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1章
これこそが始まり
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ある春の氷のような冷たい風が吹いている日のこと。
「さぶっ、こうも寒いとマントヒヒも尻が寒くてたまらんだろうな。」とこたつの中で身を震わせて言ったのが俺の家の中の何よりも大きいな家具、略して大家さんだ。
「たしかに、もう6月の後半だというのに寒すぎますね。」
「僕、何かあったかい飲み物を持ってきましょうか?」
「いや、大丈夫だ。」
「そうですか。」
「••••。」
樹月は沈黙に耐えようと必死に手で口を大きく覆った。
「なにが、マントヒヒも尻を冷やしてるだ、そんなくだらないことを気にしてる場合ならお前が始めた話くらい自分で尻拭いしろ!」っと心の中では思っていたが、大家さんには借りがある手前言うことはできない。
すると突然、こたつの中から頭だけを出していた大家さんが体全体を脱皮をする蝉のように出てきてこう言いました。
「質問なんだけどよ、夜野、本当にこの家って必要か?」
「•••••当たり前じゃないですか、なくなってしまったら僕は生きていけませんよ、ははっ」
冗談で聞いてきたのだと思った樹月はそれに乗ったかのように笑って返してやった。
「俺は思うんだ、何かに依存するのはよくないってさ」
また、家全体が静まり返る。
「ここに居候しているやつが言うのかよ!」
まるで花火のように静かだった空間にぱんっと大きな音が溢れた。
口を滑らせてしまったと気づくにはそう遅くはなく、しかし目を合わせる勇気を出すのには時間が必要だった。
目が合うと今までで1番大きな声で大家さんが笑い、転げ回り、とうとう玄関のところまで転がっていた。
「言われた通り、俺も夜野の家に依存しちまってる。どうにかしないとな。」
それを聞いた樹月は大家さんがやっとこの家を出ていってくれるという期待で胸が高まった。
その期待に応えてくれているかのように次から次へと家の中にあった家具がまとめられていく。
「ちょっと待って、ください。 そのこたつは俺の家のものですよ。」
樹月はやれやれと言わんばかりに大家さんのこたつを持っている手を優しく掴んだ。しかし、離さない。離れない。引っ張っても、引っ張ってもびくともしない。
すると、大家さんは胸に秘めていた熱い感情を声を荒げて言ったのだ。
「いいか夜野、お前もこの家の暖かさ依存しちまってるんだよ。俺たちはこんなところでぬくぬく夏を待ってちゃだめなんだ、俺たち自身でその温もりを、暑さを掴むんだ!!」
その時に大家さんが腕を大きく天井へ振り上げたせいでこたつとともに夜野が宙に浮いていた。
それに気づいた大家さんはそっとこたつを元の位置に戻そうとしたがあまりの重さにそのままどさっと地面に落としてしまったのだ。
途端にドミノが倒れるように床、柱、壁、屋根が倒れていき、だんだん家が小さくなっていく。それと同時にとてつもなく寒い風が2人の間を通り過ぎていった。
「うそ、だろ。俺の家なくなったんだけど。」
そう樹月が唖然としていると横には毎月のアルバイトでこつこつと樹月が貯めていたへそくりを持った大家さんが立って彼を満面の笑みで見ていたのだ。
「俺と樹月の暑さを求める大冒険の始まりだな!!」
そう叫んだと思えば、がっと樹月は腕を掴み取られ、町の奥へ奥へと冷たい風に打たれながらも引っ張られていった。
「待って大家さん!まず、あの壊れた家をどうにかしてください。それと、どこにいくつもりなんです。とにかく止まってください!」
そう言うと、大家さんは足を止めて話を始めた。
「俺の名前は朝西太陽。太陽って読んでくれ。家は消えちまったからどうにもならんし行く場所もない。ただよ、考えてもみろ、これは冒険だぞ、目的なんてもんはいらん、ただ走れ!」
そうして2人は寒さで凍えながらも町を駆け抜けていった。
「あなた、もうすぐ死ぬわよ」
声が聞こえてきたのは走り始めてから五分ほど経ったころだった。
そこには、水晶玉を大事そうに抱えたポニーテールに三つ編みをした少女が座っている。
「死ぬってどういうことですか?」
樹月が少女に聞いてみると、その少女は前よりもはっきりした声で2人に伝えました。
「私は魔女のウィンタ。私の占いはよく当たるのよ。だから警告してあげてる。今すぐこの紅色のペンダントを五十万円で買いなさい。そうすれば、命は助かるわ。」
2人は互いに目を合わし心の中で会話をしたのだった。
すると、ある案を思いついた太陽がウィンタに目を移し挑発的に質問をしてみることにしたのだ。
「そんなによく当たるんなら、俺がもっと好きもんは肉か魚、どっちか当ててみろよ。」
ウィンタは簡単だと言わんばかりに太陽のことをじっと見つめ、水晶玉にそっと手を被せました。
「••••。」
「わかりました。あなたがより好きなのは"肉"ですよね?」
すると、二人はくすくすと笑い始めたのだ。
「俺からも質問。俺は猫よりも犬の方が好き。これは合ってるでしょうか、はたまた間違ってるのでしょうか?」
今度は樹月が笑うのを抑えながら聞きました。
「間違ってると水晶玉が示してるわ」
二人は我慢できずに全く当たらないウィンタの占いを笑わずにはいられなくなってしまった。
そして最後の質問は二人同時に。
「これから俺たちは西か東、どっちに行けばいいと思う?」
「••••••西。」
涙を目の奥でぎゅっとウィンタは堪えながらも答えた。
それを見た二人は小さな少女を馬鹿にしたのが恥ずかしくなり、ウィンタに謝ることにしたのだ。
「笑っちまって、悪かったな。」
「お詫びと言っていいかわからないですけど何か欲しいものがあれば二千円以内で何かありますか?」
二人にはお金がなかった。それゆえ、二千円が限界だった。
しかし、ウィンタには何も要らなかった。
「私は二人と一緒に西へ行きたい。」
それを聞いた二人は優しく頷き、三人で東に向かうことにした。
「さぶっ、こうも寒いとマントヒヒも尻が寒くてたまらんだろうな。」とこたつの中で身を震わせて言ったのが俺の家の中の何よりも大きいな家具、略して大家さんだ。
「たしかに、もう6月の後半だというのに寒すぎますね。」
「僕、何かあったかい飲み物を持ってきましょうか?」
「いや、大丈夫だ。」
「そうですか。」
「••••。」
樹月は沈黙に耐えようと必死に手で口を大きく覆った。
「なにが、マントヒヒも尻を冷やしてるだ、そんなくだらないことを気にしてる場合ならお前が始めた話くらい自分で尻拭いしろ!」っと心の中では思っていたが、大家さんには借りがある手前言うことはできない。
すると突然、こたつの中から頭だけを出していた大家さんが体全体を脱皮をする蝉のように出てきてこう言いました。
「質問なんだけどよ、夜野、本当にこの家って必要か?」
「•••••当たり前じゃないですか、なくなってしまったら僕は生きていけませんよ、ははっ」
冗談で聞いてきたのだと思った樹月はそれに乗ったかのように笑って返してやった。
「俺は思うんだ、何かに依存するのはよくないってさ」
また、家全体が静まり返る。
「ここに居候しているやつが言うのかよ!」
まるで花火のように静かだった空間にぱんっと大きな音が溢れた。
口を滑らせてしまったと気づくにはそう遅くはなく、しかし目を合わせる勇気を出すのには時間が必要だった。
目が合うと今までで1番大きな声で大家さんが笑い、転げ回り、とうとう玄関のところまで転がっていた。
「言われた通り、俺も夜野の家に依存しちまってる。どうにかしないとな。」
それを聞いた樹月は大家さんがやっとこの家を出ていってくれるという期待で胸が高まった。
その期待に応えてくれているかのように次から次へと家の中にあった家具がまとめられていく。
「ちょっと待って、ください。 そのこたつは俺の家のものですよ。」
樹月はやれやれと言わんばかりに大家さんのこたつを持っている手を優しく掴んだ。しかし、離さない。離れない。引っ張っても、引っ張ってもびくともしない。
すると、大家さんは胸に秘めていた熱い感情を声を荒げて言ったのだ。
「いいか夜野、お前もこの家の暖かさ依存しちまってるんだよ。俺たちはこんなところでぬくぬく夏を待ってちゃだめなんだ、俺たち自身でその温もりを、暑さを掴むんだ!!」
その時に大家さんが腕を大きく天井へ振り上げたせいでこたつとともに夜野が宙に浮いていた。
それに気づいた大家さんはそっとこたつを元の位置に戻そうとしたがあまりの重さにそのままどさっと地面に落としてしまったのだ。
途端にドミノが倒れるように床、柱、壁、屋根が倒れていき、だんだん家が小さくなっていく。それと同時にとてつもなく寒い風が2人の間を通り過ぎていった。
「うそ、だろ。俺の家なくなったんだけど。」
そう樹月が唖然としていると横には毎月のアルバイトでこつこつと樹月が貯めていたへそくりを持った大家さんが立って彼を満面の笑みで見ていたのだ。
「俺と樹月の暑さを求める大冒険の始まりだな!!」
そう叫んだと思えば、がっと樹月は腕を掴み取られ、町の奥へ奥へと冷たい風に打たれながらも引っ張られていった。
「待って大家さん!まず、あの壊れた家をどうにかしてください。それと、どこにいくつもりなんです。とにかく止まってください!」
そう言うと、大家さんは足を止めて話を始めた。
「俺の名前は朝西太陽。太陽って読んでくれ。家は消えちまったからどうにもならんし行く場所もない。ただよ、考えてもみろ、これは冒険だぞ、目的なんてもんはいらん、ただ走れ!」
そうして2人は寒さで凍えながらも町を駆け抜けていった。
「あなた、もうすぐ死ぬわよ」
声が聞こえてきたのは走り始めてから五分ほど経ったころだった。
そこには、水晶玉を大事そうに抱えたポニーテールに三つ編みをした少女が座っている。
「死ぬってどういうことですか?」
樹月が少女に聞いてみると、その少女は前よりもはっきりした声で2人に伝えました。
「私は魔女のウィンタ。私の占いはよく当たるのよ。だから警告してあげてる。今すぐこの紅色のペンダントを五十万円で買いなさい。そうすれば、命は助かるわ。」
2人は互いに目を合わし心の中で会話をしたのだった。
すると、ある案を思いついた太陽がウィンタに目を移し挑発的に質問をしてみることにしたのだ。
「そんなによく当たるんなら、俺がもっと好きもんは肉か魚、どっちか当ててみろよ。」
ウィンタは簡単だと言わんばかりに太陽のことをじっと見つめ、水晶玉にそっと手を被せました。
「••••。」
「わかりました。あなたがより好きなのは"肉"ですよね?」
すると、二人はくすくすと笑い始めたのだ。
「俺からも質問。俺は猫よりも犬の方が好き。これは合ってるでしょうか、はたまた間違ってるのでしょうか?」
今度は樹月が笑うのを抑えながら聞きました。
「間違ってると水晶玉が示してるわ」
二人は我慢できずに全く当たらないウィンタの占いを笑わずにはいられなくなってしまった。
そして最後の質問は二人同時に。
「これから俺たちは西か東、どっちに行けばいいと思う?」
「••••••西。」
涙を目の奥でぎゅっとウィンタは堪えながらも答えた。
それを見た二人は小さな少女を馬鹿にしたのが恥ずかしくなり、ウィンタに謝ることにしたのだ。
「笑っちまって、悪かったな。」
「お詫びと言っていいかわからないですけど何か欲しいものがあれば二千円以内で何かありますか?」
二人にはお金がなかった。それゆえ、二千円が限界だった。
しかし、ウィンタには何も要らなかった。
「私は二人と一緒に西へ行きたい。」
それを聞いた二人は優しく頷き、三人で東に向かうことにした。
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