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第十五章:イデアベルク
268.エルシーさんの飛行盟約 イデアベルク再建編⑦
しおりを挟むイデアベルクには人間よりも獣が多い。意識して集めたわけでは無く、自然と増えて行った。
エルフとドワーフを抜きにしても、ネコ族を筆頭に様々な獣、それも獣人ばかりが多くいる。
獣人の多くは、見た目はほとんど人間と言っていい。
しかし人としてよりも獣として生きて来た者が多いので、夜に動く者が圧倒的だ。
森林区の一角には、そうした獣人たちが多数暮らしている。
普段はミルシェに従うように伝えているだけに、おれにはどういう反応を示すのか。
それにしても真っ暗すぎる。
夜だからとはいえ、灯りを照らずに生活しているのは平気なのだろうか。
中には夜目が利かない者もいるはずなのだが。
獣の森には人間が暮らす家と遜色のない小屋が、いくつも建っている。
それでも種族によっては外で暮らす者もいて、ある意味自由な場所だ。
「――確かこの辺の木に……」
「アックさんだ! アックさん。よく来たのじゃ!」
「おっ!」
「よく来た、来た! 木の葉の上、暖かいのじゃ。ここ、来て!」
獣人たちにもリーダーがいて、上手くまとめてくれる者が存在する。
盟約を結ぶには、リーダーと話をつけるのが一番手っ取り早い。
「エルシーさん、起きてたのか!」
「んむ。夜鷹、夜、強い! アックさんも強い?」
「まぁ、弱くは無いな」
獣人をまとめているのは、鳥獣族のエルシーという女の子だ。
見た目は小さな女の子だがかなり長く生きているようで、長老クラスと言っていいだろう。
鳥に戻った時の姿は、フクロウに似ている上にモフモフ度がかなり高い。
人の姿の時も撫で甲斐のありそうなまんまるい頭で、とても可愛い姿をしている。
それはともかく、獣の森をまとめる彼女に話をつけておけば、獣人たちも安心するのは間違いない。
「危機、危機が迫る?」
「――え? 既に伝わっている?」
「エルシー、これでも偉い! こう見えても、獣のリーダーなのじゃ!」
高音を発しながら話す彼女は、堂々とした態度をおれに見せつけている。
この辺りはさすがだ。
「話が早くて助かる。それじゃあ、盟約を交わ――」
「アック、風でどれくらい飛ぶ、飛べる?」
「風魔法でだと浮くってのが正しいな。それがどうかした?」
「……アックとの盟約、飛行の盟約にするのじゃ! アック、きっと飛べる」
――ということで風で浮くよりも、ほんの少しだけ飛べるようになってしまった。
魔力を消耗しなくていいのはかなり助かるが、魔法による防御や遠隔攻撃からの防ぎについては、これから慣らしていく必要がある。
「おぉぉ……」
「これでいつでも一緒、一緒なのじゃ!! アック、また来て~」
「分かった、ありがとうエルシーさん!」
鳥人族の加護を得たのは大きい。
他の獣人とはまた別の機会に話すとして、そろそろ家に帰るか。
そういえば、ルティをずっとほったらかしにしていた気がする。
家に帰る前にこぶし亭に行ってみることにした。
◇◇
ルティの”こぶし亭”は、彼女よりもネコのスタッフたちが張り切って働いている。
そのおかげでいつ行っても開いているので、その辺は助けられていることが多い。
居住区の端ではあるが、明るさを放っていていつも賑やかだ。
「いらっしゃいませニャ!! あれれ、アックさまニャ!」
「ルティはいるかな?」
ニ、三人のネコスタッフたちは顔を見合わせて、それぞれ戸惑いを見せている。
「ニャ? 来てないニャ」
「見ていないニャ」
「お魚たくさん釣って来てたニャ!」
一体どれだけ釣っていたんだろうか。
――ということは、一度はここに立ち寄ったみたいだな。
「なるほど、それじゃあ……帰って来るまで何か食べようかな」
「毎度ありがとうございますニャ~!」
こんな遅くまでどこに行ったのだろうか。
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