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第三章:スキルの覚醒
35.迷い森モルアス
しおりを挟む「はふぅぅ~アック様、ごめんなさぁぁい!!」
「んっ? 今は仕方ない。しっかり掴まってろよ?」
「はひい~」
スキュラの麻痺魔法は相当強力なのか、おれにおんぶしているルティは身動きが取れないようだ。
拳やら何やらは強いようだが、さすがに麻痺耐性は無いのか。
急いで裏口から出ると、そこには例の騎士が待っていた。
どうやら敵では無く、外への手引きをしてくれるらしい。
『こっちだ! 付いて来い!』
スキュラたちの姿が見えない。脱出先は別らしい。
ずっと彼女に取引話をさせていたが、グルートとのことはどこまで知っているのか。
落ち着いてから話そう。
そう思いながら、アルビンという男の後を付いて行く。
アグエスタの門ではなく、抜け道のような場所に出た。
そこにスキュラとフィーサの姿があり、手を振っている。
『アックさま~! どうやらご無事のようですわね』
『イスティさま!! こっちだよ~』
ルティをおんぶしながらだったからか、多少多く走らされた。
騎士アルビンの姿は鎧などではなく、普通の町民のような恰好をしている。
「む? 俺の格好が気になっているようだが、これは――」
「事情がありそうなので、聞かないでおきますよ」
「助かる。ちなみにだが、お前が弟のグルートを封じたことはすでに聞いている。そのことについては、ミルシェに聞くといい。俺は行くところがあるので、ここで失礼する」
ミルシェ……あぁ、スキュラのことか。
随分と通じた関係になったようだが、忙しい男なのかどこかへ行ってしまう。
「行ってしまったけど、いいのか? スキュラ」
「……アックさまが思っているような関係ではございませんわ。それよりもここはまだ騎士国の範囲内。あたくしたちはここから先の山向こうにある町、ルタットに向かうことにいたしますわ。ドワーフ娘をこちらに!」
「ん、あ、あぁ」
おんぶしている間にルティは眠っていたようだ。
「ふわあぁぁ……あれ~? アック様~?」
「ルティは、スキュラのところに」
「よく分からないですけど、はい~」
麻痺は解けたようで、ルティはすんなりとスキュラの所に向かう。
ルティと引き換えに、フィーサがおれの元に駆けて来た。
「イスティさま、鞘に収まるね~」
「うん? うん」
何やら二手に分かれてしまっているようだが……。
「アックさま。あたしは、ドワーフ娘と別の道からルタットへ向かいますわ。あなたさまは、宝剣と共に森を抜けて町へ来てくださいませ」
「何でだ?」
「アックさまとドワーフ娘は、この辺りですでに手配書が回っている罪人なのですわ。ねちっこい貴族のほとぼりが冷めるまでは、別行動を取るべきかと思います」
「強さでは負けないのに?」
「人間は争いを起こせば、とても面倒なことになっていくのではありませんか? まして相手は貴族で偽騎士が率いている国。強さでは、確かにアックさまに敵う相手などおりませんけれど……」
貴族でしかも偽騎士……アルビンが本物の騎士だとすると、彼も追われた身か。
それもあの勇者絡みだとすると、面倒な奴に知られたものだ。
「……分かった。スキュラはルティを頼む。おれはフィーサと森を抜ける」
「本当はずっとお傍についていたいのですけれど、国を抜けるまでは我慢いたしますわ」
「アック様~お元気で~~!」
「ルティもスキュラと仲良くな」
「全く……。それでは、お先に行きますわ! アックさま、ご武運を!」
「ああ、また!」
意外にも世話焼きな魔物だったのか、スキュラに外交的なものを任せっきりだ。
ルティとの相性も悪そうではあるが、何とかなるだろう。
「イスティさま、深い森を抜ければ山の洞窟があるって」
「森と山の洞窟か。ということは、別の支配エリアに行くことになるのか」
「何かあったら、すぐに妾を引き抜いて戦ってね!」
「フィーサを? いやぁ、森を抜けるだけなら危険なことは無いと思うよ」
「とにかく! マスターは、スキル上げをするの!! しないと駄目なの!」
「そういえばそうだった。じゃあ、魔物が出たらそうするよ」
「うん!」
宝剣姿のフィーサを鞘に収めながら、先の見えない深い森に進む。
◇
しばらくは人が通ったような森林道を、道なりに進んでいた。
魔物の気配は無く、スムーズに歩いていたのだが……。
「あれっ? 次はどっちに行けばいいんだ……」
すでに道という道はなく、深く生い茂る木々に囲まれていた。
木の枝をすり抜けて進むか、先が見えない草地を踏み進むか……これは迷う。
「フィーサ、山はどっちかな?」
「妾にはサーチスキルなんてないもん」
「だ、だよねえ……ガチャで何か引いてみるか」
こういう時、自然に強そうなルティがいれば……などと思ってしまう。
何だかんだでルティに頼りっきりだったか。
とにかく何か、サーチスキルのようなものを引ければ。
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