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162.俺だけが何もしてない
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「俺?俺は別にどうもしてないよ?」
イザックはアリシアに答えた。
「そう?にしてはうわの空だったじゃない」
「まぁ、考え事かな……」
「考え事?」
「これから、どうしていこうかな……ってね」
イザックは苦笑いをしてアリシアに言った。
「これからって……寺子屋の講師をやめるってこと?」
「いや、辞めたいわけじゃないよ?けど、親から猶予をもらっているのは1年だからさ、それまでに何かを決めないといけないのかなって」
弟であるアルチュールが後継ぎに決まったとき、親からは1年間は金銭的にも援助を約束されている。
卒業してすぐに、ここフォレールで『寺子屋フジヤマ』の講師になり、食事と住居は用意されており、ある程度の給与も支払われているために、親からの援助金には手を付けずに過ごしている。
自分も何かを始めればいいのか?
でも、何を?
「ここで講師を続けるのは、ダメなの?」
「ダメじゃないけど……」
「けど?」
「それでいいのかと言われると、悩むっていうか……」
悩んでいるのか。本当に。
今の講師生活に満足しているのではないのか。
生徒たちがどんどんと文字を覚え、文章の読み書きができるようになる姿をみるのは楽しい。
その成長に関われていることを嬉しくも思う。
でも、本当にこれでいいのか。
アルチュールとの差は開く一方だ。
「なんで???」
思わずイザックは呟いた。
イザックはここで、アルチュールのことを思いだすとは考えもしなかったからだ。
「何が『なんで???』なの?」
アリシアは困惑しているイザックに訊いた。
「いや……少し、驚くことを思い浮かべたから……びっくりして」
アルチュールは双子でありながら、弟という立場から家を継ぐことに貪欲な態度ではなかった。
と、イザックは思っていた。
けれど、婚約者候補の女性に対しては誠実に接し、将来を見据えて友人たちを商会を作り、実業科への編入手続きも済ませていた。
対して自分は……
家督争いに敗れ、気が付いたときには、何も無かった。
唯一、友人関係を続けてくれたライアンに誘われここボーヴォ領に来て、縁あってここで講師をしている。
ジャン、アンドレ、宗長、リナそしてアリシアと、気が置けない友人もできた。
貴族の世界ではありえなかった、裏表のない関係。弱さも見せることのできる関係。
王都で疲れきっていたイザックには、初めて心を開くことのできる人たちに出会った。
けれど
ジャンもアンドレもリナも、色々なことを手掛けている。
ボーヴォ領の開発にも関わり、自らどんどんとアイディアを出し、動いている。
自由な発想を持ち、自分でできないことは誰かの協力を仰ぎ、形にしていく。
先日訪れた辺境伯領でも、セットアップというタイプの服を提案して、ジャンとアリシアが商品化を進めている。
俺だけが……何も、していない……
イザックはアリシアに答えた。
「そう?にしてはうわの空だったじゃない」
「まぁ、考え事かな……」
「考え事?」
「これから、どうしていこうかな……ってね」
イザックは苦笑いをしてアリシアに言った。
「これからって……寺子屋の講師をやめるってこと?」
「いや、辞めたいわけじゃないよ?けど、親から猶予をもらっているのは1年だからさ、それまでに何かを決めないといけないのかなって」
弟であるアルチュールが後継ぎに決まったとき、親からは1年間は金銭的にも援助を約束されている。
卒業してすぐに、ここフォレールで『寺子屋フジヤマ』の講師になり、食事と住居は用意されており、ある程度の給与も支払われているために、親からの援助金には手を付けずに過ごしている。
自分も何かを始めればいいのか?
でも、何を?
「ここで講師を続けるのは、ダメなの?」
「ダメじゃないけど……」
「けど?」
「それでいいのかと言われると、悩むっていうか……」
悩んでいるのか。本当に。
今の講師生活に満足しているのではないのか。
生徒たちがどんどんと文字を覚え、文章の読み書きができるようになる姿をみるのは楽しい。
その成長に関われていることを嬉しくも思う。
でも、本当にこれでいいのか。
アルチュールとの差は開く一方だ。
「なんで???」
思わずイザックは呟いた。
イザックはここで、アルチュールのことを思いだすとは考えもしなかったからだ。
「何が『なんで???』なの?」
アリシアは困惑しているイザックに訊いた。
「いや……少し、驚くことを思い浮かべたから……びっくりして」
アルチュールは双子でありながら、弟という立場から家を継ぐことに貪欲な態度ではなかった。
と、イザックは思っていた。
けれど、婚約者候補の女性に対しては誠実に接し、将来を見据えて友人たちを商会を作り、実業科への編入手続きも済ませていた。
対して自分は……
家督争いに敗れ、気が付いたときには、何も無かった。
唯一、友人関係を続けてくれたライアンに誘われここボーヴォ領に来て、縁あってここで講師をしている。
ジャン、アンドレ、宗長、リナそしてアリシアと、気が置けない友人もできた。
貴族の世界ではありえなかった、裏表のない関係。弱さも見せることのできる関係。
王都で疲れきっていたイザックには、初めて心を開くことのできる人たちに出会った。
けれど
ジャンもアンドレもリナも、色々なことを手掛けている。
ボーヴォ領の開発にも関わり、自らどんどんとアイディアを出し、動いている。
自由な発想を持ち、自分でできないことは誰かの協力を仰ぎ、形にしていく。
先日訪れた辺境伯領でも、セットアップというタイプの服を提案して、ジャンとアリシアが商品化を進めている。
俺だけが……何も、していない……
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