きみのその手に触れたくて"

遥風 かずら

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第六章 恋敵クライマックス

73.サイド:七瀬輔

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「ねぇ輔。他の学校に行っても会えるよね?」
「……いや、どうだろうな。ってか、俺とは別れてんだし、俺じゃない奴と上手くやれよ?」
「それはそうだけどさ。あ! じゃあさ、遊び行っていい? いいよね?」

 別れた女子に未練は残さない……というより、俺の方に未練はない。それなのに、何でこいつはこんなことを言うのだろうか。

「赤点取らなくなったらな! 勉強サボんなよ? じゃ、俺行くから」
「絶対行くし!」
「はいはい」

 七瀬輔は今まで通ってた学校から他校に編入することになった。勉強を頑張りたい自分としては、進学に積極的な学校に移りたいと思ったからだ。

 元カノとなった優美は悪い奴じゃなかったが、勉強をよくサボって遊びばかり誘う女子だった。俺とは合わないタイプで、そのせいか長く付き合う気にはならずに別れることに。

 もちろん、編入もきっかけではあったけどたまたま優美に好意を持っていたダチがいたので紹介してあげたら、思いの外上手くいきそうだったうえ、優美もあっさりと俺から離れたのでそれはそれで解決。

 俺が編入する学校は、元は女子高だったらしく今でも女子の方が多いと聞いている。俺自身あまり騒ぎたくないし、女子に話しかけられても流行りの話とかについていけないから、寄ってこられてもどうすればいいのか分からない。

 職員室で担任と話をしていると、これも偶然なのか俺と同時に編入してきた奴がいた。パッと見軽そうな奴に見えたが、そういうのは前の学校にもいっぱいいたから気にならなかった。

 それにしても担任も女性だなんて、結構厳しいかもしれない。

 頼れそうな男の先生はいなさそうだったが、もう一人の奴も同じクラスになったのは少しだけ安心を覚える。

 ――しかし、教室に入った俺の視界にはほぼ女子だらけの環境が待っていた。

「七瀬輔です。どうも……」

 正直言って名前以外、話すものが無い。隣の奴もそんな感じだったのが救いだった。担任に言われ、窓側の一番後ろに座ることに。

 もっとも、窓席はすでに女子が座っていたので俺はその隣になったが。

 せめて隣になったということで、隣の女子に声をかけようと思っていたのにそいつはずっと机に伏していて顔を上げることなくずっと眠っている。

 顔を見てみないとどんな女子か分からない。だけど、眠ってる女子に何て声をかければいいんだ?

 そんな感じで悩んでいた俺に、編入初日ということもあってか複数の女子たちが俺の机を取り囲む。

 こういう時、もっと要領が良かったらすぐに友達になれたかもしれない。だけど俺は騒がしいのが好きじゃない。

 だから、この時すでに無愛想だったんだと思う。ただ、女子の中の一人に妙に男慣れしてる奴がいてすぐに接近された。

「へぇ~? 輔の学校はあの辺なん?」
「あ、あぁ……そうだけど」

 早くも下の名前呼びって。

 この時点でとは合いそうにない――俺はすぐにそう思った。それよりも、隣の席の眠り女子の顔を見て話してみたい。

 そう思った俺は馴れ馴れしい女子、宮前沙奈に駄目元で頼んでみる。

「綾希はウチの友達なんよね」

 顔を見てみないと分からない。だけど、宮前の友達ということはこの女子も馴れ馴れしいのだろうか?

「輔。あんたの好み、訊かせてもらえるん?」
「面白い奴」

 俺自身前の学校でもガードが堅いだとか真面目すぎるとか言われていただけに、好きになるなら面白くて夢中になれそうな子がいいと思っていた。

 そうして声をどこでかければいいのか分からなかった俺に、宮前が機会を提供してくれた。

 その相手はもちろん、ずっと机に顔を伏している女子だ。

 そうして俺は、内心ドキドキしながら声をかけた。
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