魔物討伐のために聖女の処女をもらってくれと大魔法使いにたのまれたんだが俺はもらうべきだろうか?

まつめ

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その夜

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 魔法騎士団団長アルファード・バッカ―の天幕に、大魔法使いヨドルがやってきたのは、魔物の森で野営の準備が終わったばかりの夕暮れ時だった。

「何の用だヨドル。お前の方からくるなど珍しいな。いつもは、何やら怪しい使い魔を飛ばしてくるだろう?」
 見た目は14歳の少年のようだが、この大魔法使いは154歳と聞いている。魔獣の発生の根源である、魔窟の場所を遂に発見したのは、彼の功績だ。

 アルファード率いる魔法騎士団は、魔窟の奥にある、瘴気の沼の浄化をする王命を受け、2週間前に王都を発ち、現在魔物の森を進んでいる。ひたすら魔物を倒しながらの行軍で、騎士たちの疲労は濃い。だがすでに目的地は近い、あと数日でたどり着けるだろう。

「ん-ちょっと頼みごとがあるんだなー」
 可愛い少年の声で、とんでもないジジイである彼が嫌なことを言った。
 古今東西ここんとうざい大魔法使いの頼みごとなんて、聞かない方がいいに決まっている。

 野営用の天幕には彼と自分の二人きり、しかし外の入口脇にもう一人誰かの気配を感じていた。
「お前ができないことを、俺ができるはずもない。お前が他人に頼みごとなど、冗談としか思えない」
「ん-、僕でもできるけどねー。ここは本人の希望を叶えてやりたいなー」

「本人の希望とは?」
 問うたが、少年顔のジジイは答えずに、「フィーナいい加減にはいっておいで」と入口に声をかけた。

 天幕に茶色のローブをまとった少女が入って来る。18歳であるが、見た目はもっと幼く見える。腰まであるふわふわの黄色に近い金髪の髪を三つ編みにした、可愛らしい聖女様だ。

 いつもはりんとしている彼女だが、今は何故かうつむいたまま体を固くして、すこし怯えているようにも見えた。具合でも悪いのだろうか?

 今回の魔窟浄化の作戦で、最も重要な役を担うのが彼女である。彼女の聖女の力で沼を浄化する。
 治癒の力も持つ彼女は、魔物との戦いで傷を負う騎士たちの治療もしてくれている、我々の女神のような存在である。

 戦闘以外では、いつもヨドルにくっついて行動しているので、勝手気ままな大魔法使いの横でポツンとしていて、騎士たちと親しく話す間柄ではなかった。
「頼みというのは、フィーナが処女で無くなるように手伝ってもらいたいんだなー」

 ジジイの喋り方はこの「なー」がいつも付くふざけた言い方だ。今日は話す内容もふざけているようだ。
「彼女の前でなんということを、冗談でも許せん!」

「んー、ここのところ、ホワンガが凄い寄って来るだろう? あいつら弱いけど、毒の霧を吐いてくるから攻撃力は高いんだよね。今日は100匹ぐらいだったから、僕がすぐ焼いたけどさあ。ちょっと調べたら、これからホアンガの巣の近くを僕たち通るのさ、他に道はない。そんでさー、明日から10万匹は寄って来るんだなー」

「なっ10万匹?」
「さすがの僕でも全部は焼けないなー」

「どうするんだ」
「だからー、ホアンガは処女の匂いが大好きなんだよ。フィーナに寄って来てるの。だからフィーナが処女で無くなれは奴らは来ない。簡単な話なんだなー」
 簡単な話ではないだろう。可哀想なくらい小さく縮こまって、顔も隠して丸パンみたいになっている少女を見た。

「話は分かったが、聖女様があまりに不憫だ。彼女の気持ちはどうなるんだ」
 丸まっていた茶色の塊が顔を上げた。泣きそうな真っ赤な顔が、小さな声で決意表明した。

「私のせいで、騎士の皆さまを危険にし、魔窟にたどり着けないのはあまりに無念です。私は今回の討伐隊に入るにあたっては、命を失ってもかまわない覚悟で臨んでおります。命を失う覚悟があるのに、その……私の……初めては……命よりは……たぶん、覚悟は小さいものだと……だから、覚悟はできております」

 たったの18歳の少女が、聖女でなかったら、都でドレスを着てキラキラ笑っているはずだ。それを国のために身を尽くして、命がけで戦って、さらにこんな目に合うなんて……かわいそうすぎる。

 しかしホアンガ10万匹はどうにもならない。すまない聖女様、許せ。

「聖女様のお覚悟よく分かりました。それでは最大限、私ができることをいたしましょう。今晩安全に、邪魔なく、安心してそれが取り行えるよう場所を用意しましょう。それで、これは最も大きな問題ですが、相手はどうするのです」
 
 少年ジジイも聖女様もしばらく黙っている。ジジイがひじで早くしろと聖女様をつんつん突く。

 聖女様の顔が、人間ここまで赤くなるのかと、赤みの限界まで顔を熱くして、ちょこちょこと自分の元に歩いてきた。すこしかがめと手が動く。俺の耳にこっそり言いたいらしい。

 彼女の望みのままに、彼女からしたら相当デカい己の体を折り曲げて、彼女の口元に耳を寄せた。

 いったい誰を相手に選ぶんだろう。
 女性に人気一番の、アントニーだろうか…… あいつは女性付き合い激しいが、慣れてる奴のほうがこういう場合はいいのだろうか。ああ、ムカついてきた。こんな清らかな彼女をあいつに触らせたくない。

 年が一番近いなら、カスパルか…… でもあいつ童貞だろうし、ここは彼女に痛い思いはさせたくない。

 優しさでいえば……うーん、誰だろうなあ、ヘラルト? いやヒューホ? ああ、想像すると誰にも相手をさせたくないと怒りが湧く。どいつもこいつもむさ苦しい。不憫だ……彼女があまりに、可哀そうだ。

「あなた……です」
 少女の囁き声が耳に吹き込まれた。
 体を折り曲げた姿勢のまま、固まった。

 え? 10歳も年が離れていて、この身長差で、顔が怖すぎると女性に寄りつかれない、この俺?
 えええ?

「いや……それは、ちょっと……」
 無理と続けようとした言葉を飲み込んだ。

 聖女様がばっと身を丸めてさっきの丸パンになり、泣き声で訴えた。
「お師匠様、やっぱり無理でした。きっと断られると思っていたの……、こんな私だから……しかたがないのだけど……でも、私……」
 うずくまり、ローブで隠した顔は見えないが、泣いているのだとはっきり分かった。

「私は……嫌です、誰とも嫌です。お師匠様お願いします。寝ていて、目が覚めたら終わっているように魔法をかけてください。寝ているうちに終わるなら、誰でもいいのです。バッカ―団長が選んでくれた相手とします」

「んー、聞こえたかなー。そういうことだからアルファード、相手を選んでやってほしいんだなー」

「いや、俺が引き受ける。させてもらう。いやさせていただかせられま……いや、その……本当に俺でいいのか」
 プルプル震えて泣いていた丸パンの動きが止まった。

「うーん。それじゃあこの天幕に、防音と誰も侵入できないように結界張っとく。ではよろしくなー」
 ジジイは聖女様を残して、あっという間に消えた。
 
 丸パンのまま動かない彼女をそのままに、寝る場所が少しでも快適になるようにごそごそと準備をした。魔具ランプの光を落して、部屋の中を薄暗くしてから、ゆっくりと彼女の隣に座った。

「フィーナと呼んでもいいかな?」
 丸パンから顔が出て来た。見上げてくる顔が、こくんと頷いた。濡れた頬と親指でぬぐってやると、彼女の体がビクンと跳ねた。
 
 彼女を抱きかかえた。小さく震えているのが伝わって来る。そうっと敷布の上に運んだ。
 隣に並んで身を横たえると、彼女が横向きになって身を縮める。腕の中に入れて頭を撫でた。

「俺のことは何て呼ぶ? アルファードでも、バッカ―団長でも、なにも呼ばなくても……」
「あ、ある……アルファード」
 小さな声がそう呼んできて、恥ずかしいと胸に顔を押し付けて来た。

 こんなに可愛いものがこの世にあるんだと、胸の中がぎゅぎゅうと絞れらて、甘い苦しさが襲ってきた。ゆるい力で抱きしめた。髪からいい匂いがする。

 三つ編みを解きたいとお願いすると、結びを解いてくれた。指を差し入れて、ゆっくりと解いていく、柔らかく滑べらかな髪の感触を、上から下にすきながら、心地よさを堪能した。

「あの……しないの……ですか?」
 胸の中で彼女が聞いてくる。頬に手を添えて、顔を上げさせると目が合った。不安げに瞳が揺れている。今度は頬の柔らかさを、指で触れて楽しんだ。
「急に始めたら、怖いだろ?」

「まずはこのまま話をして、それからゆっくり初めて、終わったら朝まで一緒に寝よう。いいかなフィーナ」
 今の俺が思い付く、最大限怖がらせない方法を告げてみた。
 彼女の目が大きくなって、驚いた顔をした。

「朝まで一緒にいられるの? 嬉しい。終わったらすぐに出ていかないといけないと思っていたの」
 あまりに嬉しそうに微笑むので、可愛いすぎてぎゅっと抱きしめてしまった。

「私ね、夜寝るのが怖いの。お師匠様の結界があると分かっていても、魔獣の森はいつも怖い。ないしょにしてほしいのですけど、私はとても怖がりなの、だから家ではウサギのぬいぐるみを抱いて寝てるんです」

 5歳の兄の息子が、ぬいぐるみと寝ていた。彼女の幼い感じが、こんな魔物討伐にあまりに不釣り合いで、どれほど無理をして聖女の役目を果たしているのかと思うと、健気さに切なくなった。

「そのウサギを連れてきたらよかったのに」
「それはできないです。だって魔物の森に連れてくるなんてウサギがかわいそう」

 彼女はぬいぐるみのウサギの気持ちまで思いやってしまうのか、本当に自分のことは二の次だな。
 いつも、彼女は自分を犠牲にしすぎる。体力の限界まで治療魔法をかけてしまうし、疲れていてもなかなか言い出さないし、強引に休ませると「お役に立ちたいんです」が口癖で頑固で無理ばかりする。

「ウサギの名前は何て言うの?」
 甥っ子がぬいぐるみに名前を付けていたのを思い出して聞いてみた。
 いくら待っても返事が返ってこない、彼女は胸にぎゅうぎゅうくっついてくる。
「フィーナ?」
「あの……あのね……名前はないしょです」

「ないしょと言われるとなおさら知りたい」
「だ、駄目です言えません」

 女性とは、いつもほとんど会話が続かないので、駄目と言われたらどうしていいか分からなかった。
 こんな時、甥っ子だったらくすぐって言わせるのに……

「教えないと……その……くすぐる……ぞ?」
 まだくすぐっていないのに、彼女はきゃっと声を出して、縮こまった。

「あ、あ、あなたにくすぐられるなんて……恥ずかしくて死んじゃう」
 くすぐるだけで死なれたら、これからすることを始めたらどうなるのだ……

 人差し指で首をこちょこちょっとしてみた。
「ひゃっ、言いますから……」
 両手で顔を覆うと、彼女は小さな声で教えた。
 
「アルファード」
「なんだ?」

「アルファード……です。ウサギの名前」

「え? 俺の名前? いつから君のウサギはアルファードなんだ」
「……あなたと初めて会った時から……です」

「初めてって、2年前に怪我をして、初めて君に治療してもらった時からってこと?」
 こくりと彼女が頷いて、また俺の胸に顔をうずめてしがみついてくる。
 
 そんな前から、俺の名前を付けたウサギを毎晩抱いて寝てたのか。
 ああー ああー 可愛すぎる。どうしたらいいんだ可愛すぎる。

 もう少しお喋りをして、緊張をほぐそうと思っていたのに、耐えきれずに唇を奪った。
 柔らかな唇をはむように、何度も味わってからようやく離すことができた。

 彼女がぽーっと呆けた顔で見つめてくる。
「どうして、こんな黙っているだけの、面白くない、顔だっていかつい俺が気に入ったんだ?」

「怖いの?って初めて聞いてくれたから」
 もじもじと恥ずかしそうに彼女が小さな声で教えてくれた。
「ん? 俺が?」
「私は本当に怖がりで、新しい場所に行くだけでも不安なの。それなのに、血がドクドク出ている怪我人をいきなり見せれらたり、怖い魔物を見たり、なにもかもが怖くて、泣いて逃げ出したいの……でもそんなことは許されないから」

「どうして許されないと思うの?」
 背中をゆっくり撫でながら聞いた、辛そうな顔が切なかった。

「だって、私は聖女だもの。怖いなんて言ってはいけないでしょう? でもあなただけが聞いてくれたの、怖い?って、傷口を見せながら、怖いのに治療してくれてありがとうって言ってくれたの」

 いくつも、いくつも、数えきれないほどの、小さなキスを顔に落とした。髪にも、指にも、首にも……
 耳にキスをして、あまりに可愛くて、パクリと食べると、ずっと聞こえていた小さな甘い声が、ひあゃっと大きくなった。

 ふふっと笑って「これからは、二人きりのときは怖いって言っていいよ。いつでも、どんなことでも」と耳もとで囁いた。

「これからがあるの?」
 不思議そうに聞いて来る。彼女の手がぎゅっと俺の腕の服の布を握っている。

「これからが当然あるつもりだった。君を抱くと決めたときに恋人になるんだと思った。フィーナはこれきり今夜だけの関係がいいの?」

「でも……でも…… そんなこと許されないでしょう?」
「許されないなんて……フィーナはどうして、そんなことを言うんだ」

 今度は強く唇を押し付け、強引に口を開かせ深く激しくキスをした。
 長くしてからやっと解放すると、彼女がぼーっと溶けた目で見てくる。頬を撫ぜていると、だんだん焦点が戻ってきて、さっきまで俺にさんざん貪られていた口が動いて「大好き」と言った。

「俺もフィーナが好きだよ」
「嘘、それは嘘だわ」

「嘘じゃない。俺も君に初めて会った時から、君の顔が頭から離れなくてずっと苦しかった。君が近くに来ると、いつもその髪に触れたいと思うのを止められなかった。でも、俺は君より10歳も年上で、女性からは怖がられる顔の男だし、どう考えても君に相応しいとは思えなかった。この気持ちは許されないことだと……」

「あ!」
 思わず驚いて声をあげてしまった。

「フィーナが許されないと言うと、そんなこと無いと腹をたてたのに……俺も許されないと思っていた」

 二人でしばらく見つめ合った。俺がふふっと声を出して笑うと、彼女も優しい顔で笑った。
「俺たちは、許されないと思っていた同士だったんだな」

 やわらかな髪に指を差し込んで、ゆるく握った。そのまま一房を口元にもっていき口づけた。
「ずっとこうしたかった」

 フィーナが俺の首に手をまわして、強く抱き付いてきた。
「ずーっとこうしたかった」

「それじゃあ、始めよう。フィーナ怖い?」
 彼女はこくりと頷いた。
「怖いけど、アルファードなら怖くないから大丈夫」

 腕の中の彼女をこの上なく愛おしいと思った。ずっと己に許さなかった感情が一気にあふれてきて、もう元には戻れないと思った。
「うんと優しくする。大好きだよフィーナ」

               ◇◇◇    ◇◇◇

 翌日、魔物討伐隊は順調に進んでいる。明日には魔窟の入り口に着くだろう。

「おい! ジジイ話が違うじゃないか! なんでホランガが寄って来るんだ。おかしいだろうが」
 俺の怒鳴り声に、ヨドル大魔法使いは振り向きもせず、涼しい顔で火炎魔法を炸裂させた。

 大型魔獣のホランガが炭になって消滅する。しかし奴らは次々現れる。眼前で飛び掛かってくる1匹を魔法剣で叩切った。

「おれはちゃんと、おまえのお願いを遂行したぞ」

 次の一匹に狙いを定めて、剣を振り、魔法で氷の塊を腹に打ち込んだ。

「知ってますよー。私のお願いを完遂した後、さらに念入りにもう一回ご丁寧にしてくださったこともねー」
「はあ? 何で分かるんだよ、どうやって分かるんだよ、いやそうじゃなくて、俺が聞きたいのは、それならどうしてホランガが出るのかってことだ」

「うーん、責任をとって、私が焼きますからー」
 あたりが眩しくなるほどの閃光が走る。火炎魔法が連続して放たれ、ヨドルは言った通り全てのホランガを焼き殺した。

「おい、おまえ俺をだましたな」
「あー、やっと気づきましたかー。だっている訳ないでしょ、ホランガ10万匹なんて、冷静に考えたら嘘だと分かると思うんです。でも、まー良かったじゃないですかねー」

「なにが良いんだ。こんな形で彼女を傷つけたくなかった」
「えー、フィーナは傷ついてないですよー。るんるんお花畑ですよー。聖女の力も1.2倍増しになりましたよ、それは予想外の副産物でした。いやー良かったねー」

「おい、ふざけるな」
 殺気を込めて剣を向けると、ヨドルはやっと本当のことを吐いた。

「だって、王様がうるさいんですよ。フィーナに僕の子供を産ませろって。あの人魔法研究に狂いすぎて、大魔法使いである僕と、聖女を掛け合わせたらどんな強大な力をもつ子が生まれるか試したいんです。でも僕はもうそういうことに興味ないんですよねー、やりつくしたっていうかー、めんどくさいからー」

 あまりの話に、目を見開いたまま返事を返せない。しかし、あの王なら言いかねない内容だった。
「今回の魔窟の浄化が成功したら、魔獣は激減するよー。そうしたら、僕は暇になるからー、王様の命令断れないかもねー」

「なんだと!」
「まあ、がんばってねーアルファード」

               ◇◇◇    ◇◇◇

 無事に魔窟の瘴気の沼の浄化は成功し、魔物の森は美しい穏やかな森へと蘇った。何年かすれば精霊たちも戻って、昔の豊かな森になるだろう。

 国中の魔獣被害なくなり平和が国に訪れた。

 魔獣殲滅せんめつを成功させた魔法騎士団は、英雄として帰還を民衆の歓喜の渦で迎えられる。
 団長のバッカ―は、王の御前でねぎらいの言葉を掛けられると、褒美を賜りたいと臆面なく願った。

 実直で、寡黙、任務の遂行以外に興味を示さず、数々の武勲を上げてきた王の忠実なしもべだった男、褒美を直にねだるなど王は予想もしなかった。
 しかし真面目だけが取り柄の男だ、無謀むぼうなことは願わんだろう。
 王は「何なりと申してみよ」と口を滑らしてしまった。
 結果王は、大いに楽しみしていた研究を断念することになったのだった。


                 ◇◇◇   ◇◇◇

 結婚式を終えて、寝室に二人になると、アルファードが、ウサギのぬいぐるみをフィーナから奪って、ソファーの上に置いた。
「だめだめ、アルファードと一緒に寝るの! お布団に持っていく。アルの枕も用意してあるんだから」

「アルファードはここにいる。二人はいらない。それに今アルって言った?」
 フィーナが頬をふくらませて、ウサギを取りにいこうとするので、横抱きに持ち上げて、寝台に運んで、優しく下ろすと抱きしめて身動きを封じた。
「俺はアルってまだ呼ばれてない」

「アルとアルファードに挟まれて寝るのが私の夢なの!」
「だめだ、ここに俺以外のオスを入れる訳にはいかない!」
「アルにやきもち焼いてるの?」

 アルファードは笑って答えなかった。代わりに優しくキスを落した。
「それでは奥様、2度目の初夜です。うんと優しくする」
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