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とことんまで軽いお返事であった。真剣に聞いていないといけない話題のはずなのに、戯藍はだってとさほど重要でないように言う。
「じじ様の許可が出てるし。あの人の情報管理は完璧だ。俺だって学んでる最中だけど、積み上げているものが違う。あの人がいいって言ったんならそれなりの理由があるんだろうよ」
「し、信頼してるんだね」
「なんだよぉ、反応が微妙だな。知りたがったのお前だろうが。いつの間にか子飼いの助手まで作りやがって。そいつ、お前のお手つきだからって噂になってんの知ってるんだぞ」
「え、マジ!?」
「大マジ。つーか、お前の方が専門だろうが」
『回答。自分が他人からどのように見られているかをあまり気にしない方なのではないのでしょうか?』
「え、いや、あの…たしかに、確かにですよ?手伝ってはもらってるけど!みんなが思うような、そうね?こう、そういう関係じゃないっていうか…!!」
わたわたと両手を無意味に彷徨わせて弁明を試みる綴だが生憎と戯藍にそれをしても噂がなくなるわけでない。悪い噂でもないので放っておいても構わないとは思うのだが。
「これ絶対時間の問題だろ、いい加減諦めて認めろよ、それが恋なのか勘違いなのか知らねえけど」
『同意。しかしながらユーザー様も似たような状態になっていることを進言します』
「俺のは恋でも愛でもなく、ただの負けず嫌いって言うんだよ。時間が経ったら構ってられなくなって飽きるに決まってる。あと俺の方に恋愛感情など微塵も存在してないことを忘れるなよ」
綴はチワワ系、つまりは子犬のような小柄なタイプの少年だ。顔立ちもスカートを履くか、ズボンを履くかでわからなくなるぐらいの中性的な顔立ちを持っているので、実はそこそこ人気がある。そんな奴がイケメン(一匹系狼)を侍らせているとなれば噂の的にもなるだろう。だが、お互いに人気者同士なので悪い方に傾くことはあるまい。綴は特に情報屋として確立した地位を持っているので下手なちょっかいをかければ自分に返ってくる、ということもあるかもしれないが。
「執着ってのは長続きしないもんだよ、感情が重たいと余計にな。だから、放っておくのが一番だ」
「(それが巡り巡って今の状況を生んでるんじゃないんスかね)」
「(置いとこうよ、言っても信じてくれないし。あの絶対に諦めてくれるだろう的な自信はどこから出てくるんだろうね?)」
「聞こえてんぞ、バカップル。シミュレーションしたから問題ないの」
「人間の感情なんてシミュレーション通りに行くものなのか疑問なんですけどぉ」
少なくとも戯藍の中では絶対的な自信があるらしい。ピピ、と軽い電子音が響いた。ゴウンゴウンと大型シミュレーターの駆動音が振動としてあるのに軽い音は問題なく彼らに届く。
『忠告。問題が発生しました。〝阿修羅〟、〝ウロボロス〟双方に動きあり。このまま放置を続けますと60を越える確率でユーザー様の学生生活に関わります。具体的に申し上げますと生徒会に所属しているが故の弊害が発生します。早急に解決策を取ってください』
夏休みだってのに不良は元気いっぱいらしい。いや、夏休みであるからこそ元気なのかもしれない。ともかく彼の災難はまだ続くらしい。しょっぺーお顔になった戯藍はぼそりと呟いた。
「もういっそのこと両方のチーム潰そうかな」
「それだけはやめてほしいなぁ!!」
受難が続くなら潰した方が早い気がする。などと言い出す少年を二人がかりで説得する羽目になった。
「じじ様の許可が出てるし。あの人の情報管理は完璧だ。俺だって学んでる最中だけど、積み上げているものが違う。あの人がいいって言ったんならそれなりの理由があるんだろうよ」
「し、信頼してるんだね」
「なんだよぉ、反応が微妙だな。知りたがったのお前だろうが。いつの間にか子飼いの助手まで作りやがって。そいつ、お前のお手つきだからって噂になってんの知ってるんだぞ」
「え、マジ!?」
「大マジ。つーか、お前の方が専門だろうが」
『回答。自分が他人からどのように見られているかをあまり気にしない方なのではないのでしょうか?』
「え、いや、あの…たしかに、確かにですよ?手伝ってはもらってるけど!みんなが思うような、そうね?こう、そういう関係じゃないっていうか…!!」
わたわたと両手を無意味に彷徨わせて弁明を試みる綴だが生憎と戯藍にそれをしても噂がなくなるわけでない。悪い噂でもないので放っておいても構わないとは思うのだが。
「これ絶対時間の問題だろ、いい加減諦めて認めろよ、それが恋なのか勘違いなのか知らねえけど」
『同意。しかしながらユーザー様も似たような状態になっていることを進言します』
「俺のは恋でも愛でもなく、ただの負けず嫌いって言うんだよ。時間が経ったら構ってられなくなって飽きるに決まってる。あと俺の方に恋愛感情など微塵も存在してないことを忘れるなよ」
綴はチワワ系、つまりは子犬のような小柄なタイプの少年だ。顔立ちもスカートを履くか、ズボンを履くかでわからなくなるぐらいの中性的な顔立ちを持っているので、実はそこそこ人気がある。そんな奴がイケメン(一匹系狼)を侍らせているとなれば噂の的にもなるだろう。だが、お互いに人気者同士なので悪い方に傾くことはあるまい。綴は特に情報屋として確立した地位を持っているので下手なちょっかいをかければ自分に返ってくる、ということもあるかもしれないが。
「執着ってのは長続きしないもんだよ、感情が重たいと余計にな。だから、放っておくのが一番だ」
「(それが巡り巡って今の状況を生んでるんじゃないんスかね)」
「(置いとこうよ、言っても信じてくれないし。あの絶対に諦めてくれるだろう的な自信はどこから出てくるんだろうね?)」
「聞こえてんぞ、バカップル。シミュレーションしたから問題ないの」
「人間の感情なんてシミュレーション通りに行くものなのか疑問なんですけどぉ」
少なくとも戯藍の中では絶対的な自信があるらしい。ピピ、と軽い電子音が響いた。ゴウンゴウンと大型シミュレーターの駆動音が振動としてあるのに軽い音は問題なく彼らに届く。
『忠告。問題が発生しました。〝阿修羅〟、〝ウロボロス〟双方に動きあり。このまま放置を続けますと60を越える確率でユーザー様の学生生活に関わります。具体的に申し上げますと生徒会に所属しているが故の弊害が発生します。早急に解決策を取ってください』
夏休みだってのに不良は元気いっぱいらしい。いや、夏休みであるからこそ元気なのかもしれない。ともかく彼の災難はまだ続くらしい。しょっぺーお顔になった戯藍はぼそりと呟いた。
「もういっそのこと両方のチーム潰そうかな」
「それだけはやめてほしいなぁ!!」
受難が続くなら潰した方が早い気がする。などと言い出す少年を二人がかりで説得する羽目になった。
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