74 / 96
第3部 幸せのために
ここでは名前で呼んで欲しい
しおりを挟む
「そちらの美丈夫は、第二宮の下男の方ということだけど、ナディアさんの恋人かい?」
「い、いえ!」
「おや、違うのかい? そうだと思ったんだけどね」
この場にはマリの娘のアンナもいるのだが、アーサーの相手がアンナではなく自分だと思ったのはどうしてだろうと、ふとクレアは思ったがみるみる頬が熱くなってきたのでそれ以上考えるのはやめた。
「なるほど。病に効く魔法道具のレシピね……」
「はい。私のお祖母様が先日から持病を悪化させて寝込んでしまいまして。何かよい道具はないものかとご相談に上がったのです」
「それは大変だ! そうだねえ、うーん」
ちなみに、本来の「皇女がかかっている伝染病に効く方法を探したい」という理由は混乱を招く恐れがあり伏せる必要があったので、架空の祖母の話を作ったのである。
マリは、代々受け継がれてきた魔法のレシピが書いてある分厚い本を取り出して、パラパラと何枚かページをめくった。
「そうだ、これなんてどうだろう。これもまた原材料が分からなくて、手付かずだったものなんだ」
「そうなのですね。えっと……」
件のページには「万能魔法薬」と書かれており、材料には「綺麗な水、月見草」と書かれていた。
「月見草と書かれているんだけどね、様々な種類の月見草や、なんならナディアさんが持ってきてくれた水を混ぜて生成してみたんだが、これまた失敗してね」
そう言い終わった途端に、ドアベルの音が響いたので、マリと一言クレアとアーサーに断ってからアンナが店頭へと移動して行った。
すると、アーサーは興味深そうにレシピのページを読むとポツリと呟いた。
「月見草か」
そして、自然な流れでアーサーは椅子に座ると再び思案する。
「アーサー様。何か、心あたりがおありなのでしょうか?」
「リウス」
「……! そうでした」
「それに……、今の君はあくまで仮にだが下女で俺は下男なんだろう? もっと気やすい言葉で会話をした方が自然だと思うんだけど」
「……!」
早速、言葉を崩したアーサーに、クレアは全力でたじろいた。
「そ、それは、その。私には少し難易度が高すぎるといいますか……」
「そうか。それなら俺の方から少しずつ崩していくが、よいか?」
「は、はい!」
それは、あくまで市井にいる時の限定的なものであれば心臓が持つが、第二宮でもこのような様子だったら胸の高鳴りはしばらく鳴り止まないだろうとクレアは思ったのだった。
「い、いえ!」
「おや、違うのかい? そうだと思ったんだけどね」
この場にはマリの娘のアンナもいるのだが、アーサーの相手がアンナではなく自分だと思ったのはどうしてだろうと、ふとクレアは思ったがみるみる頬が熱くなってきたのでそれ以上考えるのはやめた。
「なるほど。病に効く魔法道具のレシピね……」
「はい。私のお祖母様が先日から持病を悪化させて寝込んでしまいまして。何かよい道具はないものかとご相談に上がったのです」
「それは大変だ! そうだねえ、うーん」
ちなみに、本来の「皇女がかかっている伝染病に効く方法を探したい」という理由は混乱を招く恐れがあり伏せる必要があったので、架空の祖母の話を作ったのである。
マリは、代々受け継がれてきた魔法のレシピが書いてある分厚い本を取り出して、パラパラと何枚かページをめくった。
「そうだ、これなんてどうだろう。これもまた原材料が分からなくて、手付かずだったものなんだ」
「そうなのですね。えっと……」
件のページには「万能魔法薬」と書かれており、材料には「綺麗な水、月見草」と書かれていた。
「月見草と書かれているんだけどね、様々な種類の月見草や、なんならナディアさんが持ってきてくれた水を混ぜて生成してみたんだが、これまた失敗してね」
そう言い終わった途端に、ドアベルの音が響いたので、マリと一言クレアとアーサーに断ってからアンナが店頭へと移動して行った。
すると、アーサーは興味深そうにレシピのページを読むとポツリと呟いた。
「月見草か」
そして、自然な流れでアーサーは椅子に座ると再び思案する。
「アーサー様。何か、心あたりがおありなのでしょうか?」
「リウス」
「……! そうでした」
「それに……、今の君はあくまで仮にだが下女で俺は下男なんだろう? もっと気やすい言葉で会話をした方が自然だと思うんだけど」
「……!」
早速、言葉を崩したアーサーに、クレアは全力でたじろいた。
「そ、それは、その。私には少し難易度が高すぎるといいますか……」
「そうか。それなら俺の方から少しずつ崩していくが、よいか?」
「は、はい!」
それは、あくまで市井にいる時の限定的なものであれば心臓が持つが、第二宮でもこのような様子だったら胸の高鳴りはしばらく鳴り止まないだろうとクレアは思ったのだった。
4
あなたにおすすめの小説
【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません
ゆうき
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。
そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。
婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。
どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。
実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。
それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。
これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。
☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆
自滅王子はやり直しでも自滅するようです(完)
みかん畑
恋愛
侯爵令嬢リリナ・カフテルには、道具のようにリリナを利用しながら身体ばかり求めてくる婚約者がいた。
貞操を守りつつ常々別れたいと思っていたリリナだが、両親の反対もあり、婚約破棄のチャンスもなく卒業記念パーティの日を迎える。
しかし、運命の日、パーティの場で突然リリナへの不満をぶちまけた婚約者の王子は、あろうことか一方的な婚約破棄を告げてきた。
王子の予想に反してあっさりと婚約破棄を了承したリリナは、自分を庇ってくれた辺境伯と共に、新天地で領地の運営に関わっていく。
そうして辺境の開発が進み、リリナの名声が高まって幸福な暮らしが続いていた矢先、今度は別れたはずの王子がリリナを求めて実力行使に訴えてきた。
けれど、それは彼にとって破滅の序曲に過ぎず――
※8/11完結しました。
読んでくださった方に感謝。
ありがとうございます。
【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…
まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。
お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。
なぜって?
お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。
どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。
でも…。
☆★
全16話です。
書き終わっておりますので、随時更新していきます。
読んで下さると嬉しいです。
【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください
ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。
義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。
外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。
彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。
「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」
――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。
⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎
【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜
ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。
しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。
生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。
それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。
幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。
「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」
初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。
そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。
これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。
これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。
☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆
【完結済】どうして無能な私を愛してくれるの?~双子の妹に全て劣り、婚約者を奪われた男爵令嬢は、侯爵子息様に溺愛される~
ゆうき
恋愛
優秀な双子の妹の足元にも及ばない男爵令嬢のアメリアは、屋敷ではいない者として扱われ、話しかけてくる数少ない人間である妹には馬鹿にされ、母には早く出て行けと怒鳴られ、学園ではいじめられて生活していた。
長年に渡って酷い仕打ちを受けていたアメリアには、侯爵子息の婚約者がいたが、妹に奪われて婚約破棄をされてしまい、一人ぼっちになってしまっていた。
心が冷え切ったアメリアは、今の生活を受け入れてしまっていた。
そんな彼女には魔法薬師になりたいという目標があり、虐げられながらも勉強を頑張る毎日を送っていた。
そんな彼女のクラスに、一人の侯爵子息が転校してきた。
レオと名乗った男子生徒は、何故かアメリアを気にかけて、アメリアに積極的に話しかけてくるようになった。
毎日のように話しかけられるようになるアメリア。その溺愛っぷりにアメリアは戸惑い、少々困っていたが、段々と自分で気づかないうちに、彼の優しさに惹かれていく。
レオと一緒にいるようになり、次第に打ち解けて心を許すアメリアは、レオと親密な関係になっていくが、アメリアを馬鹿にしている妹と、その友人がそれを許すはずもなく――
これは男爵令嬢であるアメリアが、とある秘密を抱える侯爵子息と幸せになるまでの物語。
※こちらの作品はなろう様にも投稿しております!3/8に女性ホットランキング二位になりました。読んでくださった方々、ありがとうございます!
冤罪で処刑されたら死に戻り、前世の記憶が戻った悪役令嬢は、元の世界に帰る方法を探す為に婚約破棄と追放を受け入れたら、伯爵子息様に拾われました
ゆうき
恋愛
ワガママ三昧な生活を送っていた悪役令嬢のミシェルは、自分の婚約者と、長年に渡っていじめていた聖女によって冤罪をでっちあげられ、処刑されてしまう。
その後、ミシェルは不思議な夢を見た。不思議な既視感を感じる夢の中で、とある女性の死を見せられたミシェルは、目を覚ますと自分が処刑される半年前の時間に戻っていた。
それと同時に、先程見た夢が自分の前世の記憶で、自分が異世界に転生したことを知る。
記憶が戻ったことで、前世のような優しい性格を取り戻したミシェルは、前世の世界に残してきてしまった、幼い家族の元に帰る術を探すため、ミシェルは婚約者からの婚約破棄と、父から宣告された追放も素直に受け入れ、貴族という肩書きを隠し、一人外の世界に飛び出した。
初めての外の世界で、仕事と住む場所を見つけて懸命に生きるミシェルはある日、仕事先の常連の美しい男性――とある伯爵家の令息であるアランに屋敷に招待され、自分の正体を見破られてしまったミシェルは、思わぬ提案を受ける。
それは、魔法の研究をしている自分の専属の使用人兼、研究の助手をしてほしいというものだった。
だが、その提案の真の目的は、社交界でも有名だった悪役令嬢の性格が豹変し、一人で外の世界で生きていることを不審に思い、自分の監視下におくためだった。
変に断って怪しまれ、未来で起こる処刑に繋がらないようにするために、そして優しいアランなら信用できると思ったミシェルは、その提案を受け入れた。
最初はミシェルのことを疑っていたアランだったが、徐々にミシェルの優しさや純粋さに惹かれていく。同時に、ミシェルもアランの魅力に惹かれていくことに……。
これは死に戻った元悪役令嬢が、元の世界に帰るために、伯爵子息と共に奮闘し、互いに惹かれて幸せになる物語。
⭐︎小説家になろう様にも投稿しています。全話予約投稿済です⭐︎
ソウシソウアイ?
野草こたつ/ロクヨミノ
恋愛
政略結婚をすることになったオデット。
その相手は初恋の人であり、同時にオデットの姉アンネリースに想いを寄せる騎士団の上司、ランヴァルド・アーノルト伯爵。
拒否に拒否を重ねたが強制的に結婚が決まり、
諦めにも似た気持ちで嫁いだオデットだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる