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「高額報酬」

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騙された。

高額報酬なんて謳い文句につられて、ノコノコやってきた私がバカだった…

レナは心底後悔したが、もう後戻りができる状態ではなかった。

目の前では、顔もスタイルも抜群の、モデルのような女性が涙ぐんでいる。

モデルのような女性が腰かけているのは、アンティークなレザーのソファ。

薄暗い木造の室内はコーヒーの深い香りに包まれ、飴色に磨かれたフローリングやカウンターが落ち着いた雰囲気を醸し出している。

室内にかかるアンティークな時計に目をやり、レナは目の前の女性に気づかれないよう、小さく溜め息をついた。

遅い…

レナは、つい数時間前に見つけた「高額報酬」の貼り紙を見て、この木造のカフェに飛び込んだのだ。

どのような仕事内容なのかを尋ねるつもりで入っただけのカフェで、「お前、騙されやすそうな女だな。採用」と言われ、「じゃ、とりあえず2~3時間、留守番頼むわ」と言われて取り残された。

レナが何も言い返せなかったのは、文句のつけようがないぐらい男がイケメンだったから。

イケメンが出て行ってカフェのドアが閉まり、「カランカラン」とドアベルが鳴った瞬間、不純な理由で思考回路も動きも止まってしまった自分の情けなさを責め立てた。

それにしても、面接に来たばかりの女子を1人ぼっちで留守番させるとか、一体どーゆー神経してるのよっ。

鬼、悪魔、ドS…!!!

「あ…あのぉ…」

モデルのように美しい女性にそう声をかけられ、「あ、、コーヒーでも淹れましょうか?」と反射的に答えた。

次の瞬間、ドアベルが大きな音を立てたかと思うと、

「コーヒーなんか淹れられないだろ?どうせインスタントしか飲んだことないくせに」

イケメン男がそう言いながら入ってきた。

「!!ど…どうしてそれを…!」

「顔に書いてある。お前は、そういう女だ。」

イケメン男はそういうとモデルのような女の前に静かに座り、

「速水(ハヤミ)と言います。…で、社会的に抹消してほしい男っていうのは?」

そう、ぶしつけに聞いた。
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