26 / 29
26
思っていたのと全然違う。
グレンは私の事を大事にしないし、何より平民の暮らしって地獄。
自分で服を着替えなきゃいけないし、食べ物も手で掴んで食べている。
すごく汚い。
町はすえた臭いのする浮浪者ばかりだし、魔物の肉が店先で吊るされて売られていて野蛮だ。
なんでこんな場所に異動願を出したの。グレンの気を疑うわ。
グレンは数日家を空けることもあるし、二人でゆっくりする時間もない。
ひと月経って、我慢の限界がきた。
町で商人の男に声をかけられた。
若くてエネルギッシュなその男は、いろんな商品を王都から持って来て売る行商人だった。
金回りも良く、見た目も良かったし、なにより田舎臭くなかった。
話も面白くて気が合った。
この町で一番高いお店で、彼と食事をしてお酒も飲んだ。
少し相手をしてあげたら、王都で流行っている香水を私にくれた。
そして体を許したら簡単にお金が手に入った。
彼は元貴族令嬢の私を、王女様みたいに扱ってくれた。
「この町の娼館で遊ぶつもりだった。メリンダがそこで働けば、いつでも会いに行ける」
彼に娼館を勧められた。どんなところかだけでも見てみると良いと言われて案内された。
彼の知り合いがやっているらしいその店は、客を選べるという。
「気持ちいい事をしてお金をもらえるなんて、最高の仕事よね」
「ああそうだな。メリンダは借金があって働くわけじゃないし嫌ならいつでも辞めればいい」
浮気相手として貴族の既婚者を相手にしていたときは、ただでしてやった。
あのとき、一人ずつお金を取っていたら、どれだけ儲かったのだろう。
今更だけど悔やまれる。
私はグレンに働きに行くと言って、娼館で仕事をすることにした。
もちろん、貴族令嬢だったんだから、そこら辺の汚い男は相手をしない。
私は特別だ。客も選べるし、高額でないと体は売らない。
客たちからは王都の姫と呼ばれた。
男たちからちやほやされて、人気も出て、やり手の職業婦人みたいで楽しかった。
金勘定ができない馬鹿を相手にするときは、彼らを騙して高額を支払わせる。思い通りにお金が手に入る。
娼婦たちは小さな部屋に押し込まれるように寝てるけど、私は娼館の中に自分の部屋をもらった。
特別な娼婦にだけ与えられる部屋だ。だって私は貴族だったし、他の子と一緒になんて寝たくない。
身の回りの世話は娼館の中でも人気のないブスな子たちにやらせる。
娼館に身を売るような女は、みんな学がない。字も読めないし、契約書の内容だって理解していない。
見た目だけで頭空っぽの子を利用して、言うことをきかせるのは最高だった。
***
グレンは王都にいたときみたいに全然かっこよくなかった。
ここへ来てからの彼はただのオジサンだ。
私の客になったルーファスに愚痴を言う。
ルーファスは貸金業を営む中年の男だ。
「私に洗濯をしろっていうのよ、信じられないわ」
彼はむき出しになった私の腰を撫でながら話を聞いている。
「そりゃひでぇな。俺んとこに来たら下働きが何人もいるから洗濯なんてしなくてすむぜ」
ストレスが溜まっていたから、どんどんグレンの悪口が出てきた。
「使用人を雇っているの?」
「ああ。人には身分に合った仕事ってのがある。メリンダはベッドで俺を喜ばせてくれりゃあそれだけで十分だ」
この人の家で暮らしてもいいわね。話を聞いていると、かなり大きな屋敷に住んでいるようだ。
自分の馬車だってある。メイドや執事もいるのかもしれない。
「私は貴族だったから、普通平民とは寝たりしないのよ」
「そうだろうな。気品があるし、やっぱり貴族様は違うな」
ハハハと声をあげて笑う。
その姿は下品だけど、見ようによっては豪快で男らしい。
ルーファスはここに来る度、私に宝石をプレゼントしてくれる。
多分、金が返せなかった人たちから取り上げた宝石だろうけど、そんな事はどうでもいい。
石だけでも価値があるんだから、売ればお金になる。
「素敵な宝石よね、ルビーかしら」
「そうだよ。流石元貴族令嬢だな、物の価値が分かっているんだな」
「ええ。ジュエリーはたくさん持ってたから」
「俺んとこに来たらもっとたくさん宝石が見られるぞ」
ふふっ、と笑って私は彼の首に抱きついた。
「さすがルーファスね。誰よりも賢く稼いでるわよね」
「まぁ、男ってのは稼ぎがあってなんぼだからな」
賢いと言うワードは、この男が喜ぶ最高の褒め言葉だ。
グレンは私の事を大事にしないし、何より平民の暮らしって地獄。
自分で服を着替えなきゃいけないし、食べ物も手で掴んで食べている。
すごく汚い。
町はすえた臭いのする浮浪者ばかりだし、魔物の肉が店先で吊るされて売られていて野蛮だ。
なんでこんな場所に異動願を出したの。グレンの気を疑うわ。
グレンは数日家を空けることもあるし、二人でゆっくりする時間もない。
ひと月経って、我慢の限界がきた。
町で商人の男に声をかけられた。
若くてエネルギッシュなその男は、いろんな商品を王都から持って来て売る行商人だった。
金回りも良く、見た目も良かったし、なにより田舎臭くなかった。
話も面白くて気が合った。
この町で一番高いお店で、彼と食事をしてお酒も飲んだ。
少し相手をしてあげたら、王都で流行っている香水を私にくれた。
そして体を許したら簡単にお金が手に入った。
彼は元貴族令嬢の私を、王女様みたいに扱ってくれた。
「この町の娼館で遊ぶつもりだった。メリンダがそこで働けば、いつでも会いに行ける」
彼に娼館を勧められた。どんなところかだけでも見てみると良いと言われて案内された。
彼の知り合いがやっているらしいその店は、客を選べるという。
「気持ちいい事をしてお金をもらえるなんて、最高の仕事よね」
「ああそうだな。メリンダは借金があって働くわけじゃないし嫌ならいつでも辞めればいい」
浮気相手として貴族の既婚者を相手にしていたときは、ただでしてやった。
あのとき、一人ずつお金を取っていたら、どれだけ儲かったのだろう。
今更だけど悔やまれる。
私はグレンに働きに行くと言って、娼館で仕事をすることにした。
もちろん、貴族令嬢だったんだから、そこら辺の汚い男は相手をしない。
私は特別だ。客も選べるし、高額でないと体は売らない。
客たちからは王都の姫と呼ばれた。
男たちからちやほやされて、人気も出て、やり手の職業婦人みたいで楽しかった。
金勘定ができない馬鹿を相手にするときは、彼らを騙して高額を支払わせる。思い通りにお金が手に入る。
娼婦たちは小さな部屋に押し込まれるように寝てるけど、私は娼館の中に自分の部屋をもらった。
特別な娼婦にだけ与えられる部屋だ。だって私は貴族だったし、他の子と一緒になんて寝たくない。
身の回りの世話は娼館の中でも人気のないブスな子たちにやらせる。
娼館に身を売るような女は、みんな学がない。字も読めないし、契約書の内容だって理解していない。
見た目だけで頭空っぽの子を利用して、言うことをきかせるのは最高だった。
***
グレンは王都にいたときみたいに全然かっこよくなかった。
ここへ来てからの彼はただのオジサンだ。
私の客になったルーファスに愚痴を言う。
ルーファスは貸金業を営む中年の男だ。
「私に洗濯をしろっていうのよ、信じられないわ」
彼はむき出しになった私の腰を撫でながら話を聞いている。
「そりゃひでぇな。俺んとこに来たら下働きが何人もいるから洗濯なんてしなくてすむぜ」
ストレスが溜まっていたから、どんどんグレンの悪口が出てきた。
「使用人を雇っているの?」
「ああ。人には身分に合った仕事ってのがある。メリンダはベッドで俺を喜ばせてくれりゃあそれだけで十分だ」
この人の家で暮らしてもいいわね。話を聞いていると、かなり大きな屋敷に住んでいるようだ。
自分の馬車だってある。メイドや執事もいるのかもしれない。
「私は貴族だったから、普通平民とは寝たりしないのよ」
「そうだろうな。気品があるし、やっぱり貴族様は違うな」
ハハハと声をあげて笑う。
その姿は下品だけど、見ようによっては豪快で男らしい。
ルーファスはここに来る度、私に宝石をプレゼントしてくれる。
多分、金が返せなかった人たちから取り上げた宝石だろうけど、そんな事はどうでもいい。
石だけでも価値があるんだから、売ればお金になる。
「素敵な宝石よね、ルビーかしら」
「そうだよ。流石元貴族令嬢だな、物の価値が分かっているんだな」
「ええ。ジュエリーはたくさん持ってたから」
「俺んとこに来たらもっとたくさん宝石が見られるぞ」
ふふっ、と笑って私は彼の首に抱きついた。
「さすがルーファスね。誰よりも賢く稼いでるわよね」
「まぁ、男ってのは稼ぎがあってなんぼだからな」
賢いと言うワードは、この男が喜ぶ最高の褒め言葉だ。
あなたにおすすめの小説
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
フィーは第二王子レイフの婚約者である。
しかし、仲が良かったのも今は昔。
レイフはフィーとのお茶会をすっぽかすようになり、夜会にエスコートしてくれたのはデビューの時だけだった。
いつしか、レイフはフィーに嫌われていると噂がながれるようになった。
それでも、フィーは信じていた。
レイフは魔法の研究に熱心なだけだと。
しかし、ある夜会で研究室の同僚をエスコートしている姿を見てこころが折れてしまう。
そして、フィーは国守樹の乙女になることを決意する。
国守樹の乙女、それは樹に喰らわれる生贄だった。
いくつもの、最期の願い
しゃーりん
恋愛
エステルは出産後からずっと体調を崩したままベッドで過ごしていた。
夫アイザックとは政略結婚で、仲は良くも悪くもない。
そんなアイザックが屋敷で働き始めた侍女メイディアの名を口にして微笑んだ時、エステルは閃いた。
メイディアをアイザックの後妻にしよう、と。
死期の迫ったエステルの願いにアイザックたちは応えるのか、なぜエステルが生前からそれを願ったかという理由はエステルの実妹デボラに関係があるというお話です。
失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた
しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。
すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。
早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。
この案に王太子の返事は?
王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
優しく微笑んでくれる婚約者を手放した後悔
しゃーりん
恋愛
エルネストは12歳の時、2歳年下のオリビアと婚約した。
彼女は大人しく、エルネストの話をニコニコと聞いて相槌をうってくれる優しい子だった。
そんな彼女との穏やかな時間が好きだった。
なのに、学園に入ってからの俺は周りに影響されてしまったり、令嬢と親しくなってしまった。
その令嬢と結婚するためにオリビアとの婚約を解消してしまったことを後悔する男のお話です。