40 / 42
商店模範
38
しおりを挟む
ベローチはフランダース傭兵団の拠点である酒場に着くと、一目散にステージ横の席に駆け寄り、パトラッシュの姿を探す。
その様子を見ていた団員が、ベローチに近寄り声をかける。
「誰か探してんのか?」
そう声をかけてきたのは、副団長のネロであった。
ベローチは、コクコクと頷き、団長パトラッシュの行き先を確認する。
「タイミングが悪いな。
兄貴なら出かけちまったぜ。
伝言なら聞いといてやるが…。
その様子だと、急用なんだろ?
例えば、命を狙われてる…とか。」
そうネロが言い終わると、ベローチは背後から何かが近づいてくる気配を感じ取った。
ベローチは背後からの攻撃をサッと躱すと、懐の短剣を引き抜き、短剣の刃を襲ってきた刺客の首筋に軽くあてる。
「まさか、この刺客は フランダース傭兵団の団員なのか。」
「まさか。
俺らなら、お前さんを3回は殺してるね。」
ネロの言葉を聞きながら、ベローチは刺客に尋問するため、そのまま刺客の膝を折り、その場にねじ伏せる。
刺客は暫く逃げようと抵抗していたが、フランダース傭兵団がベローチの味方であると感じ取ったのか、隠し持った毒針で自害した。
刺客の自害を確認したベローチは、立ち上がりネロに声をかける。
「お騒がせしてしまい申し訳ない。
今回、パトラッシュ団長に会いに来たのは、賊の討伐依頼を受けてもらおうと思いやってきた。」
ネロは堂々と話すベローチの話を聞きながら、自害した刺客のマスクを剥ぎ、顔を確認している。
顔を確認し終わったネロは、見上げるようにベローチに視線を送り、団長パトラッシュの行き先を伝える。
「そうか、仕事の依頼か。
なら、エルメロイの酒場に向かうといい。」
「ありがとう。」
ベローチが礼をいい、その場を立ち去ろうとしたとき、ネロがベローチを呼び止める。
「護衛をつけてやるよ。」
「いや、結構。」
「気にすんなサービスだよ。」
ベローチは、交渉に不利になる貸しを作るのを嫌がったのか、ネロの申し出を素直に聞き入れきれていないようだ。
そんなベローチに、ネロは付け加えるように話し始める。
「外にも何人か刺客がいるみてーだからな。
客から報酬をもらう前に死なれたら困るしな。
なんたって、大きな仕事なんだろ。ウィンター商店店主ベローチさんよ。」
ネロの言葉にベローチは軽く頷き、ネロの申し出を受けることにした。
ネロは店の入り口付近に座っていた、マントを羽織っている赤髪の少女を呼び寄せる。
赤髪の少女はベローチにお辞儀をし、自己紹介を始めた。
「はじめまして。
わたしは、アレン。
アレン・ロンリアスです。」
自己紹介を終えた幼さ残る少女が護衛と聞き、ベローチはバカにするように微笑みかけ、ネロに丁寧に断りをいれる。
すると、ネロはアレンに指示をだした。
「おいおい、アレンは最強のアマゾネスだぜ。
アレン、ベローチの旦那に強さを見せつけてやれ!」
アレンと名乗った少女は ネロの言葉を聞き終わるや否や、羽織っていたマントをベローチに投げつけ、視界を奪う。
ベローチがマントを払うと同時に、筋骨隆々のビキニアーマーを装備した少女が、ベローチを押し倒し、身動きできないように自由を奪う。
「まいったね。」
「だろ。」
ネロがアレンに合図を送ると、アレンはベローチを解放し、その筋骨隆々の筋肉を縮小させていく。
「スキルなのか?」
「ああ、アレンはスキル持ちだからな。
どうだい、雇用費を安くしとくぞ。」
「・・・サービスだったんじゃないのか。」
「サービス分は断っただろ。」
豪快に笑うネロを見上げながら、立ち上がろうとするベローチにアレンが手を貸す。
「華奢な方ですね。
私が守らなければ、命を落とすでしょうね。」
ベローチは苦笑いしながら、ネロの商談に快諾した。
アレンという護衛をつけて、フランダース傭兵団の拠点を後にしたベローチは、団長パトラッシュの居るエルメロイの酒場へと向かった。
拠点を出た直後、数名の刺客に襲われたのだが、アレンが即座対応し、わずか数秒の間に撃退した為、とくに大きな騒ぎになることはなかった。
「ね。
私を雇ってよかったでしょ。」
「そうだな。
君を雇って正解だったよ。」
無事にエルメロイの酒場にたどり着いたベローチは、改めて、フランダース傭兵団と契約することとなった。
エルメロイの酒場を出て、アジトへと帰る帰り道、ベローチは一人考え事をしていた。
(移動販売店が確立すれば、ハロルドを引き離すことができるはずだ。
だが、まだまだ安心は出来ねーな。)
難しい顔をしているベローチに、アレンが声をかける。
「何か悪いことを考えているようですね。
そんな顔をしていては、お客さんが怖がりますよ。」
アレンの言葉に、ベローチは反論する。
「俺が店に立つことはないからな。
笑顔を見せることはあっても、商談の場だけでいい。
商人にとって一番大事なことは、いかに上手く立ち回るかだからな。」
「そうなんですね。
商人とは寂しい職業なんですね。
商談の場、誰も心から笑えていない。」
「・・・。」
「ベローチさん、素敵な笑顔をもっているのに、
笑顔のベローチさんが可哀想ですね。」
「何が言いたいか分からないが、心に留めておくとしよう。」
こうして、二人はベローチのアジトへと帰還していく。
ベローチは何か思い当たることがあったのだろうか、アレンの言葉が何度も頭の中で繰り返される。
その様子を見ていた団員が、ベローチに近寄り声をかける。
「誰か探してんのか?」
そう声をかけてきたのは、副団長のネロであった。
ベローチは、コクコクと頷き、団長パトラッシュの行き先を確認する。
「タイミングが悪いな。
兄貴なら出かけちまったぜ。
伝言なら聞いといてやるが…。
その様子だと、急用なんだろ?
例えば、命を狙われてる…とか。」
そうネロが言い終わると、ベローチは背後から何かが近づいてくる気配を感じ取った。
ベローチは背後からの攻撃をサッと躱すと、懐の短剣を引き抜き、短剣の刃を襲ってきた刺客の首筋に軽くあてる。
「まさか、この刺客は フランダース傭兵団の団員なのか。」
「まさか。
俺らなら、お前さんを3回は殺してるね。」
ネロの言葉を聞きながら、ベローチは刺客に尋問するため、そのまま刺客の膝を折り、その場にねじ伏せる。
刺客は暫く逃げようと抵抗していたが、フランダース傭兵団がベローチの味方であると感じ取ったのか、隠し持った毒針で自害した。
刺客の自害を確認したベローチは、立ち上がりネロに声をかける。
「お騒がせしてしまい申し訳ない。
今回、パトラッシュ団長に会いに来たのは、賊の討伐依頼を受けてもらおうと思いやってきた。」
ネロは堂々と話すベローチの話を聞きながら、自害した刺客のマスクを剥ぎ、顔を確認している。
顔を確認し終わったネロは、見上げるようにベローチに視線を送り、団長パトラッシュの行き先を伝える。
「そうか、仕事の依頼か。
なら、エルメロイの酒場に向かうといい。」
「ありがとう。」
ベローチが礼をいい、その場を立ち去ろうとしたとき、ネロがベローチを呼び止める。
「護衛をつけてやるよ。」
「いや、結構。」
「気にすんなサービスだよ。」
ベローチは、交渉に不利になる貸しを作るのを嫌がったのか、ネロの申し出を素直に聞き入れきれていないようだ。
そんなベローチに、ネロは付け加えるように話し始める。
「外にも何人か刺客がいるみてーだからな。
客から報酬をもらう前に死なれたら困るしな。
なんたって、大きな仕事なんだろ。ウィンター商店店主ベローチさんよ。」
ネロの言葉にベローチは軽く頷き、ネロの申し出を受けることにした。
ネロは店の入り口付近に座っていた、マントを羽織っている赤髪の少女を呼び寄せる。
赤髪の少女はベローチにお辞儀をし、自己紹介を始めた。
「はじめまして。
わたしは、アレン。
アレン・ロンリアスです。」
自己紹介を終えた幼さ残る少女が護衛と聞き、ベローチはバカにするように微笑みかけ、ネロに丁寧に断りをいれる。
すると、ネロはアレンに指示をだした。
「おいおい、アレンは最強のアマゾネスだぜ。
アレン、ベローチの旦那に強さを見せつけてやれ!」
アレンと名乗った少女は ネロの言葉を聞き終わるや否や、羽織っていたマントをベローチに投げつけ、視界を奪う。
ベローチがマントを払うと同時に、筋骨隆々のビキニアーマーを装備した少女が、ベローチを押し倒し、身動きできないように自由を奪う。
「まいったね。」
「だろ。」
ネロがアレンに合図を送ると、アレンはベローチを解放し、その筋骨隆々の筋肉を縮小させていく。
「スキルなのか?」
「ああ、アレンはスキル持ちだからな。
どうだい、雇用費を安くしとくぞ。」
「・・・サービスだったんじゃないのか。」
「サービス分は断っただろ。」
豪快に笑うネロを見上げながら、立ち上がろうとするベローチにアレンが手を貸す。
「華奢な方ですね。
私が守らなければ、命を落とすでしょうね。」
ベローチは苦笑いしながら、ネロの商談に快諾した。
アレンという護衛をつけて、フランダース傭兵団の拠点を後にしたベローチは、団長パトラッシュの居るエルメロイの酒場へと向かった。
拠点を出た直後、数名の刺客に襲われたのだが、アレンが即座対応し、わずか数秒の間に撃退した為、とくに大きな騒ぎになることはなかった。
「ね。
私を雇ってよかったでしょ。」
「そうだな。
君を雇って正解だったよ。」
無事にエルメロイの酒場にたどり着いたベローチは、改めて、フランダース傭兵団と契約することとなった。
エルメロイの酒場を出て、アジトへと帰る帰り道、ベローチは一人考え事をしていた。
(移動販売店が確立すれば、ハロルドを引き離すことができるはずだ。
だが、まだまだ安心は出来ねーな。)
難しい顔をしているベローチに、アレンが声をかける。
「何か悪いことを考えているようですね。
そんな顔をしていては、お客さんが怖がりますよ。」
アレンの言葉に、ベローチは反論する。
「俺が店に立つことはないからな。
笑顔を見せることはあっても、商談の場だけでいい。
商人にとって一番大事なことは、いかに上手く立ち回るかだからな。」
「そうなんですね。
商人とは寂しい職業なんですね。
商談の場、誰も心から笑えていない。」
「・・・。」
「ベローチさん、素敵な笑顔をもっているのに、
笑顔のベローチさんが可哀想ですね。」
「何が言いたいか分からないが、心に留めておくとしよう。」
こうして、二人はベローチのアジトへと帰還していく。
ベローチは何か思い当たることがあったのだろうか、アレンの言葉が何度も頭の中で繰り返される。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる