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第二十二章:果ての王
475.シーニャと魔王 1
しおりを挟むシャドウドラゴンの広間はウルティモたちに託し、おれとルティは次の広間を目指して駆け抜けた。広間を抜けた所で制限が解消されたので、ルティを降ろして次へ向かっている。
「ウルティモさんとアヴィちゃん、大丈夫でしょうか?」
「盟約の縛りのせいか、おれたちは手出しが出来ない戦いだったからな。無事を祈るしか無いだろ」
「あうぅ」
散々邪魔して来たスフィーダのことだ。単なる話し合いで済むとは思っていなかった。まして古の盟約とやらを出されては、どうすることも出来ない。
敵となるかどうかは奴の出方次第だ。
「アック様。明かりが見えて来たです! 次の広間じゃないですか~?」
「だろうな」
「よぉし、よぉぉし。次こそわたしの番ですよぉぉ!」
「……油断はするなよ、ルティ」
次の広間が間近のようだが、盟約の種族となる者たちはすでに散らばっている。
そうなるとこの先で待っているのは――
「着きました――って……ええぇ!?」
張り切っておれの先を行くルティの反応を見れば、この先にいるのはおそらく。
「遅かったじゃないか、アック・イスティ。僕はずっとここで待っていたというのに」
待ち受けているとすれば、魔王しか残っていないと思っていた。そして奴の悪趣味は健在で、とても話し合いをさせるつもりは無いようだ。
スフィーダは想像よりも何も無い部屋の奥で、魔王の椅子に座ってふんぞり返っている。それだけで『魔王』の風格が漂っている感じだ。
だが問題は魔王じゃない。
「ああぁ、アック様。どうしてシーニャが魔王の隣に立っているんでしょう? それにフィーサとミルシェさんの姿がありませぇん」
シーニャの目は開いているが、意識だけ閉ざされている状態のようだ。その状態で、まるで側近のような扱いで隣に立たせている。彼女を操るつもりでそばに置いているのか。
「シーニャをどうするつもりだ! それに、おれの仲間の2人をどこへやった? おれとは話し合いで済ませるんじゃなかったのか?」
シーニャはモルアスの森にいた虎人族の気配を追ってここにたどり着いたはず。それなのに虎人族の姿が見えないどころか、シーニャを追ったミルシェたちの姿も無い。
こいつは一体何を狙っているんだ?
戦う気があるなら小賢しい真似はするなと言いたい。
「……もちろん、君とは話し合いで済む。君も見て来たとおり、関係の無い種族との戦いはさせなかっただろう? でもそれじゃあ面白くない。そこで僕はいいことを思い付いたのさ!」
全て見ていたうえでのことか。
「シーニャとおれたちを戦わせるつもりだな?」
「ええっ!? シーニャが敵になるんですか? そ、そんなぁ……」
出会い始めは戦ったりもしたが、お互いを知らなかった時だった。
しかし今は違う。
「いいや。ここにいるワータイガーの娘は、残念ながら君の仲間では無いよ。仲間にしたと思っていたかもしれないけどね」
「――何? どういう意味だ?」
「おかしいとは思わなかったのかな? 他の虎人族と仲間でも無く、故郷も無い彼女が何故森に1人でいたのか」
迷いの森にいたシーニャは、確かに他の虎人族とは行動をともにしなかった。悪い獣人では無かったし、時間が経つにつれて懐いてくれたわけだが……。
「シーニャ……正確には彼女の親になるけど、ワータイガーは強靭な肉体とずば抜けた強さを誇り、最後までこの城を守ってくれた忠誠心があった。それも人間相手にね」
人間をやたらと警戒していたがそういうことなのか。
いや、そうだとしても……。
「彼女はおれにすぐ懐いたし、おれの仲間となってずっと一緒にいた! それを何故今になって操ろうとする?」
「操る……? それも違うね。彼女は自分の意思でここに立っている。戦うためにね。今は戦いに備えて精神を休ませているに過ぎない。彼女との戦いの前に、君には別の相手を用意した」
スフィーダの言葉がそうだとしても、シーニャと戦うなんて考えられない。
「別の相手?」
おれの問いにスフィーダが指を鳴らし、透明の壁に閉じ込めていたであろう2人を露わにした。
「アック様!! ミルシェさんとフィーサですよ! 今すぐ助けに――」
2人の姿を見てルティが慌てて飛び出すが、
「おっと、ドワーフの君には相応しい相手を用意している。今は大人しくしててもらうよ!」
「んぎゃっ!?」
何かをした動きを見せなかったが、スフィーダによってルティは動きを止められてしまった。
眠らされていたミルシェとフィーサがルティの静止に代わって、目を覚ました。
「……ア、アックさま! 申し訳ございません。虎娘を追っていて捕まってしまうなんて……」
「わらわも油断が過ぎたなの……イスティさま、許して欲しいなの」
ルティを止めて2人を目覚めさせたってことは、悪趣味な戦いの始まりか。
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