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「先生の奥様」
奥さんが先生、
うん、悪くない。
アランは仕事中に想像してニヤニヤしていた。初出勤のミランダはブラウスにスカートという身軽な服装だった。家でくつろいでいる姿も美しいが、髪をまとめて凛々しい姿も清楚で美しい。
帰ってきたミランダは緊張したそうだが、生徒たちの様子をいきいきと語ってくれた。
1ヶ月ほどしてからアランはふと迎えに行ってみようかと思った。
ミランダに内緒で。
校門のそばで隠れていたら
全然隠れていなかったらしい。
「お前、何やってんだ」
騎士科の講師をしているベノンに見つかった。
そして暇なら手伝えと言われた。
「ベノンはここの講師だったのか」
「あちこちの臨時講師だから、たまたまだ。ミランダ嬢がこちらに来るときいて驚いた」
「ちょうど良かった。聞きたいことがあったんだ。その……男子生徒もミランダと親しく話してるのか?」
「お前なあ、生徒にまでヤキモチ妬いてどうするんだ。
直接の授業はないけど
挨拶くらいはするかもな。しなかったら礼儀に反するだろ」
「それはそうだけど」
その頃、ミランダはミランダで帰り辛くなっていた。
空き教室で泣いている女子生徒と、それを囲んでいる数人。
初めは生徒間のトラブルかと思って聞き耳を立ててしまった。もし一人を責めているのなら止めないといけないだろうから。
「……わかってる、先生大人だもん」
「相手に……わけない……でも」
「奥様なんて、見たくなかった」
泣いている生徒は先生に想いを抱いているようだった。恋なのか憧れなのかわからない。
それでも真剣なようだった。
ミランダは教師に憧れたことがあったかしら、と思い返した。
シューゼル家や一門の者が教師に数人はいたし、教師から質問されることも多かった。
あ、でも穏やかな家政学の先生は優しくて憧れていた。
母や侍女長が家を取り仕切っていたことを、改めて学問として見ると発見があった。
「ミランダ先生、ずるい!」
聞こえてきた声に体が強張った。
泣いている子が私のことを?
声に覚えがある。
騎士科の女子生徒だった。
彼女が授業に参加したのは二回。
嫌われるようなことをした覚えはとくにない。
「ミランダ先生が悪いわけじゃないし」
周囲の子が言っている
「先生の教え方はわかりやすいし、あんまり叱らないもの。私はミランダ先生に憧れてるの。教師になりたいわ」
「私も、ミランダ先生が嫌いじゃないの。
でも、あんなにちゃんとした人が奥様だなんて、……ずるい!聞いてない!」
「言ってることめちゃくちゃよ?」
「めちゃくちゃでも言いたいの、だって」
「アンナ、校門のそばにリッキー先生が居るわよ」
「えっ!どこ!」
泣いていた生徒が窓に駆け寄った
ミランダは、息を吐いた。
彼女たちの言っていたリッキー先生とは、ベノンのことだ。ミランダの旦那がリッキー家の者だという噂から勘違いしたらしい。
「こっちの棟に来るなんて珍しいわね」
「ミランダ先生を迎えに来たんじゃない」
その声で、またアンナは落ち込んだようだった。
ミランダは、このまま帰ることにした。
校門のところでベノンと会った。
遠目に見れば、アランとも似ているわね
「ミランダさん、お疲れ様です」
「お疲れ様です、ベノン様」
少し会話をして別れれば、あの子たちにも夫婦の距離感とは違うとわかるでしょうし。
「どうされたんですか?」
「ちょっとアランを借りています」
「アラン?来ているのですか」
校舎のほうを振り返れば、生徒たちが窓に張り付いている
「ベノン様、生徒が見ているんです。アランを見られたくありません。私がそちらに行きますね」
「もうこっちに走ってきてますね。手遅れです。
やっぱり女子生徒は教師の私生活が気になるんですね。
俺にまで恋愛のことを聞いてきます。何も面白いネタなんてないのに」
「……そういう年頃ですから仕方ないのですが、やっぱり見られたくはありません」
「まあ、アランですしね」
犬が尻尾を振っているかのようなアランがミランダに駆け寄ってきた。
「ミラ!お待たせしました!お疲れ様です。今日は帰りに何か食べましょう」
「アランもお疲れなのに来てくれたのですか?ありがとう」
「先生をしているミラを見たくて……」
生徒たちのざわめきが聞こえる。振り返りたくない。
「帰りましょう」
アランに差し出された手をつい癖で握ってしまう。
しまった。生徒に見られているのを一瞬忘れていた。
ベノンも苦笑いしている。
「ミランダ先生、ごきげんよう!」
生徒たちの華やかな声が頭上に降ってきた。
「……ご、ごきげんよう」
ぎこちなく返して、逃げるように帰った。
「生徒さんたち、ミラを見送るために窓のそばに居たんですか?」
「いえ、決してそうではなく……」
「恥ずかしそうなミラも可愛いです」
翌日、生徒からニヤニヤとした表情で迎えられた。
「では、何か質問は……」
たくさんの手が上がった
「……今日の授業で」
ほぼ手が下がった。
休憩時間にアンナが笑顔で寄ってきた。
「ミランダ先生!旦那さんも筋肉すごいんですか?」
お茶を噴きそうになった。
耐えた。
「私、ベノン・リッキー先生が、ものすごく、ものすごく、大好きなんです!」
キラキラした目が迫ってくる
「筋肉も、普段はぼんやりしてるのに剣を持つと雰囲気が鋭くなるのとか、髪質とか、筋肉とか、全部大好きなんです!」
筋肉二回言ってるし
「先生の旦那さんも、やっぱり騎士ならすごいんですよね」
「え」
「筋肉ですよ!」
「……まあ、騎士ですから……。でもね、アンナさん。私は筋肉の……立派な男性がもともと好きだったわけではなくて、旦那さんになった人がたまたま、そうだったというか」
「いいなあ、先生。私も頑張ってベノン先生に卒業までに告白します!」
若いってすごいなあとミランダは思った
うん、悪くない。
アランは仕事中に想像してニヤニヤしていた。初出勤のミランダはブラウスにスカートという身軽な服装だった。家でくつろいでいる姿も美しいが、髪をまとめて凛々しい姿も清楚で美しい。
帰ってきたミランダは緊張したそうだが、生徒たちの様子をいきいきと語ってくれた。
1ヶ月ほどしてからアランはふと迎えに行ってみようかと思った。
ミランダに内緒で。
校門のそばで隠れていたら
全然隠れていなかったらしい。
「お前、何やってんだ」
騎士科の講師をしているベノンに見つかった。
そして暇なら手伝えと言われた。
「ベノンはここの講師だったのか」
「あちこちの臨時講師だから、たまたまだ。ミランダ嬢がこちらに来るときいて驚いた」
「ちょうど良かった。聞きたいことがあったんだ。その……男子生徒もミランダと親しく話してるのか?」
「お前なあ、生徒にまでヤキモチ妬いてどうするんだ。
直接の授業はないけど
挨拶くらいはするかもな。しなかったら礼儀に反するだろ」
「それはそうだけど」
その頃、ミランダはミランダで帰り辛くなっていた。
空き教室で泣いている女子生徒と、それを囲んでいる数人。
初めは生徒間のトラブルかと思って聞き耳を立ててしまった。もし一人を責めているのなら止めないといけないだろうから。
「……わかってる、先生大人だもん」
「相手に……わけない……でも」
「奥様なんて、見たくなかった」
泣いている生徒は先生に想いを抱いているようだった。恋なのか憧れなのかわからない。
それでも真剣なようだった。
ミランダは教師に憧れたことがあったかしら、と思い返した。
シューゼル家や一門の者が教師に数人はいたし、教師から質問されることも多かった。
あ、でも穏やかな家政学の先生は優しくて憧れていた。
母や侍女長が家を取り仕切っていたことを、改めて学問として見ると発見があった。
「ミランダ先生、ずるい!」
聞こえてきた声に体が強張った。
泣いている子が私のことを?
声に覚えがある。
騎士科の女子生徒だった。
彼女が授業に参加したのは二回。
嫌われるようなことをした覚えはとくにない。
「ミランダ先生が悪いわけじゃないし」
周囲の子が言っている
「先生の教え方はわかりやすいし、あんまり叱らないもの。私はミランダ先生に憧れてるの。教師になりたいわ」
「私も、ミランダ先生が嫌いじゃないの。
でも、あんなにちゃんとした人が奥様だなんて、……ずるい!聞いてない!」
「言ってることめちゃくちゃよ?」
「めちゃくちゃでも言いたいの、だって」
「アンナ、校門のそばにリッキー先生が居るわよ」
「えっ!どこ!」
泣いていた生徒が窓に駆け寄った
ミランダは、息を吐いた。
彼女たちの言っていたリッキー先生とは、ベノンのことだ。ミランダの旦那がリッキー家の者だという噂から勘違いしたらしい。
「こっちの棟に来るなんて珍しいわね」
「ミランダ先生を迎えに来たんじゃない」
その声で、またアンナは落ち込んだようだった。
ミランダは、このまま帰ることにした。
校門のところでベノンと会った。
遠目に見れば、アランとも似ているわね
「ミランダさん、お疲れ様です」
「お疲れ様です、ベノン様」
少し会話をして別れれば、あの子たちにも夫婦の距離感とは違うとわかるでしょうし。
「どうされたんですか?」
「ちょっとアランを借りています」
「アラン?来ているのですか」
校舎のほうを振り返れば、生徒たちが窓に張り付いている
「ベノン様、生徒が見ているんです。アランを見られたくありません。私がそちらに行きますね」
「もうこっちに走ってきてますね。手遅れです。
やっぱり女子生徒は教師の私生活が気になるんですね。
俺にまで恋愛のことを聞いてきます。何も面白いネタなんてないのに」
「……そういう年頃ですから仕方ないのですが、やっぱり見られたくはありません」
「まあ、アランですしね」
犬が尻尾を振っているかのようなアランがミランダに駆け寄ってきた。
「ミラ!お待たせしました!お疲れ様です。今日は帰りに何か食べましょう」
「アランもお疲れなのに来てくれたのですか?ありがとう」
「先生をしているミラを見たくて……」
生徒たちのざわめきが聞こえる。振り返りたくない。
「帰りましょう」
アランに差し出された手をつい癖で握ってしまう。
しまった。生徒に見られているのを一瞬忘れていた。
ベノンも苦笑いしている。
「ミランダ先生、ごきげんよう!」
生徒たちの華やかな声が頭上に降ってきた。
「……ご、ごきげんよう」
ぎこちなく返して、逃げるように帰った。
「生徒さんたち、ミラを見送るために窓のそばに居たんですか?」
「いえ、決してそうではなく……」
「恥ずかしそうなミラも可愛いです」
翌日、生徒からニヤニヤとした表情で迎えられた。
「では、何か質問は……」
たくさんの手が上がった
「……今日の授業で」
ほぼ手が下がった。
休憩時間にアンナが笑顔で寄ってきた。
「ミランダ先生!旦那さんも筋肉すごいんですか?」
お茶を噴きそうになった。
耐えた。
「私、ベノン・リッキー先生が、ものすごく、ものすごく、大好きなんです!」
キラキラした目が迫ってくる
「筋肉も、普段はぼんやりしてるのに剣を持つと雰囲気が鋭くなるのとか、髪質とか、筋肉とか、全部大好きなんです!」
筋肉二回言ってるし
「先生の旦那さんも、やっぱり騎士ならすごいんですよね」
「え」
「筋肉ですよ!」
「……まあ、騎士ですから……。でもね、アンナさん。私は筋肉の……立派な男性がもともと好きだったわけではなくて、旦那さんになった人がたまたま、そうだったというか」
「いいなあ、先生。私も頑張ってベノン先生に卒業までに告白します!」
若いってすごいなあとミランダは思った
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