老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴

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ラコブニーク王国

第67話:宮殿

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 机の上でぐっすりと眠っているリンを横目に、アイレ達はラコブニーク宮殿へ向かった。
 深夜3時頃、街は眠りについており、街灯と呼べる灯りもないものの、変わりに兵士が街を監視しているかのように見回っている。

 特に悪いことはしていないアイレ達だが、こんな夜遅くによそ者がフル装備で歩いているのは、今から何からしたいですと言っているに他ならない。

「私もクリアから姿を消す魔法を習えばよかったわ」

「あれは……凄かったな」

「あたしは美味しいご飯が食べれる魔法がほしいなぁ」

 グレースのわけのわからない独り言のようなつぶやきはさておき、3人は音を立てないようにも素早く、そしてバレないように静かに走りながら、街の奥にある宮殿に徐々に近づいていく。
 街の最奥に建てられており、比較的わかりやすい場所にあるのは好都合だったが、如何せん、宮殿の内部の情報がない。

 根掘り葉掘り宮殿のことをリンに聞くわけにもいかず、ひとまずは近くまで行ってみることになった。宮殿の近くまで難なく辿り着いたが
近くまでいくとその姿に圧倒された。 全体的に白色で綺麗に整えられているが、黄金色のラインが横に書いており、黄金の宮殿とも呼ばれる。

 巨大なその建築物は城とはまた違う圧倒的な存在感を放っており、建物の上には丸いボールのような大きな玉が飾られているのが特徴的だ。
 城との大きな違いは、外壁があまりなく、住居というのが伺える。しかし、いたるところに兵士が配置されており、厳重に警戒はしている。

「すげえ大きさだな。しかし、こんなに兵士がいるとは」

「本当ね、住居と聞いてたけど、これじゃまるっきり軍の施設だわ」

 近くの建物から、少しだけ顔を出して小声で話している。兵士たちは20人ほど宮殿の周りを監視しながら動き回っていた。

「ちょっとした微弱な魔力は感じるけど、明らかに突出したようなのは感じられないわ」

 フェアが城に向かって鋭く感知を飛ばして目を瞑りながら言った。そのまま続けて

「けど……強い結界が張られていたり、意図的に魔力が制限されてたりしたらわからないわ。特にこの距離ではね」

 フェアがアイレに視線を変えながら何かを想うかのように答えた。

「――ちょっといい?」

 宮殿に着いてから、ずっと静かにしていたグレースが、

「この宮殿を見張ってる兵士、何か変だと思わない?」

「何かって……なんだ?」

「動きをよく見て」

 アイレとフェアは宮殿の周りの兵士を遠目で眺めた。すると”違和感”に気が付いた。

「ほら、1.2.3.4.5.反対に向いて、同じように歩いて、1.2.3で横。規則正しすぎる。こんな夜の時間にずっと完璧に動いてるなんてありえる?」

「たしかに、ロボットみたいな動きだな」

「ロボット?ロボットってなに?」

 アイレの言葉にフェアは疑問をぶつけたが、結局上手く説明はできなかった。それでもアイレが何かを閃いて、

「フェア、あの兵士たちの魔力ってほとんど同じじゃないのか?」

「……確かに。普通は少しぐらい違っていいものだけど、あの兵士たちはかなり近い。いや、同じかもしれない」

 フェアは再びを目を瞑ると、兵士たちの魔力を探る。そのどれもが均等に感じた。

「もしかしたら、あの兵士はロボット……いや、魔法で作られた兵士なんじゃないか?」

「……そんな魔法、聞いたことないわよ?」

 その言葉に同調したかのように、フェアが手にしているレムリの武器の宝石が蒼色にキラキラと光りはじめた。

「……何かに反応してる?」

 3人がキラキラと発光する宝石を眺めた後、少しの沈黙が流れる。

「フェア、グレース。危険かもしれないが、中に入って見ないか? 偶然にしては出来すぎてる」

 アイレが真剣な眼差しで二人に言った。

「……わかったわ。行きましょう」

「でも、どうやって?」

「俺に任せてくれ」
 
 3人は上体を低くしながら、バレないように近くまで歩くと、少し手前でタイミングを計りはじめた。
 1.2.3.4.5、反対――その瞬間にアイレがフェアとグレースを担ぐと、

「神速《ディヴィーツ》」

 ダンジョンの武器を右手に出現させたと同時に、目にも止まらぬ速さで駆け抜けた。
 先にある壁の死角に隠れると、アイレは二人をゆっくりと下ろして呼吸を整えた。

「はぁはぁ……さすがに……二人は疲れる……」

「失礼ね……」

「さっすがアイレちゃんっ」

 それでも変わらず、規則正しく動いている兵士たちを横目にしながら、3人はフェアの感知を頼りにしながら奥へ進んだ。
 宮殿の内部は思ってる以上に煌びやかで、壁の至るところに絵画が直接描かれている。魔法で作られた灯りが道を照らし、他国の城では見ないような
製錬された石がビッシリと足元に収まっている。

 すると、フェアが突然、

「人がいる。三人。一人だけ……魔力が桁違いに強い」

 魔力を感知してアイレとグレースの体の前に手を出した。それから壁伝いでゆっくりと歩くと、広場から誰かが話している声が聞こえはじた。3人は魔力を制限しながら
隠れながら、その話に耳を傾けながら、少しだけ覗く。

 初めは断片的にしか聞こえなかったが、段々とハッキリと聞こえはじめた。

「それで、どうなった? 壊滅できたのか?」

 頭に黒色の布を巻いて、上下は白で統一しているこの国特有の服を着ている初老の男が偉そうに声をかけている。

「申し訳ありません、向こうにも手練れがいまして、壊滅とはほど遠いですが、半分以上は……」

 重厚な甲冑を着込み、顔はハッキリと見えないが、体躯の良い大きな剣を帯刀している男が答えた。
 その横にいる、瑠璃色の髪色をした脊の低い少年のような男の子は壁を背もたれにしながら、気だるそうにしている。

「あの……頭に布を巻いてるやつ、ここの王様だわ。冒険者組合の絵画に描かれてたのとそっくり」

「あいつが? なんか、深刻そうな話してるな」

「悪巧みしてま~すって感じ」

 姿を隠しているフェアとアイレとグレースがそれを見ながら小声で会話した。



「まったく……で、フェローは? 殺せたのか?」

 王様の言葉に、隠れていたアイレとフェアが驚く。グレースはフェローを知らない。

「申し訳ありません。取り逃してしまいました」

「馬鹿者が、あいつを殺さないと意味がないだろう。奴は唯一の生き残り――」

 瑠璃色の髪色をした少年が、王様の口を手で塞ぐ。それを重厚な甲冑の男が、

「おい、レッグ! 何してるんだ!」

 王様に何をしているんだという形相で怒鳴るが、瑠璃色の少年は後ろを振り向き、アイレ達を壁越しで見るかのように


「ねぇ――キミたち、そこでナニシテルノ?」

  もの凄まじい殺気を放った。  
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