討ち入り恋慕抄 外伝 〜忠義と仇の狭間で〜』

ちひろ

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第二章

江戸勤番2

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数日後、城内・礼式控えの間。
そこに立つ吉良上野介は、淡い灰色の裃を身に着け、涼やかな眼差しで浅野を見下ろしていた。

「浅野殿。礼の所作が乱れておる。幾度申せばよいか」
「……申し訳ございません」
「いや、わたしが不出来ゆえ、貴殿にご迷惑をおかけしておるのだろうな。
高家として、誠に遺憾に思うばかりじゃ」

それは謝罪ではない。皮肉に満ちた、乾いた言葉だった。

その場にいた者たちが息をひそめる中で、内匠頭は深く頭を下げる。
拳を固く握りしめたその手には、震えがあった。

吉良の声は続いた。

「やはり、田舎侍に都の作法は難しかろう。
だが、幕府の威光に関わることゆえ、無礼は許されぬぞ」

その瞬間、内匠頭の視界に、あの“目”が浮かび上がった。
笑ってもいない、怒ってもいない。
ただ、“見下すに足る”と決めつけた者にだけ向ける、あの冷たい眼差し――。
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