左目の女神と右目の勇者

モリモリ

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英雄

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しばらくして父さんが帰ってきた。 
母さんはまだ私達を抱いて泣いている。 
父さんは母さんに事情を聞こうとするが、母さんは泣いていてうまく説明できない.... 
私のせいで、家族をむちゃくちゃにしてしまった.... 



意外にも父さんは落ち着いていて、珍しく家でタバコを吸いだした。 
しばらくして、父さんはおにぃを寝室に誘った。 
「男同士の話をしよう。」と。 

私と母さんを残し二人で寝室に消えていった。


........。



それからどれくらい時間が経ったんだろう....
あの時の私には永遠にも思える時間だった。 
私と二人きりになった母さんは、相変わらず泣きながら「ごめんね」といっている。 
大好きな母さんを傷つけない、安心させたい、そう思ってここまで我慢してきた事が逆に母さんをここまで苦しめる結果になったのは皮肉としか言いようがない。  

父さんとおにぃがやっと出てきた。 
こんな事があったのに、何故か二人の顔は晴れやかに見えた。 
おにぃの耳元で父さんが何かひそひそ話しをすると、おにぃは急に覚悟を決めたような顔になった。 

次の瞬間....      




「母さんは悪くないっっ!!!!!」     



すごい大きな声でおにぃは叫んだ。 
私はあまりにもの声の大きさに、飛び上がった。 
母さんも、父さんもびっくりしている。 
でもしばらくして、あれだけ泣いていた母さんの口角が少しづつ上がっていくのがスローモーションで見えた。 
母さんは嬉しそうに「ばか....」とおにぃにいった。 


私には状況が飲み込めない.... 
とにかく私がむちゃくちゃにした家族をおにぃが元に戻してくれたように感じた。  

私は、この日のおにぃが絵本やアニメに出てくるヒーローに見えた。
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