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オストラバ王国
第33話:アズライト・シュタイン
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オストラバ王国の名門騎士の家の出である、アズライトは父アゲート・シュタインと貴族である母ローズ・クォーツの元で生まれる。
幼少期から非凡な剣術と魔術の才能に溢れ、シュタイン家の長い歴史の中でもアズライトは特に逸材と呼ばれた。
騎士は6-7歳ころから主君の小姓となり、10歳を超えると従騎士として主人である騎士の身の回りの世話をするが、アズライトだけは進学を許された。
名門学校に進学すると他者を寄せ付けない程、圧倒的な成績かつ飛び級で卒業。13歳になる頃には他国対抗の剣術闘技大会、魔法闘技大会に出場すると
全て優勝。人格においても優れた人物だと他国にもその名を轟かせていた。
圧倒的が故にライバルという存在はおらず、名門騎士という事柄もあってアズライトには友人と呼べる人は殆どいなかった。そんな中、アズライトを幼少期から熱中させていたのは
勇者ヴェルネルと魔法使いレムリの冒険記であった。
勿論、冒険記の筆者はヴェルネルとレムリではないので作り話しも多く見られたが、アズライトもいつか二人の様になりたいと思っていた。
しかし、父アゲートはヴェルネルとレムリの冒険記は下らないと一喝し、いつもアズライトの話を遮った。
母ローズだけはアズライトを理解し、幼いアズライトが寝る時には二人の冒険記を子守歌の様に聞かせた。
だが、ローズはアズライトが15歳の誕生日を迎えた日に流行り病で倒れてしまう。アズライトは常に傍で献身的な介護をしていたが
アゲートはそうではなかった。 オストラバ王国は他国と比べて圧倒的に国力が高く政治関係やそれ故に敵国も多かった。魔族や魔物が減ったとしても戦争も少なくなかった。
それ故にあまりローズの傍にいてあげる事はできなかった。
もし、一歩間違えばアズライトはフロードの様に残虐非道になっていたかもしれない。
だが、アズライトは違った。 父の仕事を理解し、オストラバ国王国の長男として王に仕えながらも母の介護を使用人だけに任せようとはせず
時間がある限り献身的に通った。
しかし、アズライトが16歳になる頃に母は病死してしまう。 ローズ・シュタインの葬儀は大勢が参列し、国中が悲しんだ。
母の死後、アズライトは直ぐに主君から叙任の儀式を行われると正式の騎士となり、その後、実践経験として多くの戦争に参加すると数々の功績を残した。
オストラバ王国は人間の種族だけが住む国であり、アゲート・シュタインも優れた人物であったが、人間以外の種族を認めず、過去に他種族撲滅運動にも参加していたと噂されていた。
国中の殆どが洗脳に近い教育により、人間至上主義であったが、アズライトだけは違った。
幼少期から見ていたヴェルネルとレムリの冒険記には多くの種族が登場人物していた。その為、アズライトは人種を差別をする様な事はなかった。
ある日、アズライトは大きな転機を迎える。オストラバ王国には多くの傘下街や国が存在し、上納金を納める代わりに防衛や文書や交易品を配達を利用できる。
とある国で奴隷商人の誘拐事件が勃発し、アズライトは任務に就いた。
アズライトは見事奴隷商人を壊滅に追いやる事に成功したが、その際にエルフの”ルチル”と出会う。 ルチルはまだ幼く、とある人間の手によって静かに暮らしていたエルフの森を襲撃され
ルチルを誘拐した。 ルチルの家族は人間の手によって殺害され、身寄りもないルチルに帰る場所はなかった。
過去の様にエルフが迫害される事は減ったものの、誘拐や他種族撲滅運動の過激化はまだ存在しており、幼いルチルには危険な世の中であった。更にオストラバ王国では
人間至上主義で他種族は殆ど認められない。
しかし、アズライトは幼少期から熱中していた伝説のヴェルネルとレムリの冒険記の様に分け隔てない世界を目指していた。母ローズ・クォーツも同じ思想であったのだ。
アズライトは反対を受けながらもルチルを保護する為に共に帰国したが、アゲート・シュタインがそれを認めるわけなかった。 オストラバ国の王や貴族も同様だったが
アズライトは既に多くの方から認められており無下にする訳にはいかず、騎士の名は剥奪され、国に仕える断罪人となった。
シュタイン家の名は辛うじての残されているものの、アズライトは段々と居場所を無くしたが、ルチルと共に世界を少しでも平和にしておく仕事を好んでいた。
そして、ある通報を受けて孤島に向かうとインザームを見つけた。 ヴェルネルとレムリを殺したインザームの話はアズライトは勿論知っている。その反逆者をこの手で殺したいと思っていた。
しかし、インザームから全ての真実を聞いた。 ヴェルネルとレムリは殺しておらず、レムリ討伐作戦が決行された事、北のセーヴェルの話。アズライトは一体何を想うのか。
ここからは第四章。 アイレとフェアが北のセーヴェルとユークと戦う約二週間前。 物語は遡る。
◇ ◇ ◇ アズライトの船の中。インザームがルチルによって転送された時 ◇ ◇ ◇
「これがヴェルネルとレムリの最後じゃ。信じるか信じないかはお主次第じゃが、ワシは嘘はいっておらん。じゃが、誰も信じてはくれんかった」
インザームはアズライトに全ての事を話した。アズライトは相槌を打つことはなく、静かにインザームの瞳を真っすぐ見ながら話しを聞いた。その横でルチルもいつもとは違い
真剣な眼差しをしていた。 ハーフエルフのフェアやインザームが自分と同じようにつらい過去があった事に共感していた。
「う……うう……。 おじいちゃん可哀そうだああああああああ。 ルチルっ おじいちゃんの事信じるっ! むじつだっ!」
ルチルは浮遊しながらまるで漫画の様に大粒の涙を流してインザームの話しを信じた。
アズライトは長考してからゆっくりと口を開いた
「正直……私にも嘘とは思えませんでした。私は幼い頃から色々な訓練をしており、人が嘘をついている場合はある程度わかります。しかし、あなたには一切それがなかった。
更にルチルは私より何倍もその能力が高いんです。 証拠はありませんが……私も信じたいと思っています」
アズライトはインザームにとって意外な回答をした。今まで誰も信じてくれなかったこの話をアイレやフェア以外に信じてもらえた喜びは誰にもわからないだろう。30年間も
孤独と戦ってきたのだ。
「しかし……やはり証拠がないと私もあなたの汚名を晴らす事はできませんし、少し……納得いかない部分もあります。 申し訳ないですが、私の故郷であるオストラバ国で少し調べて見てもいいでしょうか?
あの時代は私の父上であるアゲート・シュタインが戦争の指揮を取っている事も多かったはずです。何かわかるかもしれません」
「それは……ワシからすれば願ったり叶ったりじゃ。 じゃが……オストラバ国の噂は聞いたことがあるが、ルチルの様なエルフはそこで大丈夫なのか?」
「ご心配ありがとうございます。それは……」
アズライトはルチルとの出会いと騎士を剥奪された経緯を話した。これはアズライト自身も驚いていた。こんなにもすんなりと人の話を信じて
身の上話をする事は今までなかった。 ヴェルネルとレムリの事はアズライトにとってそれだけ特別という事だった。
「ふむ……ルチルやアズライト。お主たちも辛い出来事があったんじゃのぅ。ワシにはその気持ちはよくわかる。完全に信じてもらわなくとも、二人がワシの話を聞いてくれただけで感謝じゃ。
この先何があろうとも、ワシは後悔せんよ。アイレもいる事じゃしな」
「私は断罪人としても誇りを持っています。なので、証拠が出るまではあなたを捕縛し続ける事、それとアイレくんと会わせる事はできません」
「アズアズっ! ひどい! おじいちゃんはいい人っ!」
「よい。証拠が残っているとは思わんが、アイレが無事だっただけでワシは満足じゃよ」
「おじいちゃんっ! 共にがんばろうっ!」
ルチルはインザームを気に入った様で浮遊しながら白い髭をつんつんとひっぱっていた。
アズライトはインザームには幼少期からヴェルネルとレムリの冒険記が好きで思い入れがあった事は話さなかった。アイレが生きていると叫んだとき
アズライトは本当にそうであればと願った。 しかし、断罪人としての誇りやインザームの事を完全に信じきる事ができなかったからだ。
それでも、世界を救いたい。世界を分け隔てなく公平に見続けたいという正義感はヴェルネルとレムリと同様だった。
そして、アズライト、ルチル、インザームを乗せた船はオストラバ国に進路を向けて出発した。
幼少期から非凡な剣術と魔術の才能に溢れ、シュタイン家の長い歴史の中でもアズライトは特に逸材と呼ばれた。
騎士は6-7歳ころから主君の小姓となり、10歳を超えると従騎士として主人である騎士の身の回りの世話をするが、アズライトだけは進学を許された。
名門学校に進学すると他者を寄せ付けない程、圧倒的な成績かつ飛び級で卒業。13歳になる頃には他国対抗の剣術闘技大会、魔法闘技大会に出場すると
全て優勝。人格においても優れた人物だと他国にもその名を轟かせていた。
圧倒的が故にライバルという存在はおらず、名門騎士という事柄もあってアズライトには友人と呼べる人は殆どいなかった。そんな中、アズライトを幼少期から熱中させていたのは
勇者ヴェルネルと魔法使いレムリの冒険記であった。
勿論、冒険記の筆者はヴェルネルとレムリではないので作り話しも多く見られたが、アズライトもいつか二人の様になりたいと思っていた。
しかし、父アゲートはヴェルネルとレムリの冒険記は下らないと一喝し、いつもアズライトの話を遮った。
母ローズだけはアズライトを理解し、幼いアズライトが寝る時には二人の冒険記を子守歌の様に聞かせた。
だが、ローズはアズライトが15歳の誕生日を迎えた日に流行り病で倒れてしまう。アズライトは常に傍で献身的な介護をしていたが
アゲートはそうではなかった。 オストラバ王国は他国と比べて圧倒的に国力が高く政治関係やそれ故に敵国も多かった。魔族や魔物が減ったとしても戦争も少なくなかった。
それ故にあまりローズの傍にいてあげる事はできなかった。
もし、一歩間違えばアズライトはフロードの様に残虐非道になっていたかもしれない。
だが、アズライトは違った。 父の仕事を理解し、オストラバ国王国の長男として王に仕えながらも母の介護を使用人だけに任せようとはせず
時間がある限り献身的に通った。
しかし、アズライトが16歳になる頃に母は病死してしまう。 ローズ・シュタインの葬儀は大勢が参列し、国中が悲しんだ。
母の死後、アズライトは直ぐに主君から叙任の儀式を行われると正式の騎士となり、その後、実践経験として多くの戦争に参加すると数々の功績を残した。
オストラバ王国は人間の種族だけが住む国であり、アゲート・シュタインも優れた人物であったが、人間以外の種族を認めず、過去に他種族撲滅運動にも参加していたと噂されていた。
国中の殆どが洗脳に近い教育により、人間至上主義であったが、アズライトだけは違った。
幼少期から見ていたヴェルネルとレムリの冒険記には多くの種族が登場人物していた。その為、アズライトは人種を差別をする様な事はなかった。
ある日、アズライトは大きな転機を迎える。オストラバ王国には多くの傘下街や国が存在し、上納金を納める代わりに防衛や文書や交易品を配達を利用できる。
とある国で奴隷商人の誘拐事件が勃発し、アズライトは任務に就いた。
アズライトは見事奴隷商人を壊滅に追いやる事に成功したが、その際にエルフの”ルチル”と出会う。 ルチルはまだ幼く、とある人間の手によって静かに暮らしていたエルフの森を襲撃され
ルチルを誘拐した。 ルチルの家族は人間の手によって殺害され、身寄りもないルチルに帰る場所はなかった。
過去の様にエルフが迫害される事は減ったものの、誘拐や他種族撲滅運動の過激化はまだ存在しており、幼いルチルには危険な世の中であった。更にオストラバ王国では
人間至上主義で他種族は殆ど認められない。
しかし、アズライトは幼少期から熱中していた伝説のヴェルネルとレムリの冒険記の様に分け隔てない世界を目指していた。母ローズ・クォーツも同じ思想であったのだ。
アズライトは反対を受けながらもルチルを保護する為に共に帰国したが、アゲート・シュタインがそれを認めるわけなかった。 オストラバ国の王や貴族も同様だったが
アズライトは既に多くの方から認められており無下にする訳にはいかず、騎士の名は剥奪され、国に仕える断罪人となった。
シュタイン家の名は辛うじての残されているものの、アズライトは段々と居場所を無くしたが、ルチルと共に世界を少しでも平和にしておく仕事を好んでいた。
そして、ある通報を受けて孤島に向かうとインザームを見つけた。 ヴェルネルとレムリを殺したインザームの話はアズライトは勿論知っている。その反逆者をこの手で殺したいと思っていた。
しかし、インザームから全ての真実を聞いた。 ヴェルネルとレムリは殺しておらず、レムリ討伐作戦が決行された事、北のセーヴェルの話。アズライトは一体何を想うのか。
ここからは第四章。 アイレとフェアが北のセーヴェルとユークと戦う約二週間前。 物語は遡る。
◇ ◇ ◇ アズライトの船の中。インザームがルチルによって転送された時 ◇ ◇ ◇
「これがヴェルネルとレムリの最後じゃ。信じるか信じないかはお主次第じゃが、ワシは嘘はいっておらん。じゃが、誰も信じてはくれんかった」
インザームはアズライトに全ての事を話した。アズライトは相槌を打つことはなく、静かにインザームの瞳を真っすぐ見ながら話しを聞いた。その横でルチルもいつもとは違い
真剣な眼差しをしていた。 ハーフエルフのフェアやインザームが自分と同じようにつらい過去があった事に共感していた。
「う……うう……。 おじいちゃん可哀そうだああああああああ。 ルチルっ おじいちゃんの事信じるっ! むじつだっ!」
ルチルは浮遊しながらまるで漫画の様に大粒の涙を流してインザームの話しを信じた。
アズライトは長考してからゆっくりと口を開いた
「正直……私にも嘘とは思えませんでした。私は幼い頃から色々な訓練をしており、人が嘘をついている場合はある程度わかります。しかし、あなたには一切それがなかった。
更にルチルは私より何倍もその能力が高いんです。 証拠はありませんが……私も信じたいと思っています」
アズライトはインザームにとって意外な回答をした。今まで誰も信じてくれなかったこの話をアイレやフェア以外に信じてもらえた喜びは誰にもわからないだろう。30年間も
孤独と戦ってきたのだ。
「しかし……やはり証拠がないと私もあなたの汚名を晴らす事はできませんし、少し……納得いかない部分もあります。 申し訳ないですが、私の故郷であるオストラバ国で少し調べて見てもいいでしょうか?
あの時代は私の父上であるアゲート・シュタインが戦争の指揮を取っている事も多かったはずです。何かわかるかもしれません」
「それは……ワシからすれば願ったり叶ったりじゃ。 じゃが……オストラバ国の噂は聞いたことがあるが、ルチルの様なエルフはそこで大丈夫なのか?」
「ご心配ありがとうございます。それは……」
アズライトはルチルとの出会いと騎士を剥奪された経緯を話した。これはアズライト自身も驚いていた。こんなにもすんなりと人の話を信じて
身の上話をする事は今までなかった。 ヴェルネルとレムリの事はアズライトにとってそれだけ特別という事だった。
「ふむ……ルチルやアズライト。お主たちも辛い出来事があったんじゃのぅ。ワシにはその気持ちはよくわかる。完全に信じてもらわなくとも、二人がワシの話を聞いてくれただけで感謝じゃ。
この先何があろうとも、ワシは後悔せんよ。アイレもいる事じゃしな」
「私は断罪人としても誇りを持っています。なので、証拠が出るまではあなたを捕縛し続ける事、それとアイレくんと会わせる事はできません」
「アズアズっ! ひどい! おじいちゃんはいい人っ!」
「よい。証拠が残っているとは思わんが、アイレが無事だっただけでワシは満足じゃよ」
「おじいちゃんっ! 共にがんばろうっ!」
ルチルはインザームを気に入った様で浮遊しながら白い髭をつんつんとひっぱっていた。
アズライトはインザームには幼少期からヴェルネルとレムリの冒険記が好きで思い入れがあった事は話さなかった。アイレが生きていると叫んだとき
アズライトは本当にそうであればと願った。 しかし、断罪人としての誇りやインザームの事を完全に信じきる事ができなかったからだ。
それでも、世界を救いたい。世界を分け隔てなく公平に見続けたいという正義感はヴェルネルとレムリと同様だった。
そして、アズライト、ルチル、インザームを乗せた船はオストラバ国に進路を向けて出発した。
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