少年タツ・オンデロックが死んだ日

石田崎ノチ

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6.約束した日

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 喧騒に包まれた街の中、カフェのテラスや窓越しに見えるレストランの中は、どこも満席だった。
「この辺で待っとればええか……」
 故郷の大災害から10年後、18歳になった戒都は、親友と久しぶりに食事をする約束をしていた。
 小さな銀髪を人混みから探していると、それらしき人物がこちらに手を振っていた。
「おーい、戒都君!」
「おう、カラ!」
小走りで駆け寄る可愛らしい姿を見守る。
「もしかして待たせちゃった?」
「全ッ然、今来たとこや」
 それならよかったと、明るく笑う親友の顔を見て、戒都もギザギザの歯を見せて笑う。
その顔を見て、ふと華薇がいつしかの親友の姿を重ね、問いをかけた。
「そういえば戒都君、なんで髪の毛染めたの?前の真っ赤な髪もカッコよかったよ?」
「ああ、それがなァ。10年前のあの日から、勝手に黒ずんでな。ずっと戻らんねん。」
「そっか……。あの時は本当に大変だったもんね、ストレスの影響……とかなのかな」
華薇は少し目を伏せた後、声色を高くして話題を振る。
「ね、『驚天動地』三代目になってから、生活は変わった?」
「なーんにも。ただただ稽古量増えたわ。あのクソジジイ、今に見とれよ」
「ふふっ、最強の戒都君なら楽勝でしょ?」
「……ヘヘン、まあな!」
 二人で笑いながら、お目当ての店へと歩みを進める。
 二人は10年間、離れ離れになっていたが、少し前に再会した。
 人類を守るリライフと、人類を滅ぼすリアマゾネスとして。
「……本当にありがとう、戒都君」
「おう?何やねん、いきなり」
 落ち着いた雰囲気のレストランで、戒都が大ぶりのステーキに噛みつこうとした時、華薇が言葉を漏らす。
「戒都君が『力』の呪縛から僕を解放してくれなかったら、今頃どうなっていたか……」
 申し訳なさそうに、しかしどこか嬉しそうに華薇が言った。
「もうええって、その話ィ。お互い無事やったなぁ、良かったなぁ、でええやんけ、なあ」
 照れくさそうに戒都が頭を掻きむしった。
「ふふっ、戒都君は本当に……強いんだね」
 じっと戒都を見つめる華薇の瞳には、以前のような暗い濁りはもう無かった。
「戒都君みたいに強くなるには、僕もまだまだ『抗い』が足りないかなあ?」
「おう、師匠に稽古頼んでやろうか」
「う、うーん……それは遠慮しておこうかな」
「ガハハハハ!ほんでもカラ、お前にはもうお前なりの『強さ』があるやろ?」
 戒都がそう言うと、誇らしげに華薇が目を輝かせる。
「……うん、正直まだ見定め中だけど、僕なりにね。戒都君や、楓ちゃん達にだって負けない、本当の強さを手にしてみせるよ」
 また、二人で笑う。
 お互いが18歳になった今、もうリライフごっこをすることは無いだろう。
 代わりに本当のリライフとして、2人は肩を並べて人類の脅威と戦っていく。
 一度死んだもの同士、二回目の人生を歩んでいく。

 このハンドレアには、多くのリライフが集まっている。
 その理由はリライフが、リアマゾネスに抗える、人類を救う人類だからだ。
 過去で途方も無い絶望に襲われたとしても、今日の昼下がりに、約束したレストランで笑い合えるようになった二人のように。
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