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それを見れたのは偶然だった。
電気が消える直前、真っ黒なパーカーを羽織った少年を見れたのは。
転入生の一人である、二年生の東雲来季がいない。親衛隊の制裁にあっているのかもしれない。そんな情報が入ってしまえば風紀委員としては動かざるおえない。慌てて全員に通達が入り、学園内をくまなく探し回っている最中でのことだった。
突然、激しい音を立てて西棟の電気が消えたのだ。
そんな異常があれば当然駆けつける。皆でばたばたと駆け込んだ時には生徒達が多く倒れていた。廊下にガタイのいい生徒達が立っていたので制裁現場に間違いはないだろう。
「な、んだこれ」
踏み込んだ全員が息を呑むほどの異質さが満ちている。異常なのは中だった。まるで獣が食い荒らしたような一方的な蹂躙。生徒同士が積み上げられている様は食べ切った骨を積み上げているような風景を連想させた。ご丁寧なことにお互いがお互いの邪魔をするように、起き上がれないように巧妙に身体を組み合わせている。
「東雲来季は無事か?」
委員長の言葉がなければ誰も動けなかっただろう。その言葉でまるで呪縛が解けたように全員が動き出せた。慌てて確認した少年は静かに深い呼吸をしていて異常はなさそうだ。
「一応、無事ではありますが。これは医務室に運ぶべきでしょう」
「そうか。運んでくれ。他の奴らも名簿をとって確認を。重症そうなら運んでやれ」
「了解」
だいたいの奴らは腹か首に一撃で気絶だったが、小柄な生徒…親衛隊の隊長だったり副隊長だったりするやつや素行が悪いと噂の奴らは顔面に一発もらっていた。しかも全員鼻っ柱を叩き折られる形でだ。見ているだけで痛そうな怪我だが頭を打ったりなどはしていないらしい。つくづくこの惨状を生み出したものが怖い。
だってどう考えても一瞬だけ見えた黒のパーカーの主の仕業だ。あの少しの間の停電で全員殴り倒しただけでも驚異的なのに暗闇の中で獲物を見定めてたということ。
学園の中の一人だろうが誰なのか気になった。
「どうした?」
「副委員長」
ぼんやりしていると副委員長から声がかかった。
「気になることでもあったのか?」
「はい、ちょっと。見てもらえますか?」
「あぁ」
彼の固有魔法は「見たものを映像として投影できる」ものだ。自分が見たもの以外は無理だが、逆に言うと見たものなら何でも投影できる。監視カメラに映らないものだって彼が見た以上は誤魔化せない。
ぼんやりと浮かび上がったものをみた副委員長は珍しく目を見開いて驚いていた。
「副委員長?」
「あ、あぁ。すまない、彼が犯人なのか」
「恐らくは。一瞬だけでしたのでもしかしたら他の仲間もいたかもしれません。特に能力を使ったような仕草は有りませんし…」
「そう、だな…。委員長にも伝えておこう」
ありがとう、と続けられて嬉しくなった。同時に見ていてよかったとも。
だから犯人についてはすぐに忘れた。鮮烈ではあったけれど所詮顔も見ていない人だから。
それを見れたのは偶然だった。
電気が消える直前、真っ黒なパーカーを羽織った少年を見れたのは。
転入生の一人である、二年生の東雲来季がいない。親衛隊の制裁にあっているのかもしれない。そんな情報が入ってしまえば風紀委員としては動かざるおえない。慌てて全員に通達が入り、学園内をくまなく探し回っている最中でのことだった。
突然、激しい音を立てて西棟の電気が消えたのだ。
そんな異常があれば当然駆けつける。皆でばたばたと駆け込んだ時には生徒達が多く倒れていた。廊下にガタイのいい生徒達が立っていたので制裁現場に間違いはないだろう。
「な、んだこれ」
踏み込んだ全員が息を呑むほどの異質さが満ちている。異常なのは中だった。まるで獣が食い荒らしたような一方的な蹂躙。生徒同士が積み上げられている様は食べ切った骨を積み上げているような風景を連想させた。ご丁寧なことにお互いがお互いの邪魔をするように、起き上がれないように巧妙に身体を組み合わせている。
「東雲来季は無事か?」
委員長の言葉がなければ誰も動けなかっただろう。その言葉でまるで呪縛が解けたように全員が動き出せた。慌てて確認した少年は静かに深い呼吸をしていて異常はなさそうだ。
「一応、無事ではありますが。これは医務室に運ぶべきでしょう」
「そうか。運んでくれ。他の奴らも名簿をとって確認を。重症そうなら運んでやれ」
「了解」
だいたいの奴らは腹か首に一撃で気絶だったが、小柄な生徒…親衛隊の隊長だったり副隊長だったりするやつや素行が悪いと噂の奴らは顔面に一発もらっていた。しかも全員鼻っ柱を叩き折られる形でだ。見ているだけで痛そうな怪我だが頭を打ったりなどはしていないらしい。つくづくこの惨状を生み出したものが怖い。
だってどう考えても一瞬だけ見えた黒のパーカーの主の仕業だ。あの少しの間の停電で全員殴り倒しただけでも驚異的なのに暗闇の中で獲物を見定めてたということ。
学園の中の一人だろうが誰なのか気になった。
「どうした?」
「副委員長」
ぼんやりしていると副委員長から声がかかった。
「気になることでもあったのか?」
「はい、ちょっと。見てもらえますか?」
「あぁ」
彼の固有魔法は「見たものを映像として投影できる」ものだ。自分が見たもの以外は無理だが、逆に言うと見たものなら何でも投影できる。監視カメラに映らないものだって彼が見た以上は誤魔化せない。
ぼんやりと浮かび上がったものをみた副委員長は珍しく目を見開いて驚いていた。
「副委員長?」
「あ、あぁ。すまない、彼が犯人なのか」
「恐らくは。一瞬だけでしたのでもしかしたら他の仲間もいたかもしれません。特に能力を使ったような仕草は有りませんし…」
「そう、だな…。委員長にも伝えておこう」
ありがとう、と続けられて嬉しくなった。同時に見ていてよかったとも。
だから犯人についてはすぐに忘れた。鮮烈ではあったけれど所詮顔も見ていない人だから。
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