老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴

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エルフの集落

第45話:エルフの集落

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「ロック達はどうして傭兵をしてるんだ?  冒険者とかにはならなかったのか?」

 アイレとフェア、そしてロック達は東の森にあるエルフの集落に向かっていた。そんなに遠くないという事だったが
ロックがどこからともなく龍車を借りてきてくれたので、フルボが御者をしてくれている。隣には道を間違えない様にとフェアも座っている。

 その龍車の籠の中にアイレ、ロック、ワイズ、ミット、グレースがいた。全員がオストラバ王国と戦う可能性があるかもしれないのとことで
緊張感が漂っていたが、アイレがロックに話しかけた。

「戦うしか能がねえからな。 俺にとって冒険者は制約が多すぎる」

「あんたは違うだろ、ロック。 俺やミットやフルボはとにかく何をやっても続かなくてな。その日暮らしで魔物を狩って犯罪に手を染めそうになった所をそれぞれロックに拾われたのさ。
こいつひでえんだぜ。俺達全員に同じ口説き文句を言ってやがる」

 ワイズが直ぐに笑いながらロックを褒めた。体格の大きいワイズはそれだけでも強そうに見えるが、スタンピードの時の魔物の戦い方を見るとかなりの技術を持っている。

「ああ。俺もあんたの口説き文句に見せられたが今はこうやって逃げて逃げて次はオストラバ王国と戦うかもしれんとは割にあわねえな」

 ミットも笑いながら言ったが、誰もがロックを信用してるのはスタンピードの時にすぐ理解した。なぜならロックが決めた指示には誰も一言も文句を言わないからだ。

「ひでぇな。俺は何時でも本気だぜ」

「口説き文句って?」

 アイレが笑いながら聞いた。

「俺と一緒に国を作らないか?」
「俺と一緒に国を作らないか?」

 ワイズとミットが二人で顔を見合わせながら言った。ロックはやれやれと言う顔をしていた。

「ってグレースは?」

 アイレが隣で一緒に笑っていたグレースに聞いた。青い髪がなびく度に綺麗な横顔が見えるグレースはロック達と一緒にいるとは思えない雰囲気を醸し出している。

「あたしはロック達に拾われた哀れな少女なの。ああ、なんて悲劇……こんな男だけの世界で血なまぐさい毎日を送ってるなんて……」

 グレースはあたかも演技をしながら笑いながら踊るように笑った。全員が本当に仲が良いのが伝わってくる

「ってのは冗談で。私はゴミみたいな町でゴミみたいな親から逃げた所を助けてくれたのがロック達よ。今は最低で最高の毎日って感じ」

「最低で最高な毎日か。いいじゃねえか」

 ロックもワイズもミットも嬉しそうに笑った。

「アイレ。お前とフェアもなにやら訳が深そうだな。 グレースとそう変わらない年齢でそこまで動けるやつは見ねえぞ。それに二人で旅をしてるのもな。
なんでエルフの森の集落へ行くんだ?」

 真剣な表情を浮かべてロックが聞いた。ワイズもミットもグレースも気になっていた様でアイレに注目してる。エルフの集落でどんな事が待っているかわからない
割に合わない依頼を受けてくれたロック達に対して真剣に答えるのが礼儀だとアイレは思った。

「フェアの古くからの友人に会いにいくんだ。ダンジョンをクリアしたんだけど、それで聞きたい事があって」

「ダンジョンをクリアしたのか? まさか二人でか?」

「ああ」

 アイレの答えに嬉しそうに声をわっとあげた。傭兵達にとってダンジョンのクリアは夢のまた夢だ。いつのもは落ち着いているロックでさえ興奮気味になっている

「お宝!? 武器!? それとも願い事!?」

 グレースが目をお金のマークにしながらアイレに近寄りながら滲みよった。近くに顔がくると、より可愛さが目立つ。

「え、あ、ぶ、武器だよ。でも……いつでもその武器が使えるわけじゃなくて。気が付いたらなぜか手に持ってるんだ」

「……あのスタンピードの時のか?」

 ロックが思い出しながら聞いた。カナリアを殺そうとした時にアイレが目にも止まらない速度で動いた事がずっと気になっていたからだ。

「ああ。その理由を知っているかもしれない人に会いにいくんだ。それと……」

 アイレは続けて

「……ヴェルネルとレムリってわかるか?」

「ああ、その辺のガキでも知ってるぜ。魔王を倒した勇者と魔法使いだな。俺もガキの頃はよく見たぜ冒険記」

「私も好きだったなぁ」

 ロックとグレースが思い出に浸るように語った。

「俺はその為に――」
「皆、もうすぐ着くみたいだよ!」

 アイレと殆ど同時にフルボが前方から叫んだ。

「ヴェルネルとレムリか。後で色々聞かせてもらうぜ」

 ロックが嬉しそうにアイレの頭をぽんぽんと叩いた。アイレはロックの姿にインザームを少し重ねた。

 龍車を下りると、とても入口があるようには見えない程木が生い茂っていた場所に着いていた。

「フェア。ここで合ってるのか?」

「うん、間違いないよ。こんなに大勢の人間を連れてきたらなんて言われるか……でも、事情を説明すれば分かってくれると思う。
下がっててもらえる?」

 フェアはそう言うと、両手の掌を翳した。ロック達が少し恐れるぐらいの魔力が手に漲っていく。

「穢れなき精霊達よ。その姿を現し導きたまえ」

 言葉が終わる共に木が段々と道を避ける様に左右に動いた。すると、一本道が現れた。アイレやロック達が少しそれに驚いて声をあげた。

「急ぎましょう」

「ああ、行こう」

「フルボ。ここから周囲の感知は欠かすなよ。グレース。ミット。お前らは一番後ろに。ワイズは広く視野を見ておけ」

 気持ちを直ぐに切り替えた様にロックは全員に声をかけた。全員が了解と返事をした。
 10分程、森を真っ直ぐ進んで突如、フェアが全員を止めた。フルボには気付かない程、微量の魔力の流れを感じ取った。

「前!」

 フェアが突然叫んだ。アイレを含む全員がそれぞれ戦闘態勢を取った。前方から木を切り裂きながら、風の刃の魔法攻撃が無数に飛んできた。フェアはそれを見て魔法障壁を詠唱したが、数が多すぎて防ぎきれず
破裂音と共に弾け飛んだ。

 残りの風の刃をアイレやロック、ワイズやミットが魔力を通わせた剣で切り裂いた。グレースは仲間に任せて、弓を弾きながら戦闘態勢を取ったまま狙いをいつでも動けるようにしている。
 それから誰も声を出さず、静寂な時間が続いた後にアイレが

「……フェア、これはいった――」 

 
「お前等全員動くな」

 上空にある木の枝の上からアイレ達を囲む様にエルフの男女が6人程、それぞれ掌を翳して物凄い魔力を漲らせていた。フルボもフェアも何も気づく事ができなかった。
 純粋なエルフの魔力はフェアとはまた違う禍々しさを持っている。アイレは冷や汗と共にルチルを思い出した。


    tobe continued




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