ってやろうか?」
冗談かと思いきや、なぜか本気のご様子!?
次の日には「俺の婚約者として紹介する」と言われ、さらには
「笑った顔が見たい」「他の男の前で泣くな」
――溺愛モードが止まらない!
完結•不遇な皇帝とお飾りではなかった妻の物語
禅
恋愛
皇帝の子として生まれたが、双子の弟だったため忌み子として処分されるところを隣国の公爵に引き取られた主人公。
そのまま公爵の子として一生を終える予定だったが、両親と双子の兄が相次いで死んだため、急遽、国へ戻り皇帝となった。
そこで待っていたのはお飾り妻と不慣れな執務。その中で、お飾り妻が平穏に過ごす姿が癒しとなっていた。
そうして数年が過ぎた、ある日。主人公は身に覚えがない罪で投獄され……
※完結まで予約投稿済
※小説家になろう、にも掲載中
表紙画像は、あさぎ かなさんより頂きました!
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
大好きな婚約者に「距離を置こう」と言われました
ミズメ
恋愛
感情表現が乏しいせいで""氷鉄令嬢""と呼ばれている侯爵令嬢のフェリシアは、婚約者のアーサー殿下に唐突に距離を置くことを告げられる。
これは婚約破棄の危機――そう思ったフェリシアは色々と自分磨きに励むけれど、なぜだか上手くいかない。
とある夜会で、アーサーの隣に見知らぬ金髪の令嬢がいたという話を聞いてしまって……!?
重すぎる愛が故に婚約者に接近することができないアーサーと、なんとしても距離を縮めたいフェリシアの接近禁止の婚約騒動。
○カクヨム、小説家になろうさまにも掲載/全部書き終えてます
「その他大勢」の一人で構いませんので
和島逆
恋愛
社交界で『壁の花』ならぬ『壁のマンドラゴラ』という異名を持つマグダレーナ。
今日も彼女は夜会の壁に張りつき、趣味の人間観察に精を出す。
最近のお気に入りは、伯爵家の貴公子であるエリアス。容姿・家柄ともに申し分なく、年頃の令嬢たちから熱い視線を送られている。
そんなエリアスが選んだのは、なんと『壁のマンドラゴラ』であるマグダレーナで──?
「いや、わたしはあくまでも『その他大勢』の一人で構わないので」
マグダレーナは速攻で断りを入れるのであった。
妹の身代わりだった私に「本命は君だ」――王宮前で王子に抱き潰され、溺愛がバレました。~私が虐げられるきっかけになった少年が、私と王子を結び付
唯崎りいち
恋愛
妹の身代わりとして王子とデートすることになった私。でも王子の本命は最初から私で――。長年虐げられ、地味でみすぼらしい私が、王子の愛と溺愛に包まれ、ついに幸せを掴む甘々ラブファンタジー。妹や家族との誤解、影武者の存在も絡み、ハラハラと胸キュンが止まらない物語。
婚約破棄ブームに乗ってみた結果、婚約者様が本性を現しました
ラム猫
恋愛
『最新のトレンドは、婚約破棄!
フィアンセに婚約破棄を提示して、相手の反応で本心を知ってみましょう。これにより、仲が深まったと答えたカップルは大勢います!
※結果がどうなろうと、我々は責任を負いません』
……という特設ページを親友から見せられたエレアノールは、なかなか距離の縮まらない婚約者が自分のことをどう思っているのかを知るためにも、この流行に乗ってみることにした。
彼が他の女性と仲良くしているところを目撃した今、彼と婚約破棄して身を引くのが正しいのかもしれないと、そう思いながら。
しかし実際に婚約破棄を提示してみると、彼は豹変して……!?
※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも投稿しています