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弐頁:属性との出会い
61.ログナからの知らせと急変
しおりを挟む『こ、こらこら、リウ! ルールイ! 助っ人のはずなのに何をまたやっている?』
「にぁっ!? エ、エンジさま?」
「ア、アルジさま……ち、違いますの、これはあのその……」
慌てふためく二人を見ているだけで怒る気も失せて行くが、甘やかすのは良くない。
「それで……騎士たちから離れて何をしていたのかな?」
「ネコが」「コウモリが」
「ん? 何だって?」
「邪魔を!」「邪魔にぁ!」
随分と息の合った仲になっているようだ。
恐らく、攻撃していたら動きが同時になっていて、お互いの妨害をしていたというところか。
「……まぁいいけど、まだ騎士たちが交戦しているのに、二人が手を貸さないのはどうしてかな?」
「リウたちは強そうなゴブリンを追い払ってあげたのにぁ」
「ネコの言う通りですの。騎士と今戦っているのは、騎士程度でも戦えるゴブリンに過ぎませんわ」
見ている限りでは、騎士たちが劣勢になるようには見えない。
――となると、リウとルールイはやはり人間に対して、必要以上の貸しは作らないという考えが強いのか。
「ところでエンジさま。後ろにいるドールは何にぁ?」
「そ、そうですわ! アルジさまに隠れている機械人形は何ですの?」
「あぁ、彼女は――」
ドールに性別があるのかは不明だが、アルクスで守っているピエサと同様に、彼女と呼ぶのが正解だろう。
『ピエントは、魔法士サマのモノ。全てをワタシマシタ。ワタシは先に向かいまス……』
向かうって、まさか自動的に行くべきところが分かっているのかと聞く前に、飛んで行ってしまった。
「にぁ~……いなくなっちゃった」
「な、何なんですの……」
行き先は恐らくアルクスで合っているのだろうが、それにしたって淡々としていた。
リウたちと話し込んでいると、すでにゴブリンたちを掃討したのか、騎士たちが城に引き上げていく。
その中の一人、クライスだけは俺たちの所に駆けて来るようだ。
「ふぅ。ここにいるということは、エンジは魔法攻撃で他の魔物を退けたのだな?」
「ゴブリンだけは止められなかったですが、他は海に落としました。平気でしたか?」
「あぁ。リウちゃんとルールイさんのおかげだな。此度の功績は全て、エンジだ! 本当にすまない。王も会いたがっているが、会ってくれぬか?」
シャル姫よりも偉い国王が会いたがっているとは、随分と待遇が変化したみたいだ。
「そうですね、リウの思い出の地、そしてクライスの国ですから見聞を広げ……」
「ウウウゥ……い、嫌な感じがするにぁ……」
「え? リウ?」
垂れた耳で嬉しそうにしていたリウだったが、何かを察したのか、耳をピンと立てて警戒心を見せ始めた。
「ネコのことだから、何かまたくだらないことで気でも立っているのでは?」
「――エンジさま……ログナに戻った方がいいにぁ!」
「え、何で? 何かを感じた? 俺は何も……ザーリンの声も聞こえて来ないけど……」
「分からないけど、嫌な感じがあるのにぁ」
俺よりもリウの方が察知スキルが高いが、まさかこんな遠方の地、それも海を隔てた国で危険を察知出来るなんて、リウには俺の知らない隠れスキルでもあるのだろうか。
「どうかしたのか? エンジ」
「いえ、しかしリウが感じ取っているのはいい事では無さそうです。ミーゴナには後でまた来ます。今は自国に戻って構いませんか?」
「それは構わぬが……かなり遠いのではないのか?」
「それは……」
ここへはルールイの協力と、船で来られた。
そしてピエントからコピー出来た浮力スキルは、塔とミーゴナの往復限定のようだ。
「エンジさま、植物に触れるだけでも飛べないです?」
「ん? んー……ルオの森で出来たけど、三人同時でしかもルールイもいるとなれば、同じ場所に飛べないかもしれないよ」
「やってみるのにぁ! ルーがどこかにいなくなっても、どうせ飛んでくるから大丈夫にぅ!」
「全く、ネコはいちいちムカつくことを言うのね! よく分かりませんけれど、急いだほうがよろしいかと」
「あぁ、分かった。そ、そういうことですので、クライス。どこかに植物はありませんか?」
「それなら家の庭に……」
「に、庭に案内を!!」
「こっ、こっちだ」
リウが焦りを見せているということは、また勇者が性懲りも無く来たのか?
ログナには賢者アースキンがいるし、守りを固めているはずなのに。
「クライス、また来ます。来たらまたここで!」
「おに―さん、またにぅ!」
「ごきげんよう……」
「あぁ。な!? 消えた!?」
やってみるもので、植物に触れただけですぐに飛ぶことが出来た。
そして俺だけがログナのギルド内に戻って来たようだ。ギルドに植物は無いが、俺が古代書に触れた最初の場所でもあるし、それが関係しているのだろう。
ギルドの中はかつて俺が書記として座っていた椅子も無ければ、テーブル席も見当たらない。
どういうわけか、ここで感じる気配は邪悪なものだ。
「――そこにいるのは、どなたですか? あぁ、来ていたんですね。エンジさん……」
「キ、キミは……!?」
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