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第二章 〜水晶使いの成長〜
第26話 サクラサク
しおりを挟む「新入生、起立!」
ガタガタ!
と音を立て、オレたちは立ち上がった。今は入学式の途中。
クラスはこうだ。
1組……受験の結果の上位40名。
2組、3組、4組はその他だ。
「1組40人。2組30人。3組25人。4組25人。そして、特別コース3人。計123人の新入生諸君……君たちを歓迎する!」
あの人が校長かな?
あんな偉そうな喋り方をするのは校長って決まってんだ。
校長以外にあり得ない。
特別コースは回復術士だったな。
2組、3組、4組に1人ずつ編入されるが、同じ授業を受けたり受けなかったり。
せめて二桁なら、1クラス作れたのにな。
ちなみに、まだ始まってから15分だ。
かなり速い。上級生たちが、昨日のうちに椅子を並べておいてくれたらしい。
おかげで、昨日はグラウンドで模擬戦を行った。先生とは戦えなかった。
オレは全戦全勝! ターバが意外と強かった。
「新入生代表、1組、ライン・ルルクス。他の新入生は座ってください」
呼ばれた。
昨日、先生といろいろ話し合って、完璧なはず。壇の上に登り、校長と向かい合う。
「歓迎の言葉、ありがとうございます。我ら123名は、ここ、ハーマル冒険者学校に入学いたしました。清廉な冒険者学校の生徒に見合うよう、精一杯努力いたします。新入生代表、ライン・ルルクス」
ここで、大喝采が鳴り響く……はずなんだけど。
ちなみに、ハーマルってのはこの領の名前。ハーマル領だ。
「では、3年生より、歓迎の印を。在校生代表、オール・ソロフィ!」
男? 女?
男だ。握手をするの?
「君たち新入生の入学、心から歓迎する。君は、確か棍が得意らしいね」
「はい」
まさか……。
「わかったかな? 模擬戦だよ」
オレには鉄棍が、オール・ソロフィには槍が渡された。
「安心してくれ。僕は覚醒者じゃない。君が覚醒者だったら、覚醒者である生徒が相手をしたんだけどね」
身体強化・覚醒でも、個人差はある。
相手がどのくらいなのかわからないが、鍛錬してきた時間が違う。
オレが覚醒していない以上、真っ向からの勝負は避けるべき……か。
「開始!」
水晶のことは、おそらく知られてる。
だが魔力探知で見たところ、魔法は使えないようだ。
身体強化を発動させ、一気に距離を詰める!
武器は互いに中距離。だが、相手はオレの懐に入れないが……オレは入れる。
と、相手はオレの顔めがけて、もの凄いスピードで槍を突き出してきた。
「っとと!」
咄嗟に顔をひねり、なんとか回避できた。
「──経験値の差はでかいな」
「──才能の壁は高いな」
出し惜しみはできない!
『晶弾』を複数作成し、顔、腹、腿、腕をめがけて放つ。
そもそも、ここは体育館の壇上。横に大きく動けないため、『晶弾』は有効的だ。
とはいえ、相手は3年生。
オレより2つも年上……つまり、最大でもオレより2年も長く修行をしてきた。
経験値量が違いすぎる。
腿にだけ当たったが、それ以外は全て防がれた。
このままここで『晶弾』を連発すれば勝てるかもしれないが、大したダメージは入らなさそうだ。
本来の──殺傷能力を下げていない──『晶弾』であれば、ダメージは通ったかもしれないが、ここでやることではない。
本来の『晶弾』でも、覚醒者には効き目は薄いだろうけどな。
「フーッ!」
息を吐き出し、一気に距離を詰める!
「またか」
やはりまた顔をめがけ、槍を突き出してくる。だが、対策済みだ!
姿勢をさらに低くし、力強く地面を蹴る!
走らずに、低空飛行で距離を詰める!
上手く懐に入れたな。
膝蹴りを繰り出そうとしているのが見えたから、地面に手を着き、頭を地面に着けない頭跳ね起きをし、足裏で相手の顎を蹴った。
「グフッ!」
体制を崩したな。
膝蹴りをしようと、片足を上げていたため、棍で腹を思いっきり突いた。
簡単に倒すことができた。
──かのように思われた。
また、向かい合って立っている。
あの後、右手で槍を操り、オレの腹目掛けて槍が突き出された。
そのため、避けようと後ろに跳んだのだが、その間に体勢を立て直されてしまった。
振り出しに戻ったかと問われれば、返事はNO。
オレはダメージを負っていないからだ。
スタミナの消費も同じくらい……いや、もとの量が違うからオレのほうが多いかな。
そんなに動いたわけではないから、大丈夫そうだ。
ただ、もう突っ込み攻撃は効きそうもないな。
と、思ってたら今度は向こうから突っ込んで来た。
「ほっ! はっ!」
2連撃か。肩と腿を狙われたが、難なく回避。
カウンターで、槍の先を思いっきり棍で振り払った。
「君、棍なのに、剣みたいな動きをするね」
「意識してませんからね。独学でやってきたので、こうなるのも仕方ないんじゃないですか?」
「ふふ……。まあいいさ。次で終わらそう。くじ引きで選ばれたとはいえ、勝たないと先輩失格だからね」
目がマジになった。本気の目だ。怖くない。むしろ、勝てそうだ。
先輩の面がどうなろうと、オレの知ったことではない!
むしろ、オレの株が上がるってもんだ!
勝つ。
視線と視線のぶつかり合いで、火花が生まれそうだ。
そして、ほぼ同時に駆け出した。
偶然だと思うが、どうなんだろうな。
「ホッ!」
「フッ!」
こういう時に音を出すのはあまりしないけどな。息を短く出すだけだ。
互いの武器が先端同士でぶつかる。
拮抗しているが、力比べはオレのほうが分が悪い。体重をかけているから、なんとか保てているだけだ。
体を捻って1回転させ、そのまま棍で顔を払った。
棍のため、先端の太くなっているところではなく、持ち手の細い部分だったが、そこそこ効いただろ。
そこに、先程と同じく、全体重をかけた突きを、相手の腹に放った。
そしてそのまま、壇上から落ちていった。軽く吹っ飛んだ。
「勝者、1年生代表、ライン・ルルクス!!」
オォーーー!!
ここで大歓声、大喝采、スタンディングオベーション!
オレは素直に喜べなかった。
なぜかって?
あの3年生を飛ばした方向がまずかった。
他クラスの1年生の席でした……。なんの確認もせず吹き飛ばしたオレの責任かもしれないけどさ!
そんなこと考える余裕がない相手だったってわかってよ!
……あれ、怒ってない……?
むしろ驚いてる?
そりゃ、3年生に勝ったんだから当たり前か。
来年から冒険者になる人だもんな。でも、あれならターバでも勝てたんじゃ……?
「1年生諸君、頑張ってくれたまえ。以上だ」
いつの間にか、校長が挨拶をしてる。しかもオレの斜め前だ。こっそり降りておこう。
「あ、ありがとうございました」
棍は借り物だからな。今は鉄棍だけど、いつかもっと固い金属でできた棍を持ちたいなぁ。
アダマンタイトも、アポイタカラもヒヒイロカネもないこの世界……。ミスリルとオリハルコンはあるけど、名前だけ。魔鉱なのは間違いないんだけどさ。
そもそも、ミスリルとかオリハルコンとか、全部空想上で、存在しない……。
つまり、これが本物……?
ちなみに、魔力との親和性が高い鉱物に、魔力を染み込ませたものが、魔鉱。
三賢者が発見した。
そういや、いつの間にか校長の、オレたちの呼び方が1年生になってた。
晴れて、合格できたというわけか……。
「それでは、退場します。1年1組から順に退場してください」
おっと、オレも元の位置に戻らないとな。
教室に帰ってきた。
ここに来るまで、ずっとターバと話していた。
で、席に座ると先生が、
「10分ほど休憩してください。その後の指示は、その時またします」
と言うと、ほとんど全員がオレの元に来た。男女問わず。
「おい、ライン、お前すげぇな!」
「3年生を倒すなんてよ!」
「お前、もう卒業でいいんじゃないか?」
「覚醒はしてるの?」
……うるせー。煩わしい。
「……覚醒はしてない」
もう、怒涛怒涛の質問だった。あいつら、そんなにオレに質問する必要あるのか?
顔を売っておきたい、とでも言うのか? まあ、何人か来てなかったけどな。
既に話したことのある、ターバ、ヤマル、ヌー、クォーサ。
他には、スゥ・フォナイに、名前を覚えていない何人か。
不可知の書を見ればいいんだけど、そこまでする必要はない。そもそも教室にいないんだけどさ。
不可知の書に関しては、最初、心の中にある、と思っていたもの。……勘違いでした。
そう、思い込んでいただけでした。ごめんなさい。
……誰に誤ってんだ、オレはヨ。
「──はーいはい、席に着いてください!」
ふ~~、助かった……。質問質問の嵐だぜ。どこからあんなに質問が湧き出るのやら。
「災難だったようね」
「ああ、全くだ」
隣の奴が話しかけてきた。サヤ・ワーグだったか……。
常に眠そうな顔だ。だが、顔立ちはとても整っている。髪は少々ボサボサだが。
確か、ナイフ使いだったな。
「はい、聞いてください! 午後……というより、これから体操服の採寸をしに行きます。体操服はその場ですぐ貰えるので、すぐに着替えて、グラウンドで模擬戦です! ちなみに、武器は自由です」
自由……か。なら、たまには剣でも使ってみようかな。剣は必須らしいし。
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