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173.シンデレラの作者は
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「シンデレラとは?」
「子ども向けの物語らしいんだ」
「知らないなぁ」
マルタンは手を顎に当て、首を傾げた。
「父さんも知らない?イザックさんもアリシアさんも知らないって言ってた」
「そうか。それで?」
アンドレは、大きく息を吸って気持ちを落ち着かせた。
「リナが知ってるこの話は……何だと思う?」
アンドレはマルタンを見つめた。
父の表情の小さな変化も見逃さないように。
父は貴族の出身だから、感情を表に出さない訓練もしている。
けれど、何か小さな変化があるかもしれない。
「何だと思う……とは?」
「どうして貴族の人すら知らない物語をリナが知っているのか?ということなんだ」
「そうか」
マルタンはグラスに水を注いで飲み干した。
「アンドレ、お前はどう思うんだ?」
「僕は……ムネナガさんから教えてもらったのかとも思ったんだ。けど……そうじゃない気もするんだ」
宗長がリナに物語を細部まで詳しく教えるとは思えない。
「リナが自分で考えたとか」
「なるほど」
でも、リナが自分で考えた話ならば、改めてイザックに書いてもらう必要はないのではないだろうか。
「話はリナが考えたとして、それを小説に書こうとすると、それはまた別の技術がいるからな。文学的な表現も必要となってくる。それはリナには無いものだろうし、対して学園を卒業したイザックは知識も豊富だろうから、書けるだろうな」
マルタンは言った。
「そうなのかな」
「お前だって、馬の世話もしてきたし、馬の性格もよく分かっていても、『じゃぁ、馬に乗れ』と言われたら難しいだろう?」
「乗れなくはないけど……馬丁みたいにはできないかな」
「リナだって、面白い話を考えついても、自分の技術じゃ小説に書き起こすことができなかったんじゃないのか?」
「そうか…も…」
マルタンに言われると、そういう気もしてくる。
「血相変えて来たから、何があったのかと思ったぞ」
マルタンは笑った。
「うん。なんか、急にリナが知らない人みないに感じたんだよ。どうしてリナがこんな話を知っているんだろう?って思ったら。まるで僕が一緒に育ってきたリナとは別人みたいに感じたんだ」
「一緒に育ってきたとしても、相手のすべてを知っているわけじゃない。お前だってそうだろ?きっとリナの知らないアンドレがいる。それは、アンドレがリナと離れている間にちゃんと成長しているからだろう?商会の手伝いもしっかりやっていると報告をうけているぞ」
マルタンに褒められて、アンドレは嬉しかった。
マルタン商会は長男のジャンが跡を継ぐと思われているし、またジャンはそれに相応しく働いている。
アンドレは自分の将来について、ちゃんと考えたことはまだなくて、兄の下で働いていくものだと思っていた。
「それにしても、新しくフォレールを舞台にした小説を書いて、その読者をフォレールに呼び込もうだなんて、相変わらず面白いことを考えるな。フォレールに来てもらって、何をしてもらうつもりなんだ?」
マルタンはアンドレに詳しく説明するように促した。
「主人公がすごした森はここだ!とか?主人公が食べたパンはここで食べられます!とかそういう自分が登場人物になれるような体験をさせようという話になって」
アンドレが答えると、マルタンは笑って
「それは面白そうだな。イザックに大流行するような話をちゃんと書くようにお前からも言っておいた方がいいな」
と言った。
「そうだね。イザックさんに伝えておくよ。みんなに流行小説を書くように言われて、『なんで俺が……』って言ってたから」
アンドレも笑った。
「フォレールが舞台の小説か……」
マルタンが呟いた。
「その前に『シンデレラ』なんだって。村の娯楽にしたいんだってさ。ここには王都みたいに劇場とかないからね」
「娯楽にする?どうやって」
「読み聞かせ?朗読劇?みたいなのを考えているんだって」
「まったく、リナの頭の中はおもちゃ箱みたいに色々なものが詰まっているんだな」
マルタンが感心したようにうなずくと、アンドレも本当にそうだと思った。
「子ども向けの物語らしいんだ」
「知らないなぁ」
マルタンは手を顎に当て、首を傾げた。
「父さんも知らない?イザックさんもアリシアさんも知らないって言ってた」
「そうか。それで?」
アンドレは、大きく息を吸って気持ちを落ち着かせた。
「リナが知ってるこの話は……何だと思う?」
アンドレはマルタンを見つめた。
父の表情の小さな変化も見逃さないように。
父は貴族の出身だから、感情を表に出さない訓練もしている。
けれど、何か小さな変化があるかもしれない。
「何だと思う……とは?」
「どうして貴族の人すら知らない物語をリナが知っているのか?ということなんだ」
「そうか」
マルタンはグラスに水を注いで飲み干した。
「アンドレ、お前はどう思うんだ?」
「僕は……ムネナガさんから教えてもらったのかとも思ったんだ。けど……そうじゃない気もするんだ」
宗長がリナに物語を細部まで詳しく教えるとは思えない。
「リナが自分で考えたとか」
「なるほど」
でも、リナが自分で考えた話ならば、改めてイザックに書いてもらう必要はないのではないだろうか。
「話はリナが考えたとして、それを小説に書こうとすると、それはまた別の技術がいるからな。文学的な表現も必要となってくる。それはリナには無いものだろうし、対して学園を卒業したイザックは知識も豊富だろうから、書けるだろうな」
マルタンは言った。
「そうなのかな」
「お前だって、馬の世話もしてきたし、馬の性格もよく分かっていても、『じゃぁ、馬に乗れ』と言われたら難しいだろう?」
「乗れなくはないけど……馬丁みたいにはできないかな」
「リナだって、面白い話を考えついても、自分の技術じゃ小説に書き起こすことができなかったんじゃないのか?」
「そうか…も…」
マルタンに言われると、そういう気もしてくる。
「血相変えて来たから、何があったのかと思ったぞ」
マルタンは笑った。
「うん。なんか、急にリナが知らない人みないに感じたんだよ。どうしてリナがこんな話を知っているんだろう?って思ったら。まるで僕が一緒に育ってきたリナとは別人みたいに感じたんだ」
「一緒に育ってきたとしても、相手のすべてを知っているわけじゃない。お前だってそうだろ?きっとリナの知らないアンドレがいる。それは、アンドレがリナと離れている間にちゃんと成長しているからだろう?商会の手伝いもしっかりやっていると報告をうけているぞ」
マルタンに褒められて、アンドレは嬉しかった。
マルタン商会は長男のジャンが跡を継ぐと思われているし、またジャンはそれに相応しく働いている。
アンドレは自分の将来について、ちゃんと考えたことはまだなくて、兄の下で働いていくものだと思っていた。
「それにしても、新しくフォレールを舞台にした小説を書いて、その読者をフォレールに呼び込もうだなんて、相変わらず面白いことを考えるな。フォレールに来てもらって、何をしてもらうつもりなんだ?」
マルタンはアンドレに詳しく説明するように促した。
「主人公がすごした森はここだ!とか?主人公が食べたパンはここで食べられます!とかそういう自分が登場人物になれるような体験をさせようという話になって」
アンドレが答えると、マルタンは笑って
「それは面白そうだな。イザックに大流行するような話をちゃんと書くようにお前からも言っておいた方がいいな」
と言った。
「そうだね。イザックさんに伝えておくよ。みんなに流行小説を書くように言われて、『なんで俺が……』って言ってたから」
アンドレも笑った。
「フォレールが舞台の小説か……」
マルタンが呟いた。
「その前に『シンデレラ』なんだって。村の娯楽にしたいんだってさ。ここには王都みたいに劇場とかないからね」
「娯楽にする?どうやって」
「読み聞かせ?朗読劇?みたいなのを考えているんだって」
「まったく、リナの頭の中はおもちゃ箱みたいに色々なものが詰まっているんだな」
マルタンが感心したようにうなずくと、アンドレも本当にそうだと思った。
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