婚約破棄されそうですが…婚約破棄という言葉の意味が分かりません…

清川和泉

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第9話 侯爵家のパーティー

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 そしてパーティー当日。

 ナイズリー侯爵家のお屋敷の前で馬車を降り玄関ホールに入ると、侯爵家の侍従が私たちを速やかに舞踏会場へと案内してくれた。

 会場内にはいくつものシャンデリアがキラキラと輝き、至る所に深紅の薔薇が飾られていて見ているだけで心が躍るようだった。

 ただ、一昨年と比べたらお客様の数が、かなり少ないように感じる。
 前回は、周辺の諸貴族や領内の要人の方々も招かれていたけれど、今日は王宮の法官や文官の方々が大半を占めているようね。
 それに私の両親の様子が先日から普段とは違って、何だか気を落としているように感じるのも気がかりだった。

「まあ、素敵!」
「……メアリーは初めてだったな」
「はい。一昨年は体調が優れなくて参加をすることができなかったので、今日をとても楽しみにしていたの」

 両サイドを三つ編みにしハーフアップにした髪型と、隙のないメイクを施し桃色のドレスを身につけたメアリーは、まるで自分が今日のパーティーの主役とでも言いたげなほど存在感が強かった。

 一方、私はロラン様に贈っていただいた藍色のドレスを身につけ、プラチナブロンドの髪を高い位置で結い上げている。

 メアリーと比べたら目立たないと思うのだけれど、なぜか会場に入るなり刺すような視線を感じたのよね。
 振り返った特には誰も私の方を見ていなかったけれど、あの視線は何だったのかしら。

 それは思い過ごしだろうと思い、ロラン様とロラン様のご両親に挨拶をするために会場内の奥へと移動した。

「本日は、ご招待をいただきましてありがとうございます」
「マリアさん、今日はお越しいただきありがとう。ええ、楽しんでくださいね」
「ありがとうございます」

 ロラン様のお母様である侯爵夫人は、ゆったりとした灰色のドレスに身を包み、扇子で淑やかに口元を隠している。
 とても穏やかな方で、予てより時折お茶に誘っていただくのだけれど、その優しい時間が心地よくて好きだった。

「ロラン様、本日はご招待をいただきましてありがとうございます」
「ああ。……やはり、そのドレスはあなたにとても似合うな」
「ありがとうございます。けれどそれは、ロラン様の見立てが良いからですわ」

 今日身につけているアフタヌーンドレスは、先々月に王都内屈指の服飾店で特別に仕立てていただいたドレスだった。
 月に一度の食事の後に、結婚後に必要だろうと衣服をいくつか仕立てていただいたのだ。その中の一つを今日のパーティーに着ていくことはロラン様からの提案だった。

 ……婚礼衣装も一緒に注文してくださっていて、それは来月には仕上がる予定なのだけれど……。

「素敵な贈り物をいただきまして、ありがとうございます」
「いや、それは当然なことなので気にしないで欲しい。……それよりも、マリア嬢」
「はい」
「これから、あなたにとっては決して良くないことが起きるだろうが、心配しないで欲しい。万全の体制を取っているので外部には漏れないようにしていると言うことも、記憶していて欲しい」
「あの、それは……」
「ナイズリー卿、本日はご招待をいただきましてありがとうございます」

 どういうことかと訊こうかとしたら、燕尾服を着た招待客がロラン様に声をかけたので、それは叶わなかった。
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