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第26話
しおりを挟む《雄一side》
翌日、妻の知り合いに連絡してみる。
皆最近は連絡を取っていないらしく、居場所は知らないと言われた。
職場で美鈴の同期だった者にそれとなく聞いてみたが、最近連絡してる?程度の質問しかできなかった。
だいたい美鈴はスマホを置いていってるので、スマホの番号を知っていると言われても意味がない話だ。
そもそも俺は美鈴の交友関係を知らない。
年賀状も部屋を捜したが出てこなかった。
妻がパートしているはずの仕事場にも連絡するが、随分前に辞めていると言われた。
いったいどういう事なんだ。
仕事が終わるとすぐに家に帰った。美鈴が帰って来ているかもしれない。
待っていたのは内容証明郵便だった。
愛梨の家にも送られてきたという連絡があった。
河合愛梨のほうには慰謝料請求300万。
これは3年の不倫関係に対する慰謝料。家庭を壊し離婚に至るわけだから妥当な金額だという。
数年後には離婚する予定だったから、慰謝料は払うつもりでいた。
グダグダ揉めるくらいなら金でスパッと縁を切った方がいいというのが俺たちの考えだった。
MAX300万は大した額ではない。
俺にも慰謝料300万と探偵などの実費弁護士費用などが150万で450万。
これも妥当な金額だ。
財産分与などは必要ないと書いてある。
それならば愛梨の分もまとめて払っても問題ない。
だが……まだ離婚するつもりではなかった。その時期ではない。
俺は弁護士に電話をした。
とにかく妻と連絡が取りたいと頼んだ。
美鈴は全て弁護士を通すように言っていると言われた。俺と話すつもりはないという。
「なにか行き違いがあるようです。直接話せば解決すると思います。せめて今いる場所を教えてもらえませんか?」
「ご主人の不貞行為の証拠は揃っています。もし、離婚したくないとおっしゃる場合は家庭裁判所に離婚調停を申し立てることになります」
「それは、妻と話せば離婚なんて話にはならないはずです。離婚調停、裁判所?そんな大げさな話ではないんです」
「直接話し合う事はできませんので、それが納得できないと言われるのでしたら、裁判所でお会いしましょう。ご主人の社会的立場もあるでしょうから、大事にしたくないとおっしゃるのでしたらこちらの条件を呑んで速やかに離婚届けを書いてください」
「不倫の証拠とは?いったいどういう物なのでしょう。私たちには息子もいますし、今すぐどうこうという訳にはいきません」
「それでは、お会いする日にちを決めましょう。もちろんそちらも弁護士を頼まれてもいいかと思います」
弁護士が持って来た浮気の証拠は言い逃れできないほど完璧な物だった。
しかも3年前、まだ雄太が美鈴の腹の中にいる時から愛梨との関係を知っていたようだ。
毎週水曜と金曜に愛梨のマンションに出入りしている様子から、ラブホテルの写真。カードの明細、プレゼントの領収書。レストランやバーのレシート。車中でキスしている写真。
出張だと言って出かけた京都旅行は動画で撮影されていた。
終わったと思った。
浮気を認めないわけにはいかないだろう。
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