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第九章:神族国家ヘリアディオス
135.闇神クラティアの欲気 前編
しおりを挟む『はふ~ふ~……!! どうしてこんなことをするんですか!? 樽さえ返してくれさえしていれば、この獣たちを痛い目に遭わせなかったんですよ?』
『知りたい?』
『知りたいに決まってますよ!! こんなの、おかしいです! そうじゃないと――』
『アック様がお怒りになって、懲らしめてくれるから。かな?』
『――な、何故アック様のことを……』
『あの力、動き、強さ……とてもそそられるもの……もうすぐここに来て頂けるから、嬉しくって……』
『……そ、そうはさせませんから!』
◇◇
ルティの行方を追っていたおれたちは、広場に集結していた魔物を一掃。
魔法による集中攻撃をして来た連中は、残らず退けた。
上空は見渡す限り、暗闇に染まっている。
空の下に広がる町は衛兵以外で人間らしい者の姿は無く、どちらかと言えば、大したレベルでは無い魔物を棲みつかせているといった印象だ。
神族国家でありながら他の神とは一線を画し、このエリアだけは別の世界を作り出しているような感じを受けている。
「フィーサ、神族国家……神族であれば、ここに邪神も住めるのか?」
「そ、そんなはずは無いなの。闇と光は相対的な力。どちらにも干渉しないでやって来たはずなの……。でもでも、邪神なんてものは存在しないなの」
「それは妙だな。フィーサがいない間に、シーニャが邪神さまとか言って襲って来たぞ? それに、宮殿があったあの村は魔族の村だったらしい。おれを崇めていたのも、獣化の腕が邪神としてのことだったらしいが」
「そっ、そんな存在は聞いたことが無いなの」
邪神は存在しない……となると、闇の神というやつが悪ふざけをしているということになる。
闇シーニャが口にしていたのも、単なる遊びだとすれば相当に性質が悪い。
「……ウニャ? アック、何なのだ?」
「いや、何でも無いぞ」
当のシーニャはおれが放った暴風を受け、闇が消えて元通りになっている。
戦った記憶だけは残っているが、それ以外は忘れてしまっているようだ。
「闇の神ってのは、どういう奴だ?」
「え、えっと、神の名はクラティアさまで、水と雷と闇の属性を併せ持ったお方としか……」
「存在は知っていても、出会ったことは無いと?」
「う、うん」
「土は光の神が?」
「そうなの」
なるほど、だから属性の神が二人しかいなかったわけか。
そういうことを教えてくれないラファーガは、アグニと違って心の狭い奴だった。
「アック、そろそろ進みたいのだ! ドワーフがいないとつまらないのだ」
「あぁ、すぐに行くよ」
「小娘のことだから、またどこかでへばっているに決まっていますの!」
「へばっているだけならいいが……」
「イスティさま。広場を抜けると一本道なの。町の中は魔物しかいないから、突っ切るしか手は無いなの!」
「よし、急ぐぞ」
「ウニャッ!」
魔物であることに違いは無いものの、町に居着かせていることに違和感を感じた。
疑問ばかりが浮かぶが、今はその先を目指すしかないようだ。
◇
「くうぅぅっ……これでもまだ歯向かわせるつもりですか?」
クラティアに仕向けられた魔物たちは、ルティの攻撃によってことごとく倒されている。
その全ては致命傷を負わせたものではなく、ダメージを与えただけのものだ。
「――そう、それならもう用済みね」
「なっ――!? 何でこんなこと……」
「フフ……」
クラティアは、ルティを攻撃させていた魔物を、作り出した亜空間内に全て封じた。
息が上がるルティに微笑むその表情は、さらに恍惚としたものとなっている。
「いくら魔物さんでも許せません! 覚悟してください!!」
「もうすぐアック様が来るけれど、あなたも封じられたい? それならお望みどおりに……」
「わたしには水の魔法は効きませんっ!」
「……残念、あたしの水はぬるぬるして、体中にまとわりつくもの。それはつまり――」
「――!? もごぉっ!? ス、スライム……?」
「当たり! そんなあなたには、アック様がたどり着くまで生かしてあげる!」
「うぶぶ……ア、アック……様――」
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