老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴

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エルフの集落

第47話:罠

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「この結界の中では私達エルフは魔法を使えない」

 フォンダトゥールが静かに怯えた表情をした。

「ど、どういう事ですか!? フォンダ様!」

 ベルが驚きを隠せない表情をしていた。

「古代禁忌魔法は……私が小さい時、もっとこの世界が魔力で満ちていた時にとある大魔法使いが編み出した魔術よ。でも……今のこの世界で人間がこんな魔法を使えるなんて……」

「てぇことは俺達は魔法を使えるって事か?」

 ロックが状況を直ぐに判断する為に早口で聞いた。

「そう……だ思うわ。試してみたけど魔力を扱えないようになってる」

「わ、私もです……これでは……戦えない……」

 フォンダトゥールとベルが恐怖で顔を歪ませた。

「とにかく外に出よう」

「ええ、私は……ハーフエルフだからか使えるみたい。でも、魔力が確かに集めづらいわ」

 アイレが急いで、フェアは手に魔力が宿るかどうかを確かめた。それから全員で外に出ると
集落のエルフが家の前に集まっていた。全員で20数名程で魔力の操作ができない事に怯えている。

 それから直ぐにアイレ達を見て人間と気づいて恐怖に怯える者や声を荒げる者も出てきた。

「皆、落ち着いて。恐らく、襲撃者によって私達エルフの魔法は制限された。だけど、この結界は長く続くものではないはず。今はとにかく時間を稼ぐ為に出来る事をするのよ。
私達が長けているのは魔法だけではない。 それにここにいる人間達は私達の仲間よ。共に戦い、この居場所を守ってくれる」

 フォンダトゥールは自分も恐怖に怯えていたが、そんな事はおくびにも出さずに全員を安心させた。エルフは魔力の通っていない弓や剣をで戦うと声をあげた。大幅に不利を背負っているのは
間違いない。

「いくらフォンダ様の知り合いだとしてもそんな人間達を信用できない」
「そいつらが敵かもしれない!」
「騙されてる可能性だってある」

 集まっていたエルフがアイレ達に罵声を浴びせた。

「俺は人間だが、皆の大切な場所を守りたいと本当に想ってる。信用しなくてもいい。だけど、一緒に戦わせてくれ」

「私も……ハーフエルフだけど、あなた達の事は仲間だと思っている。信じてほしい」

 アイレのフェアの静かな言葉と真剣な瞳でエルフ達は黙った。その後、ロックが片手をあげながら申し訳なさそうに注目を集めた。

「間を割ってすまねえが、フルボが敵の軍団を感知した。もう少しでここに到達するらしい。かなりの数だ」


「私達の居場所を守る為、戦いましょう。この人達と共に」

 フォンダトゥールが言うと、次は大きな歓声があがった。


 それから10分後、銀色の甲冑を着込んだ50数名の兵士と魔法使いがエルフの森の集落に姿を現せた。森の中に隠れているが、服や甲冑にはオストラバ王国の紋章が刻まれている。

「見渡す限りエルフの姿が見えません」

 一人の兵士が静かな声で報告した。

「ふむ、問題ない。この結界では奴らは逃げれないはずだ」

 それを聞きながら、老兵がこの場にいる誰よりも格上の紋章を付けていた。オストラバ王国では位によって紋章が細かく違っている。

「どうやら、家の中にいる様です。微弱ですが、魔力を感知できます」

 魔法使いの一人が目を瞑りながら感知をした。フルボやフェアの様に優れた感知能力を持つ者は稀有であるが、ある程度の距離ならばそれなりに出来る者は大勢にいた。

「よし、各班に分かれてそれぞれ家を虜混むように待機しろ。儂が指示をするまで決して何もするな。どうせ奴らは魔法は使えん。エルフと言えど赤子みたいな魔力で何も抵抗できん」

 老兵がそう言うと、兵士達は予め決められていた様に首尾よく分かれて家を取り囲んだ。この世界での戦いはアイレやフェアの様に前衛と後衛に分かれて戦う事が基本だ。
それから全兵士は老兵の指示を待った。

「全軍突入開始!」

 老兵が突入の手信号を送ると、静かに老兵を含む全兵士がそれぞれ家の中に突撃した。前衛は甲冑を着込んだ兵士が剣を持ち、その後ろから魔法使いが杖を持ち援護するように。

「――なっ!? これは? ダミーの魔法だと!?」

 全ての家の中に人間を象った木の人形が置いてあった。その中心から微弱な魔力を感じる。老兵は罠だといち早く気づいた。

「――バカな! 奴らは魔法が使えなくなっているはずだ!」

 そう、叫んだ瞬間。家の近くの木の上から炎がついた矢が降り注いだ。家は直ぐに燃え始めると兵士達を混乱させた。

――自分達の家を犠牲に!?

 家から兵士や魔法使いが飛び出してきた瞬間に更にグレースが魔法の矢で足を狙った。フェアも氷の魔法を詠唱して動きを止めている。


「やはり、エルフを全員殺すつもりだな。こうなりゃ容赦はしねえ。予め話していた通りに行こう。命には命をだ」

 木の上でロックがオストラバ王国の兵士達の武装を見て確信した。襲撃と聞いてるとはいえ、目的がハッキリしない以上は出来るだけ殺したくはないとアイレは言ったが
そんな甘い考えは捨てろとロックは怒った。だが、これでハッキリしたと全員にロックが手信号で命の戦いに切り替えた。それを見てアイレは唇を嚙みしめながら気持ちを切り替えた。

 
◇ ◇ ◇ オストラバ王国の兵士達が突入する10分前 ◇ ◇ ◇

「いいか? 奴らは全員が魔法を使えないと思い油断しているはずだ。それを逆手に取る。 まず、グレースの具現化した魔法の矢と通常の矢で絶えず木の上から攻撃をしてくれ
奴らは家の中の魔力を感じ取ると、恐らく怯えたエルフがいると勘違いしてそれぞれ班に分かれて突入してくるはずだ。 そこに付け入る隙がある。 まず、入口を封鎖する魔法をいくつか仕掛けておく。勿論、これは時間稼ぎにしかならない
向こうにも手練れはいるだろうからな。だが、解析や判断にそれぞれ時間差があるはずだ。その間に確実に指揮官のアゲート・シュタインを叩く。それが出来れば人数の不利なんか目じゃねえ」

 ロックが全員に細かい指示を出して、まさにその通りになった瞬間。

 アイレ、フェア、ロック、ワイズ、ミットは全員でまだ燃えている家に入った。老兵は甲冑を着込んでいて顔がよくわからなかったが、ロックは直ぐに指揮官と気づいた。
 老兵は家の中に入ってきたロック達に気づくと、兵士達と魔法使いと共に警戒した。

「なんだ貴様等……なぜ人間がここにいる?」

 老兵は怒った口調で剣を構えながら睨んだ。

「……お前は誰だ?」

 アゲートの顔を知っている唯一のロックがそれに気づいた止まった。この老兵はアゲート・シュタインではない。
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