左目の女神と右目の勇者

モリモリ

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誕生

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※※※本作は、兄真悟目線の物語『右目の勇者と左目の女神』と同時に進行します。あわせてご覧頂かないと、分かりにくい描写もございますので、是非ご一緒にご覧ください。※※※




1981年1月12日
バブル崩壊寸前の昭和の日本に、二人の子供が性を授かる。
父は勇気、母は望。
二人の間に産まれたのは元気な双子の兄妹。
お兄ちゃんは2150g、妹は2080g、双子としては標準的な体重。
元気な産声、母子ともに健康。
双子ではあるが、ごく普通の出産。
ありふれた幸せの瞬間。
よくある、涙の対面....
産婦人科に広がる日常。



ただ一つだけちがったのは、双子で兄妹の顔には大きなアザがあった。



はじめに『違和感』に気づいたのは助産師だった。
お兄ちゃんは顔の右半分に、妹は左半分に、紫色の大きなアザ。
その『違和感』以外は何の問題もない元気な身体。
出産直後の意識朦朧の望はいきなり突きつけられた『現実』に戸惑ったが、それでも元気に産声を上げてくれる二人の宝物を抱いて泣いた。
同じく『現実』を突きつけられた父勇気もそれを傍で見守り涙を流した。
二人の感動の涙。
無事に産まれてきてくれた感謝。
純粋なはずの感動。
しかし、その純粋なはずの感動の中に僅かな『複雑な何が混じりけの感情』があった事をこの時の二人はまだ知らない。




1981年1月17日
二人の兄妹の顔のアザはより色濃くはっきりしたものになった。
勇気は二人につけるはずだった名前を断念し、望の意見に賛成した。
望は元気であれば名前など何でもよいと勇気に任せる事にしていた。
しかし、このアザがこの先二人に様々な逆境を与えてしまうのではないかと不安に思った彼女は兄に『真悟』妹に『明子』と名付けさせてくれと勇気に頼んだ。


兄の真悟には、たとえこのアザが彼を戸惑わせ、苦しめたとしても、本当に大切な『真実』を悟ることのできる子になって欲しい、とゆう想いを込めた。

子供の『子』とゆう字は『一』と『了』の二つの漢字が合わさりできている。
『一』とゆう字は始まりを意味し、『了』とゆう字は終わりを意味する。
転じて、子供の『子』を女の子によくつけるのは、『産まれてから死ぬまでそうあって欲しい』とゆう願いを込めてつける漢字である。と本か何かで以前読んだことのあった望。
妹の明子にはこのアザあっても、産まれて死ぬまで、いつでも明るく笑顔でいれるますように、と願いを込めた。


当初、勇気は予定していた名前を変えるつもりなどなかった。
しかし、二人のアザを心配し受け入れた上で、名前を変更させてくれと頼んでくる望の意見を聞き、自分はそれまで何処かで現実から目を背けているだけで、この子達の未来を本当に心配してやれていなかったのではないかと、ハッとした。

意外にこうゆうシビアな面で男性などより、女性とは強いものなのかも知らない。


兎にも角にも二人の名前は「真悟」と「明子」となり、二人は無事にすくすく育った。
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