『空への遺言』

しろくまん

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空への遺言

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私が本当に死ぬ前には声をかけたい人が何人かいます。
何れも大切な人たちです。

例えば親兄弟。

これは仲がいいから、という部分もありますが、伝えたい…よりは伝えなくちゃ、なんだと思います。


例えば元恋人。

自分で自分を卑下するのは褒められたことじゃないとわかってます。

でも、こんな自分と付き合ってくれた、という言葉を使いたいのです。

そこにあるのは感謝と申し訳なさなのかもしれません。
ただただ、ありがとうと伝えたいんだと思います。


例えば友達。

いろんなタイプの友達がいます。

同い年で仲良くしてた人たち、人生の半分以上付き合いがある人たち、どっかの飲み屋であったらいつも乾杯する人たち、一緒に楽器を打ち鳴らした人たち、幼なじみだったり、親友だったり。

伝えたいことが多過ぎて、支離滅裂になってしまいそうです。


例えば好きだった人。

一瞬だけ自分たちの道が交わって、ちょっとした旅行だったり、デートだったり、ふとしたラインのやりとり声を聞くだけでほっこりしたり、嬉しかったり。

ダメなんだなってわかったら悲しかったり。
自分の中に新しい感情や起伏を思い起こさせてくれたあなた達。
甘酸っぱいありがとうを一言だけ。


例えばもう会えなくなった人たち。

私よりも先に居なくなってしまった人たち。
仕方がない、って言葉で自分を騙してはみたものの、なんでなんだろってやり場のない気持ちがいつまでも浮かんでました。

この後会えたら直接気持ちをぶつけてやろうかって思うくらいに。

動かなくなって、触るとひんやりしていて。
そのくせ穏やかな顔をして、みんなに見られて。
我関せずみたいな態度に思えて、苛立ちと絶望をうっすら浮かべた顔で、あなたを見ていました。

周りからはすすり泣きの声が聞こえます。

私の目にも涙が浮かんできました。

何かが悔しくて、涙がでたのです。

何かが寂しくて、涙がでたのです。

何かが切なくて、涙がでたのです。

何かがあふれて、涙がでたのです。

見送りをする瞬間、思いを言霊に乗せました。
誰にも聞こえないよう、そっと…そっと小さな声で。

口をついてでた、その言葉はきっと心のかけらでした。

今でも思い出せるような、思い出せないような感覚です。

その言葉が本当に届いていたのか、問いかけようと思います。


私が死ぬ前に、これらを全て伝えられたのなら、もしかしたら後悔はないのかもしれません。


でも、伝えられないのかもしれません。


だからあなたにだけは聞いて欲しかった。

もしあなたが聞いてくれていたのなら、きっといつか風に乗せて、かの人たちへ届けてくれると思ったからです。

どうかお願いしますね。

今雲ひとつない、真っ青な空。

邪魔するものはないでしょうから。

私が死ぬ前には、みんなに伝えてくださいね。

〈了〉
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