きみのその手に触れたくて"

遥風 かずら

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第一章 きっかけ

2.声かけのタイミング問題

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 いつになくざわつく教室。

 学校に全く男子がいないわけじゃないのに。

 ちなみに自分が入学する数年前までは、女子だけの学校だったらしくそこから共学になった。

 ……とはいえ、女子だらけの学校にわざわざ入ってくる男子が珍しいだけに過ぎない話。

 今までは一つのクラスに8対2くらいの割合でいた程度で、その人数でいたとしても、会話が出来たりいつも話をするのは女子だけ。そうなると興味も意識も身近なところから生まれるかというと――それは現実問題として厳しかった。

 そんなところに他校から男子が新たに編入してくるという話が昨日辺りから浮いてきているものだから、気にならないわけもなく。

 結局のところ、新しい出会いにみんな惹かれるってところなんだと思う。

 朝のHRホームルームが始まって、教室内の視線は気にして見ていないようで担任がいつも立っている場所に狙いを定めていた。

「えー……と、もう分かってると思うけど、今日から編入の男子二人~。今から紹介してくれるからみんな、覚えて」

 担任の先生の言葉の後に続いて。

七瀬 輔ななせ たすくです。どうも」
林崎はやしざき 弘人ひろとっす。よろしくです」

 ……と、本当に簡単すぎる自己紹介が彼らの口からされた。

「それじゃ、七瀬くんは窓側の……葛西かさいさんの隣に座ってくれる? 林崎くんは、廊下側の席へお願いね」

 葛西さんの隣……あ、わたしか。

 隣にされただけだけど、積極的に何か声をかけるべきなんだろうか?

 なんて、勝手に思っていたけれど彼が席に着いても特に何も起こらなかった。

 男子の個性を感じた女子たちが一斉にざわつき始め、予想通り休み時間になると同時に質問攻め。

 そのせいで隣の席に座る彼と廊下側の彼の席に人だかりが出来ていた。

 わたしはこういう時に便乗しないタイプ。なので、同様タイプの沙奈が話しかけてくるのを待っていた。

「どっちが好み?」

 ……うん、期待通り。

「や、何とも言えないけど」
「席が隣ってことでなら七瀬で一択じゃない?」
「いやぁ、そう言われましても……」
「というか~、どこで声をかければいいのか問題! ってやつ」

 確かにすぐ隣に新たな男子が座ってきた。だけど、それは決して簡単なことでもなく。

「……だね」

 隣の席だからと真っ先に声でもかけようものなら、予想はつくけどあまりよろしくないことが起きるのは目に見えた。

「でも、よかったじゃん?」
「なにが?」
「どっちもよさげで」
「……顔、どっちもよく見てない。名前だけしか記憶されなかった」

 他の女子たちは上から下までチェックして、声とか話し方とかを気にしていたけれど。

「そっか。まっ、その内に見れるっしょ? 隣だし」
「うん、そのうちね」

 隣だから顔が見れるかって言われれば、割と微妙といえば微妙。それこそ正面に回ってじっくり見つめないと分からないわけで。

 でも、とりあえずは声をかけるタイミングとチャンスを探らなければ始まらない。

 今はただ黙って静かにタイミングを掴むだけ――うん、本当にタイミングの問題。
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