553 / 577
第二十四章:影の終焉
553.混沌のザーム決戦 ②
しおりを挟むルティのことはまだ気にする段階じゃない。
まずは出現する敵を片付けて行かなければ。
「ウニャ? 地面から別なのが出て来たのだ。全部倒せばいいのだ?」
「そうするしかないな。どういう"遊び"かは知らないが、こっちの強さでも見ておきたいんだろうな」
「シーニャ、たくさん戦いたいのだ! ドワーフとオリカだけ先に進んでてずるいのだ」
シーニャは純粋に戦いたいだけのようで、おれとしてはその方が気楽に動ける。
ルティのことを全く気にしてないわけじゃないだろうが、細かいことは気にしてないだけかもしれない。
フィーサは魔剣を"眠らせたまま"おれの手に収まっている。
今はまだ切り替えるような状況じゃないということだな。
「――イスティさま」
そう思っていると、フィーサが何かに反応を示す。
前方を見ると地面から次々と魔物が出て来るのが見える。
さすがにダークヘイズに覆われた空だけあって、魔物ポップが早い感じか。
「ん? 敵か?」
「シャドウタイプの敵なの。でも、その中に人間も混じっているなの。あれはおそらく……」
「人間が? まだ生きてる人間の敵が残ってたのか」
「多分イスティさまの嫌な記憶の中に残る人間……」
おれの記憶の中の嫌な人間は、勝手に倉庫をクビにしたSランクパーティーのあいつらだ。
今となっては……な奴らだし、しつこく戦闘を繰り返したのはせいぜい聖女のエドラくらい。
出て来るとすればあっさりと消えたテミドか。
ザームは賢者の本拠地だった場所。それにイルジナというより、ここの影そのものがテミドを特別扱いしているから"復活"させる可能性は否定出来ない。
「来たなの!」
「――! あれは弟の方か? そういや逃げてどこかにいなくなってたな」
シャドウウルフ、シャドウデーモンにシャドウマシーン……。
旅の途中で戦ったことがある魔物ばかりだ。
大した強さじゃなさそうだが、骸骨騎士より利口になっているはず。
「シーニャ! シャドウ族は全部任せていいか?」
「ウニャッ!!」
闇属性の敵に対し、シーニャの攻撃は絶対的な安定感がある。
シャドウに紛れた奴だけはおれが相手をするとして、残りは全てシーニャに任せる方がいい。
「シーニャ~、気をつけるなの! 油断したら駄目なの~」
「分かってるのだ!」
フィーサからの言葉を受け、シーニャは勢いよくシャドウ族に突っ込んでいく。
それらとは別に、テミドの弟だけがゆっくりとした足取りでおれに近づいて来る。
「くっ……何で俺がこんな化けもんを……」
どうやら人間としての意識がまだあるようだ。
しかも、影の命令で無理やり寄こされたかのような態度を出している。
それにしても――見れば見るほどテミドという男の外見そのものだ。
かつてのエドラのように、よみがえったかのような妙な気分になる。
「……お前はテミドの弟の――ブラト・ザーム……だったよな? てっきり遠くに逃げて二度と姿を現さないかとばかり思っていたけどな!」
実力はもちろん、隠し持つスキルに至ってもこの男から脅威は感じられない。
だが影がこの男だけをわざわざ生かしておいたというのは、何かの狙いがあってのことだ。
この男の出方次第で戦い方が確定する。
「ちっ、化けもんに同情されるたぁ、つくづく女に縁がねぇな……。てめぇみてぇな化けもんと誰が戦いたいってんだ! だがよぉ、俺の実力を舐め切ってっと化けもんでも怪我すんぞ?」
プライドはまだ健在らしい。
あまり気は進まないが、どこかに吹き飛ばしてザームから去ってもらうか。
軽く拳でも突き出せば吹っ飛ぶ。
そうしようとした時――
「ハハハハ……そう上手く行くとでも?」
「イスティさま、下がって!」
「! 影か!」
突然、ネルヴァがブラトの隣に現れた。
どうやらブラトにまとわりついていた影だったようだ。
「な!? 何で、あんたが姿を見せやが……うっううぅ……うがああああああ!? お、俺の体に何をしやが――」
「ハハハハハハハハ。その肉体を捧げれば、そうすればお前はあの方の中で生きられる! ありがたく思え!!」
「があああああああ!? ぐがが……くそぉぉ……」
――なるほどな。
やはり奴を復活させるつもりで生かしておいたか。
0
あなたにおすすめの小説
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる