2 / 8
Fellow
しおりを挟む
心地好い原っぱの上、彼は私の隣で青空を見上げ足を崩して座っている。
「退屈か?」
思わず私がそう訊いたのは、彼の瞳が酷く虚ろであったからだ。
「どうだろうなあ。」
彼は頭をぼりぼりと搔いた。これは彼の昔からの癖で、私にはもう慣れたことだった。
薬に塗れた彼は、もう殆ど昔の事など憶えていなかった。
無論、私のことも例外ではない。私はひとつ溜息を吐いた。
無意識に大げさになったそれに彼は気付いて、
「そっちはどうだい?」
と訊き返してきた。私は彼を視た。
心地好い小麦色に焼けた肌には、虚ろな目が出鱈目に輝いていた。
まるで以前の“お前”のように……
私は知らぬ内に泣いているのに気付いた。それを木綿の袖で隠しながら、彼に言った。
「嫌、なんだ、……おれは淋しい人間のようだ、」
言葉の端には失笑が見え隠れしていた。私はそれに尚泣いた。
彼は私にどんな表情を向けているのだろう、私をどんな人間と思って嘲て視ているのだろう。
だがそう思う私に彼は確かに言った。
「なら、おれも淋しいんだろうな。」
以前の彼の生き生きとした表情が、まざまざと瞼の裏に映っては消える。
日向ぼっこで焼けた肌に差す日光の照り、庭の匂い、弱いからだで愉しそうに笑う“お前”。彼の白い歯が唇から覗いて笑っているその様が、目の上に展開されていく。
私は笑って泪を搔き消した。裾から彼を視て言う。
「なんだ、まるでこの世にふたりぽっちの様に言うじゃないか」
彼は若干唇から歯を覗かせて笑った。
「良いだろう、互いに互いを補えば。どうやら君はおれの大事な人らしいからな。」
私はその姿に以前を重ねていた。
あの幸せな、過去となった記憶を……
青々とした原っぱに私は大の字に寝転がり、彼に顔を向けて言った。
「嗚呼そうさ!“私”は、“お前”の、大事な大事な、
ヒトだったんだよ!」
私の心は、快晴よりも深く深く晴れ渡っていた。
Fellow Fin.
初稿:1月下旬頃
アルファポリス版:3月12日
「退屈か?」
思わず私がそう訊いたのは、彼の瞳が酷く虚ろであったからだ。
「どうだろうなあ。」
彼は頭をぼりぼりと搔いた。これは彼の昔からの癖で、私にはもう慣れたことだった。
薬に塗れた彼は、もう殆ど昔の事など憶えていなかった。
無論、私のことも例外ではない。私はひとつ溜息を吐いた。
無意識に大げさになったそれに彼は気付いて、
「そっちはどうだい?」
と訊き返してきた。私は彼を視た。
心地好い小麦色に焼けた肌には、虚ろな目が出鱈目に輝いていた。
まるで以前の“お前”のように……
私は知らぬ内に泣いているのに気付いた。それを木綿の袖で隠しながら、彼に言った。
「嫌、なんだ、……おれは淋しい人間のようだ、」
言葉の端には失笑が見え隠れしていた。私はそれに尚泣いた。
彼は私にどんな表情を向けているのだろう、私をどんな人間と思って嘲て視ているのだろう。
だがそう思う私に彼は確かに言った。
「なら、おれも淋しいんだろうな。」
以前の彼の生き生きとした表情が、まざまざと瞼の裏に映っては消える。
日向ぼっこで焼けた肌に差す日光の照り、庭の匂い、弱いからだで愉しそうに笑う“お前”。彼の白い歯が唇から覗いて笑っているその様が、目の上に展開されていく。
私は笑って泪を搔き消した。裾から彼を視て言う。
「なんだ、まるでこの世にふたりぽっちの様に言うじゃないか」
彼は若干唇から歯を覗かせて笑った。
「良いだろう、互いに互いを補えば。どうやら君はおれの大事な人らしいからな。」
私はその姿に以前を重ねていた。
あの幸せな、過去となった記憶を……
青々とした原っぱに私は大の字に寝転がり、彼に顔を向けて言った。
「嗚呼そうさ!“私”は、“お前”の、大事な大事な、
ヒトだったんだよ!」
私の心は、快晴よりも深く深く晴れ渡っていた。
Fellow Fin.
初稿:1月下旬頃
アルファポリス版:3月12日
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる