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第十三章:新たな地
208.カウム樹洞へ
しおりを挟む『そこに見える樹洞までだ! 文句は言わせぬぞ!』
ルティの料理を食べたおかげで枯木や枯草、蔦などをかなり燃やし尽くすことが出来た。
そしてある程度終えたところで、サンフィアに声をかけた。
しかし、
「我は行かぬぞ。我にはここでやることが、山ほどあるのだからな! そ、それに……」
「うん?」
「我はキサマの帰りを待ちたいのだ! 我だけの夫では無いとはいえ、帰りを待ちわびる女がいてもおかしくないだろう?」
「それはまぁ……。し、しかし」
「だが兄に頼まれた以上、森を抜けるまでは案内をしてやる。人間の国に行くなら、さっさと支度をしろ!」
――というやり取りがあり、サンフィアの案内で別の地に通じる樹洞に着いた。
樹洞は樹皮や木の中が腐ったことで隙間が開いて出来た、洞窟状の空間だ。動物や魔物の隠れ場所として最適なのだとか。
そんな樹洞に入ろうとすると、ルティが騒ぎ始めた。
「アック様、アック様!」
「何だ、ルティ」
「サンフィアさんはともかく、どうしてミルシェさんを連れて行かなかったんですか? それにフィーサはずっと眠っているし、わたしとシーニャだけで寂しくないですか~?」
「ミルシェがルティを信用してたからな。それに実際、彼女が残ってくれるのはありがたい」
「でもでも、寂しいですよぉぉ」
「ウニャッ! アックと一緒にいられるなら、それでいいのだ。ドワーフも帰っていいのだ!」
「か、帰りませんよ~!!」
フィーサはずっと眠っている。宝剣から神剣になってまだ間もないし、そういうこともあるだろう。
ルティが心配しているのは、見知らぬ地へ行くのに人数的な不安があるということのようだ。
「ルティ、落ち着け! ミルシェもサンフィアも加わっていないが、この先で加わってくれる者がいるかもしれないぞ」
「はえっ? ど、どこの誰ですか~!?」
「サンフィアから聞いた話だが、この樹洞を抜けた先は完全に見知らぬ地らしい。だがその地のどこかに、どことも交わらない者たちが住んでいる町があると聞いた。そこで気が合えば、国の住人としても迎えたいと思っている」
正確にはサンフィアの兄や、ロクシュから聞いた話だ。
さらにミルシェも知識として得ていた話らしく、仲間として得られれば強い味方となるのだとか。
「それって、人間ですか? エルフ? それとも~?」
「そこまでは分からないが、その為にもここを抜けて行く必要がある。そういうわけだから、落ち込むな」
「はいっっ! そういうことでしたら、張り切って行きますよ~!」
落ち込むと長引きそうなルティだったが、まだ見ぬ仲間の可能性に嬉しそうにしている。
反対にそんなことでは喜びそうにないのが、シーニャだ。
「ウニャ~……エルフ、面白い。森のエルフ、話せたのだ~」
「サンフィアと打ち解けて、仲良くなったんだな」
「ウニャ」
「心配するな。イデアベルクにずっと戻らないわけじゃないんだ。だからシーニャも……」
「アックを守る! アックと戦うのだ。ウニャッ!」
「その意気だ!」
シーニャは元々、森に棲んでいた虎人族。だが姉のような存在がいなかった。
それだけに、エルフではあってもサンフィアのことを姉のように思い始めているのかもしれない。
「それじゃあ、中へ進むぞ」
「はいっっ!」
「ウニャッ!」
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・・・
・・
・
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