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12.襟元の小鳥のブローチ
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私は侯爵家令嬢であり、第二王子の婚約者。
私が第二王子の婚約者になって、何年経つのだろう。
王子妃教育はまだまだ続く。
今日は殿下との定例お茶会の日。
いつもは気持ちが塞いでしまう。
けれど、今日の私にはお守りがある。
伯爵令嬢に預けられた、小鳥のブローチ。
可愛らしい青い小鳥をそっと撫でる。
『今日は私と一緒にお茶会に参加してね』
そんな風に小鳥に話しかけている自分がなんだか可笑しくて、つい笑ってしまった。
「どうした?」
と殿下が私に訊く。
「少しだけ、楽しいことがあったのです」
あの伯爵令嬢のことを思い出して笑ってしまう。
「そのブローチはどうしたんだ?初めて見るな」
殿下は私の持ち物などに興味が無いと思っていたので驚いた。
「学校で、ある伯爵令嬢を助けたのです。そうしたら、わざわざお礼を言うために会いに来てくれたのです。その時に、この小鳥を預かったのですわ。そうすれば、返してもらう約束ができるからって」
殿下にそう説明しながらも、あの令嬢が私と『また会いたい』と言ってくれた時の嬉しい気持ちがまた溢れてくる。
「そうか……そのブローチは預かっているものなのか」
「はい。可愛らしいですわ」
「小鳥のモチーフの物が好きなのか?」
「このようなものを持ったことはなかったのですが、とても可愛らしいですわ」
「小鳥のモチーフか……」
「猫!猫のモチーフも可愛いかもしれませんね!」
私はつい思いついたことを言ってしまった。
「猫が好きなのか?」
「はい。伯母様の猫がとても可愛かったのです」
もう何年も前のことだけれど、伯母様のお家へ遊びに行ったときに遊んだ猫が可愛かったのだ。
「君の伯母様とは、辺境伯夫人か」
「覚えていてくださっているのですね」
「当たり前だ。妻の親戚のことだ。覚えているに決まってる」
「……妻……」
私はなんだかとても恥ずかしくなって、小鳥のブローチをそっと撫でた。
-ツヅク-
私が第二王子の婚約者になって、何年経つのだろう。
王子妃教育はまだまだ続く。
今日は殿下との定例お茶会の日。
いつもは気持ちが塞いでしまう。
けれど、今日の私にはお守りがある。
伯爵令嬢に預けられた、小鳥のブローチ。
可愛らしい青い小鳥をそっと撫でる。
『今日は私と一緒にお茶会に参加してね』
そんな風に小鳥に話しかけている自分がなんだか可笑しくて、つい笑ってしまった。
「どうした?」
と殿下が私に訊く。
「少しだけ、楽しいことがあったのです」
あの伯爵令嬢のことを思い出して笑ってしまう。
「そのブローチはどうしたんだ?初めて見るな」
殿下は私の持ち物などに興味が無いと思っていたので驚いた。
「学校で、ある伯爵令嬢を助けたのです。そうしたら、わざわざお礼を言うために会いに来てくれたのです。その時に、この小鳥を預かったのですわ。そうすれば、返してもらう約束ができるからって」
殿下にそう説明しながらも、あの令嬢が私と『また会いたい』と言ってくれた時の嬉しい気持ちがまた溢れてくる。
「そうか……そのブローチは預かっているものなのか」
「はい。可愛らしいですわ」
「小鳥のモチーフの物が好きなのか?」
「このようなものを持ったことはなかったのですが、とても可愛らしいですわ」
「小鳥のモチーフか……」
「猫!猫のモチーフも可愛いかもしれませんね!」
私はつい思いついたことを言ってしまった。
「猫が好きなのか?」
「はい。伯母様の猫がとても可愛かったのです」
もう何年も前のことだけれど、伯母様のお家へ遊びに行ったときに遊んだ猫が可愛かったのだ。
「君の伯母様とは、辺境伯夫人か」
「覚えていてくださっているのですね」
「当たり前だ。妻の親戚のことだ。覚えているに決まってる」
「……妻……」
私はなんだかとても恥ずかしくなって、小鳥のブローチをそっと撫でた。
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