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第二十章:畏怖
397.予感のエルフ、魔石を託す
しおりを挟む「あっ! アック様、あそこにいるのって……」
「ウルティモだな」
おれたちは戦闘魔導士たちを説得。そのまま引き連れ、ひとまず旧グライスエンド教会に戻ることにした。すでに彼らの戦意は無く、そうかといって放置するわけにもいかない。
ということもあり、置いたままにするのは危険と判断して今に至る。
道化師スフィーダには待ち合わせ場所で待っててもらう――
――と同時に、下手なことをさせない為にミルシェとフィーサに見張りをさせた。
彼女たちであれば、小細工の一切が通用しないと踏んだからだ。そしておれとルティ、シーニャとで洞窟トンネルを戻ることにしたのだが……。
そこで待っていたのは、イデアベルクで留守をしているはずのウルティモとサンフィアだった。
「サンフィア!? 何で君がここに? 確かもう外には出たくないって言ってた気が……」
「そのとおりだ! 我は金輪際、アックと行動を共にするつもりは無い! だが、我の代わりをそばに置かせるくらいなら許す」
「サンフィアの代わり?」
何のことか分からず首を傾げると、彼女は何故か照れながら石を差し出して来た。
「我の魔石を貴様に預ける。これならば我がいなくとも同じことになるはずだ!」
「……でもこの魔石って、形見のもので大事なものじゃ?」
エルフの村だったイーク村で形見として授かった魔石。サンフィアはその魔石を手にして、そのまま自分の物としてしまっていた。
それがどういう心変わりでおれに預けるのか。
「つ、つべこべ言わずに我だと思って預かれ!! 貴様の変な力があれば魔石の力を使えるのだろう? つ、つまり、そういうことだ! マヌケめ」
戸惑っているおれに向けて、彼女は乱暴に魔石を投げつけた。形見のはずなのにその扱いは……。
「アックくん。われが説明しよう」
「……ウルティモが?」
魔石を投げつけたサンフィアの姿はすでになく、戦闘魔導士たちを連れて外に出ているようだ。
ここへ来たのは本当にそれだけだったみたいだが……。
「うむ。その前に、戦闘魔導士たちを生かしてくれたことに敬意を表す。イデアベルクの戦力となるかは別だが、われとしても同胞を失いたくないと思っていた。感謝する」
かつてウルティモはおれに負け、イデアベルクに移り住んだ。その時、他の魔導士たちを気に掛ける言葉は無かった。しかし言葉は出さずとも気にしていたらしい。
「ウルさん! こぶし亭の様子はどうですかっ?」
「うむ、人間たちにも好評のようですぞ! ルティシアさんが戻られるまでネコたちも頑張ると言っていましたぞ」
「おおぉ~! 引き続きよろしくですっ!」
「任された!」
(シーニャはおれ以外に懐かないが、やはりルティは誰とでも仲良くなれるみたいだな……)
ふと手にした魔石を気にすると、特にこれといった変化は見られない。しかし何だってこんな行動を見せて来たというのだろうか。
「アック、まだなのだ?」
「ん? あぁ、もうすぐ行くよ」
誰かがここで待っているという予感は無かった。だがウルティモは異変に気付いていた。サンフィアも気付いていたのかもしれないが、言葉に出すより魔石を投げつけるだけに留まった感じか。
「……アックくん。話を戻すが、サンフィアを含めたエルフたちは異変に気付いている。その為に帝国へ進むのだろうが、油断禁物。帝国の戦力はザームとは別物だ。その辺りを気を付けてくれたまえ!」
――なるほど。シンザ帝国のことは気付いていた訳か。エルフたちが騒いでいるということはそういうことなのだろう。
「あぁ、承知している。サンフィアの魔石もそういう時の為なんだよな?」
「そのとおりだ。アックくんならば、魔石だけで事を起こせるのだからな」
「分かった。彼女にもよろしく言っといてくれ」
「うむ。ついでではあるが、君が持っているアイテムに尖った石があるだろう?」
ガチャで出したアイテムのこともお見通しか。時空魔道士というだけあって、見て来たかのようなことを言う。彼を怪しんでも仕方ないので、尖った石を見せた。
「これのことか?」
「それはわれが預かろう。その代わり、この丸い石を授けよう」
「丸い石? 尖った石はどうするつもりがある?」
「……何てことは無いが、尖った石はわれが欲しいだけでな。物々交換というものだ。丸い石はそうだな、困っている相手に投げつければ発揮するだろう」
特に疑うこともなく交換に応じ、彼と別れた。
ガチャで出した石についてどうすればいいか、分からないままだった。しかし代わりに何かの効果がある丸い石をくれたので良しとする。
それにしても、イデアベルクに戻ることなく済んだのは幸いだった。
あとはミルシェたちの元に戻って、サンフィアの魔石を使うことが無いように帝国を探るだけだ。
「ん? ルティ、その荷物は?」
「支援物資を頂きましたっ! これであれこれ出来ちゃいますよ~」
「そ、そうか」
「はいっっ!」
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