【完結】王城司書がチャラい作家と出会った話

仙冬可律

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戯曲作家は幕を開けることにした

アートは戯曲を劇団に渡すだけ。実際の公演を見ることはない。
別に名声が欲しいわけではない。劇団の窓口として会う男はアートのことを貴族だと思っているので深く追及してこない。
貴族の道楽息子だから素性を知って親に睨まれるのを避けたいのだろう。

美男の劇作家アーノルド・フィルとして人気があるのは、その劇団の俳優だ。恋多き男だとの振る舞いが戯曲の人気を押し上げている。

アーノルド・フィルは前時代的な貴族の悲恋ものが得意とされている。
でも今書いているのはそういった内容ではない。少し政治的な内容もあり、すれ違いの恋がメインとなる。
これは発表する時期が重要だ。
アートは、ペンを置いた。
「お茶になさいますか」

タイミング良く従者が声をかける。ケビンは幼い頃からの仲で、色々と通常の執務以外にも助けてもらっている。

「王城図書館の司書と塔の魔術師との関係はわかったか」

「いえ、ずっと探っていますが接触は無いですね。あの店にそれぞれ通っていますが、会話は確認されておりません」

偶然だったのだろう。
自分と彼女の出会いや、あいつと彼女の出会いのように。
運命は偶然から動き出す。
王城図書館でシアを見た事があった。王城で働くものは元々整った容姿のものが多い。華やかではないけれど紺色のワンピースが良く似合っていた。グレーのスカーフを首に巻いている。

本を探すときに、笑っていることに本人は気づいていないだろう。書架の間をくるくると動く気配を追ったこともある。

「この王は愚劣だと歴史書に書いてあるけれど、それはあとの時代の人が次の王を讃えるためにわざと貶めたんですよ。
政治的には功績はなかったけれど、美術はこの時代に成熟したんです」

館長に意見しているのを聞いたことがある。

「私は、正史に書かれなかった歴史のほうが興味があります」

しかし、書物を置く場所は限られていて、定期的に整理して処分しなくてはいけない。廃棄図書は貴族や好事家の市民にも無料で譲られる。

本を撫でている姿が忘れられない。

アートは、彼女の言った言葉から
『書かれなかった物語』を書くようになった。戯曲の登場人物には役割が与えられている。定番となった昔の作品に、新たな光を与える遊びに夢中になった。


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