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第6話 人殺し?
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龍姫は、半殺し状態のハゲッシグをどうするか悩み続け、時間ばかりが過ぎました。
陽がわずかに傾き初めて、そしてすぐに夜の時間。
「ちょっと! 何やってるの?」
試験の見に来たツンネが、ハゲッシグの身体を見て叫びました。
動揺しながらも、ゆっくりハゲッシグの側に近寄って脈を測ろうと彼の右手を取りますが――脈拍は小さすぎて、彼女には感じ取れませんでした。
「もしかして……死んでる?」
「いいえ、ぎりぎりでいきてますよ」
偽タピが答えました。根拠は不明ですが、彼女にはハゲッシグが生きていると確信しているようです。
「まあ、そろそろしにそうですけど」
「すぐに助けないと!」
「街に連れて帰れば、治せるのか?」
「う~ん……」と、ツンネ。
ミドル街はそれなりの規模があるので、もちろん医者も居ます。
けれど、全身の大火傷を治すことができるかいえば――ノーでしょう。
龍姫のかつて暮らしていた、医学の非常に進んだ世界ですら、体表の3割以上を火傷すると、病院に運ばれても助からない可能性があります。そしてハゲッシグの火傷はどう見ても3割どころでは済みません。
『白魔法』と呼ばれる類の癒やしの魔法が使えればまた話は別でしょうが、致命傷を治すことの出来るレベルの上級白魔道士は『メシア』と呼ばれ、世界中で珍重されます。
なにせ本来なら助からない命を救う奇跡の人ですから、魔物と戦って殺されるようなことは絶対に起きません。金持ちの多く暮らしている大都市で、日々金持ちの命を救いながら、とんでもなく高い給料をもらい、良い生活をしています。
当然、こんな地方の町に居ることは基本的にありません。
(世界中を巡って難病を治療してくれる、奇特な流しのメシアも居るらしいので、絶対ではありませんが)
「「う~ん」」
と、龍姫とツンネの二人が唸ります。
どう転んでも彼の命を助けられないのなら、事実を隠蔽した方が良いのでは? という犯罪者の思考が二人の頭の中で膨れ上がっていました。
「あ、そうだ。良いこと思いついた」
そんな時、ツンネが言いました。
「どーすんだ?」
「偽タピちゃんが、ハゲッシグさんを食べちゃえばいいのよ。そうすれば証拠は残らない」
スライムは、雑食性の魔物です。草、動物、時には土ですら食べます。
つまり人間を食べるくらいはお安いごようなのです。
が――
「それはちょっと……」
さすがの龍姫も、その絵面のグロさを想像して、引いています。
黒タピは見た目はほとんど人間ですし、彼女に人間を食べさせて死体処理をしてしまうのは気が引けます。
「そんなこと、ぜったいにしません!」
偽タピも怒ってます。当然です。
「……しゃーねぇ、助かるかもしれねぇし、街につれて帰ろう。捕まりそうになったら、逃げれば良いしな」
龍姫が覚悟を決めて言うと、ツンネは「いざとなったら、私は無関係のフリするから」と言いました。
「は、ハゲッシグさん!?」
冒険者ギルドに入ると、ハゲッシグの代わりにカウンターに立っていた副支部長のパンドラが大きな声をあげました。
「なにがあったんです」
「わりぃ、俺が半殺しにしちまった」
龍姫は開き直って、正直に言いました。
「……魔人め」
「ハゲッシグさんを半殺しにするなんて……悪魔だ……」
「生きて帰れると思うなよ」
すると、冒険者ギルド内で酒をかっくらっていた冒険者達が立ち上がりはじめました。
「でもよー、悪気は無かったんだって」
龍姫は言います。
「悪気がなかったで済むと思ってんのか!?」
「魔人が。テメー死んだぜ?」
「イカれてんのか?」
すると更に多くの声が口々に浴びせかけられます。龍姫も流石にちょっと落ち込んで、ガーンです。
「そ、そうなんです。彼女はちょっと『頭がおかしい』ので、許してあげてください」
ツンネは龍姫に詰め寄ってくる冒険者達の前に立ちふさがると、そう言ってなんとか説得しようとします。
「頭がおかしい?」と、パンドラが聞き返しました。「どれくらい?」
「えっと……彼女は記憶喪失の上に精神錯乱状態だったんです」
ツンネは真っ赤なウソをつきました。
(おいおい、てきとーなこと言うなよ)と、龍姫は内心で反論します。
「精神錯乱……?」
パンドラが呟き、他の冒険者達も顔を見合わせて立ち止まりました。
全員の視線が一斉に龍姫の顔に集まります。
「確かにちょっと変わった格好だし、喋り方も変ですが――見た限り、精神錯乱というほどでもないですね」
「龍姫。あなたがここに来るまでに至る経緯を、正直に話して。正直によ?」
ツンネは龍姫に言います。
「え、本当のことを正直に言うのか?」
「そうよ。全部正直に話して」
ツンネが真剣な目つきで言うので、龍姫は仕方なくパンドラ達の方を向いて喋りはじめました。
「えっと……おれは元々別の世界に暮らしてて、そこで母ちゃんに殺されてこの世界に来たんだ」
「はぁ? 別の世界ですか?」
パンドラが聞き返しました。
「そうだ。この世界よりずっと進んでいて、すげー退屈な世界なんだよ。毎日勉強ばっかやらされてさ。魔物も居ないし、冒険もねー場所だよ」
「……」
パンドラは一瞬黙り込みました。そしてややあって、
「たしかに、彼女は錯乱していそうですね」
パンドラは龍姫の服装や顔つき、そして何よりも言動から総合して結論を出しました。
「なんだ、精神錯乱か。それじゃあしょうがない」
「だな! 精神錯乱してたなら問題ないだろう」
すると、周囲で見守っていた冒険者たちからも殺気が消え去り、表情には笑顔が戻ります。
怒りに武器をとっていた人たちは一斉に席に座り、再び酒を飲み直しました。
「……は?」
龍姫は何が起きたのか理解できず、ポカンとしています。
実はこの世界では精神錯乱による犯罪は基本的に罪に問われません。
なにせ責任能力がありませんから、そんな人間を罰してもしょうがないという考えです。
「ハゲッシグさんが死ねば、ぼくが支部長かぁ」
そして早くも、副支部長のパンドラは嬉しそうに笑っています。
が、ハゲッシグはまだ死んでいません。今も龍姫の背中でなんとか命を繋いで居ますが、そんなことはすっかり全員忘れてしまったようで――
「実はおれ、ハゲッシグさんのこと苦手だったんだよなぁ、口が臭いし」
「確かに臭かったなぁ! あのおっさん」
「口どころか、全身臭かったぜ!」
ワイワイガヤガヤ
冒険者ギルドの中は一斉にハゲッシグの悪口合戦。どうやら、あまり彼は好かれていなかったようです。
そのおかげで龍姫達は罪に問われることは無さそうですが――
「う、ぎ……」
龍姫の背中でハゲッシグはうめき声を漏らします。
そうです。彼はまだ死んでいません。助かる見込みが無いのに、しぶとく生き残っているのです。
そして流石に龍姫も、自分が致命傷を負わせてしまった相手を、生きたまま野原に埋めることを出来るほど人でなしではありません。
その後、龍姫達はミドル街にある小さな病院に向かいましたが、医者はハゲッシグの身体を見てすぐに「こりゃだめだ」と、さじを投げて、「今夜が峠だろうね」と、残酷な死の宣告を告げるだけでした。
「あーあ……どうしたら良いんだろ?」
ちょっと嫌な匂いが漂い始め、ハエがたかっているハゲッシグを背負いながら、龍姫は目的地も無しに街の往来を歩いていました。
しかし限界が近いのでしょう。すでにハゲッシグからはうめき声すら聞こえてきません。
「ごしゅじんさま、このひとそろそろしんじゃいますよ」
「……ま、このままじゃそうなっちまうかもな」
龍姫の声のトーンは低く、辛そうです。
じつは、ハゲッシグが仲間たちに悪口を言われていたのをみて、それがまるで学校でいじめられていたときの自分と重なり、彼に対する同情心が湧いてきていたのです。
「けどよ……どうしようもねぇ。くそっ」
龍姫は自らの無力さを呪い、同時に自らの粗暴な態度を反省しました。
ただの人間にファイアブレスが耐えられないことは少し考えれば分かること。なのに思い切り炎を吐き出し、全身に大火傷を負わせてしまいました。(もちろん、ハゲッシグが強者の雰囲気を纏っていたから、龍姫も本気を出したという側面もありますが)
龍姫はいつも自らの力を抑制出来ず、多くの人間に迷惑を掛けてきました。
学校でいじめられていた原因も、半分は特殊な生まれの責任ではありますが、もう半分は粗暴でがさつな自分の性格に起因しているというのを、内心では気づいていたのです。
「……くそっ、わりぃ。ハゲッシグのおっさん」
龍姫は後悔の涙を流し、その場に膝を尽きます。
すると――
「最後の手段が、無くもないわ」
その様子を見ていたツンネが、ぽつりと呟きました。
「え? まじか?」
「うん、ちょっと……できるだけ頼りたくはなかったんだけど」
「なんでもいいから、早く教えてくれよ!」
龍姫はツンネに詰め寄ります。
「街の東端に、魔人街って呼ばれている場所があるんだけど、そこならもしかすると助けられる人が居るかも。ただ……魔人街は治安が悪いから、とても危険なの」
「危険でも良いから、早く行こうぜ」
そう言って、龍姫は東に向かって走り出しました。
全速力の猛ダッシュ。背中に成人男性を背負っているのに、その速度は60キロほど出ています。
「ちょっと! 待って!」
「ごしゅじんさま!」
ツンネと偽タピの二人は置いてけぼりの状態で、暗くてジメジメとした暗い街へと向かっていきました。
陽がわずかに傾き初めて、そしてすぐに夜の時間。
「ちょっと! 何やってるの?」
試験の見に来たツンネが、ハゲッシグの身体を見て叫びました。
動揺しながらも、ゆっくりハゲッシグの側に近寄って脈を測ろうと彼の右手を取りますが――脈拍は小さすぎて、彼女には感じ取れませんでした。
「もしかして……死んでる?」
「いいえ、ぎりぎりでいきてますよ」
偽タピが答えました。根拠は不明ですが、彼女にはハゲッシグが生きていると確信しているようです。
「まあ、そろそろしにそうですけど」
「すぐに助けないと!」
「街に連れて帰れば、治せるのか?」
「う~ん……」と、ツンネ。
ミドル街はそれなりの規模があるので、もちろん医者も居ます。
けれど、全身の大火傷を治すことができるかいえば――ノーでしょう。
龍姫のかつて暮らしていた、医学の非常に進んだ世界ですら、体表の3割以上を火傷すると、病院に運ばれても助からない可能性があります。そしてハゲッシグの火傷はどう見ても3割どころでは済みません。
『白魔法』と呼ばれる類の癒やしの魔法が使えればまた話は別でしょうが、致命傷を治すことの出来るレベルの上級白魔道士は『メシア』と呼ばれ、世界中で珍重されます。
なにせ本来なら助からない命を救う奇跡の人ですから、魔物と戦って殺されるようなことは絶対に起きません。金持ちの多く暮らしている大都市で、日々金持ちの命を救いながら、とんでもなく高い給料をもらい、良い生活をしています。
当然、こんな地方の町に居ることは基本的にありません。
(世界中を巡って難病を治療してくれる、奇特な流しのメシアも居るらしいので、絶対ではありませんが)
「「う~ん」」
と、龍姫とツンネの二人が唸ります。
どう転んでも彼の命を助けられないのなら、事実を隠蔽した方が良いのでは? という犯罪者の思考が二人の頭の中で膨れ上がっていました。
「あ、そうだ。良いこと思いついた」
そんな時、ツンネが言いました。
「どーすんだ?」
「偽タピちゃんが、ハゲッシグさんを食べちゃえばいいのよ。そうすれば証拠は残らない」
スライムは、雑食性の魔物です。草、動物、時には土ですら食べます。
つまり人間を食べるくらいはお安いごようなのです。
が――
「それはちょっと……」
さすがの龍姫も、その絵面のグロさを想像して、引いています。
黒タピは見た目はほとんど人間ですし、彼女に人間を食べさせて死体処理をしてしまうのは気が引けます。
「そんなこと、ぜったいにしません!」
偽タピも怒ってます。当然です。
「……しゃーねぇ、助かるかもしれねぇし、街につれて帰ろう。捕まりそうになったら、逃げれば良いしな」
龍姫が覚悟を決めて言うと、ツンネは「いざとなったら、私は無関係のフリするから」と言いました。
「は、ハゲッシグさん!?」
冒険者ギルドに入ると、ハゲッシグの代わりにカウンターに立っていた副支部長のパンドラが大きな声をあげました。
「なにがあったんです」
「わりぃ、俺が半殺しにしちまった」
龍姫は開き直って、正直に言いました。
「……魔人め」
「ハゲッシグさんを半殺しにするなんて……悪魔だ……」
「生きて帰れると思うなよ」
すると、冒険者ギルド内で酒をかっくらっていた冒険者達が立ち上がりはじめました。
「でもよー、悪気は無かったんだって」
龍姫は言います。
「悪気がなかったで済むと思ってんのか!?」
「魔人が。テメー死んだぜ?」
「イカれてんのか?」
すると更に多くの声が口々に浴びせかけられます。龍姫も流石にちょっと落ち込んで、ガーンです。
「そ、そうなんです。彼女はちょっと『頭がおかしい』ので、許してあげてください」
ツンネは龍姫に詰め寄ってくる冒険者達の前に立ちふさがると、そう言ってなんとか説得しようとします。
「頭がおかしい?」と、パンドラが聞き返しました。「どれくらい?」
「えっと……彼女は記憶喪失の上に精神錯乱状態だったんです」
ツンネは真っ赤なウソをつきました。
(おいおい、てきとーなこと言うなよ)と、龍姫は内心で反論します。
「精神錯乱……?」
パンドラが呟き、他の冒険者達も顔を見合わせて立ち止まりました。
全員の視線が一斉に龍姫の顔に集まります。
「確かにちょっと変わった格好だし、喋り方も変ですが――見た限り、精神錯乱というほどでもないですね」
「龍姫。あなたがここに来るまでに至る経緯を、正直に話して。正直によ?」
ツンネは龍姫に言います。
「え、本当のことを正直に言うのか?」
「そうよ。全部正直に話して」
ツンネが真剣な目つきで言うので、龍姫は仕方なくパンドラ達の方を向いて喋りはじめました。
「えっと……おれは元々別の世界に暮らしてて、そこで母ちゃんに殺されてこの世界に来たんだ」
「はぁ? 別の世界ですか?」
パンドラが聞き返しました。
「そうだ。この世界よりずっと進んでいて、すげー退屈な世界なんだよ。毎日勉強ばっかやらされてさ。魔物も居ないし、冒険もねー場所だよ」
「……」
パンドラは一瞬黙り込みました。そしてややあって、
「たしかに、彼女は錯乱していそうですね」
パンドラは龍姫の服装や顔つき、そして何よりも言動から総合して結論を出しました。
「なんだ、精神錯乱か。それじゃあしょうがない」
「だな! 精神錯乱してたなら問題ないだろう」
すると、周囲で見守っていた冒険者たちからも殺気が消え去り、表情には笑顔が戻ります。
怒りに武器をとっていた人たちは一斉に席に座り、再び酒を飲み直しました。
「……は?」
龍姫は何が起きたのか理解できず、ポカンとしています。
実はこの世界では精神錯乱による犯罪は基本的に罪に問われません。
なにせ責任能力がありませんから、そんな人間を罰してもしょうがないという考えです。
「ハゲッシグさんが死ねば、ぼくが支部長かぁ」
そして早くも、副支部長のパンドラは嬉しそうに笑っています。
が、ハゲッシグはまだ死んでいません。今も龍姫の背中でなんとか命を繋いで居ますが、そんなことはすっかり全員忘れてしまったようで――
「実はおれ、ハゲッシグさんのこと苦手だったんだよなぁ、口が臭いし」
「確かに臭かったなぁ! あのおっさん」
「口どころか、全身臭かったぜ!」
ワイワイガヤガヤ
冒険者ギルドの中は一斉にハゲッシグの悪口合戦。どうやら、あまり彼は好かれていなかったようです。
そのおかげで龍姫達は罪に問われることは無さそうですが――
「う、ぎ……」
龍姫の背中でハゲッシグはうめき声を漏らします。
そうです。彼はまだ死んでいません。助かる見込みが無いのに、しぶとく生き残っているのです。
そして流石に龍姫も、自分が致命傷を負わせてしまった相手を、生きたまま野原に埋めることを出来るほど人でなしではありません。
その後、龍姫達はミドル街にある小さな病院に向かいましたが、医者はハゲッシグの身体を見てすぐに「こりゃだめだ」と、さじを投げて、「今夜が峠だろうね」と、残酷な死の宣告を告げるだけでした。
「あーあ……どうしたら良いんだろ?」
ちょっと嫌な匂いが漂い始め、ハエがたかっているハゲッシグを背負いながら、龍姫は目的地も無しに街の往来を歩いていました。
しかし限界が近いのでしょう。すでにハゲッシグからはうめき声すら聞こえてきません。
「ごしゅじんさま、このひとそろそろしんじゃいますよ」
「……ま、このままじゃそうなっちまうかもな」
龍姫の声のトーンは低く、辛そうです。
じつは、ハゲッシグが仲間たちに悪口を言われていたのをみて、それがまるで学校でいじめられていたときの自分と重なり、彼に対する同情心が湧いてきていたのです。
「けどよ……どうしようもねぇ。くそっ」
龍姫は自らの無力さを呪い、同時に自らの粗暴な態度を反省しました。
ただの人間にファイアブレスが耐えられないことは少し考えれば分かること。なのに思い切り炎を吐き出し、全身に大火傷を負わせてしまいました。(もちろん、ハゲッシグが強者の雰囲気を纏っていたから、龍姫も本気を出したという側面もありますが)
龍姫はいつも自らの力を抑制出来ず、多くの人間に迷惑を掛けてきました。
学校でいじめられていた原因も、半分は特殊な生まれの責任ではありますが、もう半分は粗暴でがさつな自分の性格に起因しているというのを、内心では気づいていたのです。
「……くそっ、わりぃ。ハゲッシグのおっさん」
龍姫は後悔の涙を流し、その場に膝を尽きます。
すると――
「最後の手段が、無くもないわ」
その様子を見ていたツンネが、ぽつりと呟きました。
「え? まじか?」
「うん、ちょっと……できるだけ頼りたくはなかったんだけど」
「なんでもいいから、早く教えてくれよ!」
龍姫はツンネに詰め寄ります。
「街の東端に、魔人街って呼ばれている場所があるんだけど、そこならもしかすると助けられる人が居るかも。ただ……魔人街は治安が悪いから、とても危険なの」
「危険でも良いから、早く行こうぜ」
そう言って、龍姫は東に向かって走り出しました。
全速力の猛ダッシュ。背中に成人男性を背負っているのに、その速度は60キロほど出ています。
「ちょっと! 待って!」
「ごしゅじんさま!」
ツンネと偽タピの二人は置いてけぼりの状態で、暗くてジメジメとした暗い街へと向かっていきました。
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