城伯末女だけど、案外したたかに生きてます

遥風 かずら

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第一章 お城と巡りあい

第10話 初めての魔法鑑賞 ②

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 ルーシャが正式にジェニスに命じた直後、彼は幼き魔法兵たちを整列させたかと思えば、彼ら一人一人の真正面に壁を顕現させる。

(やっぱりそうだ。城ゲーで壁防御を使えた職業って石工職人だけだったし。彼が見習いだとしても、固有スキルは使えると思ったんだよね)

「うわ~! すごいすごい! 僕専用の的が出来た~」
「この的なら!」
「集中だ~!」

 などなど、小さな魔法兵たちは喜びを露わにしている。そんな彼らの反応を見たところで、ジェニスは首を傾げながらルーシャを自分の近くに呼び出している。

(何か問題でも起きたのかな?)

 石壁の顕現を確実にしたのに何が気に入らないのだろうか。

「ジェニス。来たけど、何?」
「あぁ、その前に。魔法を自由に撃ちたそうにしてるぞ。命令待ちって奴だ」
「……あ、うん」
「全く、自分から見たいって言ってたのに抜けてるな」
「うるさいなぁ」

 一言余計すぎるんだけど。

「それでは、詠唱始め!」

(流石に無詠唱は出来ないよね)

 ルーシャの合図と同時に小さな魔法兵たちは、自分のタイミングで魔法詠唱を始める。

 すぐに魔法を撃ち始めたのはルーシャと同じくらいの子たちだ。火、水、風……といった感じで目の前の壁に向かって思い思いにぶつけている。

 城ゲーで何度も見てきた魔法がまさに目の前で。だけど、魔法は後方での活動ばかりで、前線では全然見たことがなかった。

 もしかしたらそれはあくまでゲームの仕様だったのかもしれないし、ゲーム的な制限が解除されていなかったかもしれない。

 そう思うと、これからの楽しみと思えば何とかやっていけそうな気がする。

「はぁ~……なるほど、これが属性ごとの魔法なんだ……」

 とはいえ、色鮮やかに発動される魔法を見たら、素直に感動の言葉が出てくるのは普通だと思う。

「……初めての魔法鑑賞ってやつか。確か、ミラー将軍に幽閉されてたんだっけか? 基本中の基本魔法なのに、そこまで感動するとはな」
「い、いいじゃない。ずっとお部屋に閉じ込められていれば、誰だって初めて見るものには感動するでしょ!」
「戦場に出ればすぐに飽きるほど見られるようになるけどな」

(何かいちいちつっかかってくるんだよなぁ)

 それはそうと、何か言いたそうにしてたのは何だったのだろう。

「ところで、私を見て首を傾げていたのはどういう意味なの?」
「あぁ、あれは……」

 ジェニスはルーシャを見ながら言いづらそうにしている。その表情は戸惑っているような感じに思えた。

「……オレが気になったのは壁のことだ。ルーシャの命令だから壁を出した。それはいいんだ」

 石工職人のスキルのことで文句が言いたかった感じだろうか。

「命令したから従ったんでしょ? それ以外に何の問題があるの?」
「分からないのは、なぜオレが壁を出せることを知ってたかだ。オレの固有スキルである石壁作成を知る者は、親方以外ではミラー将軍だけのはず。つまり、門外不出のスキルでもあるんだ。それなのに君はなぜ知ってる?」

(あ、あ~。城ゲーやってたからです。なんて言えるわけない)

 石工見習いのジェニスが出した石壁は相当頑丈に出来ていて、小さな魔法兵たちが繰り出す魔法にはびくともしていない。

 それだけ見て判断すればとても見習いには思えないけど、固有スキルの場合、強さだとかは関係なく修練度で使えるようになる。

 そう言われると、関係者でもないのに何で知っているって疑いたくなるのは無理もないかも。

「さっきジェニスが言ってたけど、私、長いことお部屋に幽閉されていたの。その時にお部屋の書棚を読みまくってて、それでこの世界――ここで起こりうるあらゆる知識を得たんだけど……この答えじゃ納得出来ない?」

 実を言うと書棚があることも知らなかったけど。

「う~ん……書棚にオレ、いや石工職人の固有スキルが載ってるとは到底思えないんだけどな」
「そ、そんなことないと思うけど」

(どうしよう、他に何を言えば納得してくれるの?)

「ルーシャの言ってることは間違いじゃないよ、ジェニス」
「えっ? ミ、ミラー将軍!?」
「お、お母様?」

 ジェニスの驚きと同時にルーシャもミラーがいるところに目を向ける。ルーシャとジェニスが驚く中、ミラーは得意げに話を続ける。

「ルーシャには言ってないが、あの書棚にはちょっとした秘密があるのさ! その秘密を使えば、自分が直接関わらなくてもいいスキルの知識まで覚えてしまうってわけさ!」

(そうだったんだ。読んでないけど)

「秘密というと、将軍の素質のようなものですか?」
「その通り」

(城ゲーの知識、恐るべし。スキルの書とか使いまくってて良かった~)

「そうすると、ルーシャお嬢様には何もかも分かられていた……そういうことですか……」
「あっはっはっは! どうだい、凄いだろう? あたしの娘は!」
「は、はい。いや、正直ここまでとは思ってなく……」

 完全に舐め切ってたし、態度で分かりやすかったけど。

「どれ、未来の魔法兵の具合は……ふむ。使えそうなのが何人かいるようだね。石壁という動かない的を出させたルーシャも偉いが、その命令に従ったジェニスも十分に偉いね! あっはっはっは!」

 どうやらミラーのお目にかかったらしい。

 ジェニスはミラーを前にして緊張しっぱなしのようで、彼女がここに姿を見せてからただの一度もルーシャの方を見なくなった。

 それだけ厳しかったということなのかもしれないけど。

「……さて、ルーシャ」
「はい、お母様」
「魔法鑑賞は満足しただろう?」
「は、はい!」

(命令しただけで私が何かしたわけじゃないけど)

「魔法を見たことだ、ルーシャにはあの子の手伝いをしてもらうよ!」

 あの子と言われるとアロナしか思い浮かばないけどどうだろうか。

「お手伝いですか?」
「ついてくれば分かる」

 そうなるとここの魔法兵たちはどうするのだろうか。だらけた兵士長がいなくなった以上、誰か代わりを置かないと教えようがないと思うのだけど。

「お、お母様。あの子たちはどうすれば?」
「心配ないよ。次はちゃんとした奴を置く。ルーシャはあくまでお試しで指揮命令を下したにすぎないからね」

 ルーシャが小さな魔法兵たちを気にして見てみると、そこにはミラーが言ったように、真面目そうな二人の女性があの子たちについていた。

「ミラー将軍。オレは仕事場に……」
「いいや。お前はまだルーシャの世話をし足りないはずだ。それと、ルーシャとともに行ってもらうところがあるから、石工の仕事は当分ないよ!」
「ぎょ、御意」

 ミラー将軍には逆らえない――そんなことを思いながら、ルーシャとジェニスはミラーとともにお城へとついて行くのだった。
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