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第七章:見えない戦い
87.冒険者砦の攻防戦 1
しおりを挟む「――アックさんっ、今です!!」
「よし、草地にフロストを展開! いけ、ルティ!!」
「はいっっ! とぉぉぉぉぉぉぉぉ……!」
アクセリナが唯一使える光の麻痺魔法で、敵の動きを止めることに成功。
そのすぐ後、間髪入れずに氷属性の弱体魔法を砦周辺の木々に発動した。
砦がある辺りは、砂地が無く草木が多くみられる。
そこを凍結させ、おれたちの方にも砦柵に似たものを作らせてもらった。
動きを封じられた敵数人が砦から姿を見せた上、油断して飛び出している。
それを見て、おれはすかさずルティを攻撃に向かわせた。
「なっ、何だっ――!? ド、ドワーフ……!?」
「く、くそ、足下が……」
「し、痺れが取れない」
麻痺と凍結。
そこに勢いづいたルティが突っ込んで行く。
『えいっ!! やぁぁっ――とぉぉぉ!!』
ルティが振り下ろした拳が、冒険者たちがいる地面に穴を開けた。
地面に亀裂が入り、勢いで土埃が激しく舞い上がる。
「み、見えねえ……」
「――何なんだこの力は」
「駄目だ、無理だ」
攻撃を受けていない冒険者たち。
だがルティの力の強さを肌で感じたのか、抵抗することをやめたようだ。
しばらくして――
ルティに連れられた冒険者たちが、こっちに連れられて来た。
見た感じ強そうに見えないが……。
「アック様、連れて来ました~!」
「よくやったぞ、ルティ」
「えへへ……」
平坦な道に小高い土を盛って、砦を築いた冒険者たち。
おれたちは戦うために通るでもなく、戦って命を落とさせたいわけじゃない。
そのことを説明すると、
「え? 剣士を探しているだって?」
「俺たちは武器なしの戦士だから、剣を使う奴とは別で……」
「砦の最前面は戦士で固まってたから、俺らがいなくなればまずいんだけど~」
などなど、ランクの低そうな男たちが不安そうにしている。
こっちとしても、無用な争いを仕掛けるつもりは無い。
アクセリナが探している剣士。
その男さえ見つかれば、砦の向こうに行けなくてもいいと思っている。
「……じゃあ剣士自体はいるのか? おれは君らと同じ冒険者だ。傷つけるつもりは無いから、砦のことを教えて欲しい。どうすれば、砦にいる連中と話が出来る?」
この男たちは、恐らく詳しく知らされていない者だろう。
互いに顔を見合わせて戸惑っているのが、何よりの証拠だ。
「わ、悪ぃが俺らは下っ端で、しかもザームから来たばかりで何も……」
「ザーム共和国のことか?」
「そ、そこから派遣されて来たばかりなんだ。砦に行けって……」
「なるほど」
「お、俺らはマジで何も分からないんだよ。だから、帰してくれ」
黒幕というほどでもないが、ザーム共和国か。
賢者がいた共和国が砦を築いて、冒険者を送り込むとはどういう……。
「アック様、アック様」
「どうした、ルティ」
「カエルの女の子……ラーナちゃんがいなくなってます~」
「え? い、いない?」
ラーナと名乗った子は、おれの装備を”再生”してくれた。
装備ついでに、強力な水属性魔法も使えるようになった。
テイムをしたまでは良かったが、どう相手をすべきか分からずじまい。
そのまま放置していたが、あまりに謎なカエルの女の子だ。
危険な目に遭うことは無いだろうが、どこに行ったのだろうか。
「アックさん、彼らをどうされます?」
「セリナの意見は?」
「私は帰すべきかと。こちらの味方とするには、リスクがあるかと思います」
「……ふむ」
「アック様。わたしの特製ミルクを飲ませるのはどうでしょう?」
「彼らにか? その効果は何だ?」
「何とっ! 睡眠効果です!! しばらく眠らせることが出来ます!」
アクセリナが言うことも間違っていない。
しかし砦に兵を送って、攻撃して来る人間も混ざっているのは気になる。
狙いがレイウルム地下都市という可能性がありそうだ。
ここはルティの作戦を取るか、あるいは……。
「ルティ、そのミルクはすぐ作れるのか?」
「はいっ! もちろんです!!」
「……じゃあすぐに頼む」
「はいっっ! お任せください」
「アックさん、彼らを?」
「おれに考えがあります。セリナは、彼らを見ていてくれると助かる」
「それは構いませんが、大丈夫ですか?」
「問題ありませんよ」
賢者テミド・ザームはすでにいない。
しかし共和国が冒険者を募り、集めているのは確かだ。
その中にアクセリナが探す剣士がいるかどうか。
不透明ではあるが、冒険者を殺さずに砦だけを破壊出来れば、何とかなるかもしれない。
「えっほえっほ~……え~と、目分量は~」
ルティのお手製である、特製ミルクに期待してみるか。
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