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第十六章:エンシェント・エリア
286.覚醒解放者からの伝授 後編
しおりを挟む伝授ということは、ルティたちに課した試練のようなものをおれにもするのか。
今のおれに、今さら別の覚醒を授けるというのはどうなのだろう。
「その考えには疑問を浮かべますよ、アック様」
「――えっ?」
「強くなり、最強となったからといって、自分だけよければいい……その考えに同意出来ません」
まさか、心でも読まれたのか。
エルフの中にはそういう能力がある者もいると聞くが、迂闊に考えられなくなりそうだ。
ネローマさんの隣に立つリリーナさんも油断出来ないし、ルシナさんもそんな感じがある。
要するにネーヴェル村と関わりがある者には、特別な力が備わっているということなのだろう。
「そんなつもりじゃ……」
「アック様に試練を受けさせたのには、そういう側面もあるのです。お心当たりがあるのでは?」
ルティやシーニャのことを言っていそうだな。
彼女たちには、何度か危ない目に遭わせたことがある。
しかしいずれも救い出せているし、大きな問題にはなっていないはずだ。
ただ、これから戦う敵に関しては危機的状況に陥るかも不明だし、そうならない場合の戦い方もまだはっきりとは決めていない。
恐らく長期的に見てのことを言っている。
「まぁ、それなりに……」
「今回、ネーヴェルが手を貸した覚醒についてですが、今後はアック様の方からして頂ければと思っています」
「――! 魔石では無く、彼女たちの覚醒を?」
「そうです」
これはまた、何とも突拍子も無いことを言われたものだ。
魔石に関しては使った分だけ成長することが分かっているが、彼女たちとなると勝手が違う。
そんなスキルは備わっていないし、魔石支配でさせるやり方も気に入らない。
「おれにそんな特別な力はありませんよ?」
「ええ、今は確かにそうです。ですが、それを今から伝授致します。アック様にそのご覚悟がありましたら、いつでも始めたいと思います」
これがおれへの試練ってやつか。
そしてこの村に来させた最大の目的がこれらしい。
現状、ルティとシーニャは眠っている。
サンフィアは恐らく、戦いの基本を身に着けている最中なのだろう。
ミルシェはこの場にいるが、特に何かをされるわけでも無い。
そうなると、おれしか出来ないことが待ち受けている。
強くなる以上に覚醒をも施せるようになるとか、とんでもないことになりそうだ。
しかしそれをすることによって、ルティが敵の手に落ちることが無くなるのであれば、受ける必要は十分にある。
「おれはいつでも構いませんよ」
「……頼もしいお言葉です。それと力を目覚めさせた時には、アック様が持つ"錆びた剣"も覚醒を果たすことになるでしょう」
「錆びた剣? それって、ガチャで出した――」
「使い道に困っているあの剣のことです。お忘れですか?」
そういえばすっかり忘れていた。
捨ててはいなかったが、どこにやっただろうか。
そもそも両手剣であるフィーサがいるし、片手剣でしかも錆びている剣をどう使えばいいのか、ずっと分からない状態で来ていた。
まさかそれが覚醒によって使えるようになるなんて。
「そ、そんなはずはありませんよ。それで、覚醒する為の伝授というのは?」
「ではこれをどうぞ!」
「はっ? えーと、これって……」
「特製ドリンクです。ルティシアから、いつも飲まされていますよね? それと似たものです」
ネローマさんから手渡されたのは、いつもルティに渡されていた大きめの瓶そのものだった。
そういえばここは薬師の村だったか。
つまり、ルティにとっては第二の故郷のような村になる。
ルティが作る特製ドリンクは全体的に甘い味が多かったが、これはどんな味になるのか。
「じゃ、じゃあ、遠慮なく……」
「わたしたちはアック様のご無事を祈っております。お戻りになるまで、洞穴で待つとしましょう」
いつもはルティが無理やり流し込んで来るが、今回は自ら飲まなければならない。
どうせ甘いものだろう、そう思って一気飲みをしたが――。
「無事を? どういう意味で――うっ!?」
これは何だ――。
劇毒いや、毒よりも禍々しい感じがする。
とてもじゃないが、一気飲みをして後悔するほど、恐ろしく不味くて激痛が走る液体だ。
魔法や近接物理ではダメージは受けないが、これは体内から来る痛みになる。
「がぁっ――!!! うぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ……じょ、冗談だろ……く、くぅぅぅぅ――」
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