26 / 46
ケイト編
~新章・十七節~ 従順な天使
しおりを挟む
~ゲート付近~
ゲート付近では、混乱が起きていた。
ドラゴンの灼熱の呼吸に、肺が焼かれ、窒息死するもの。
巨大な咆哮を間近で聞き、耳から血を流し動けないもの。
ドラゴンの進行を止めようと、必死に攻撃を続けるもの。
その場で泣き崩れ、身動き一つ取れないもの。
まさに、地獄の扉とそれを守る門番のような構図になっている。
バベルが咆哮を聞き、駆けつける。
バベル「落ち着け!いったん、司令室まで後退するんだ!敵はそこまで入ってこれない!」
バベル「動けない者を担いででも連れていけ!」
そういうとバベルは、迎撃用のガトリングガンでドラゴンを攻撃し始める。
大型のドラゴンには、あまり効いていないようだが、注意を引くことはできているようだ。
バベルの行動に、多くの兵士が気を取り戻す。
アニキ「おい!どこに逃げても一緒だよ!」
司令室に引き上げようとする兵士を、アニキが止める。
アニキの後ろには、どこから連れてきたのか、小型のドラゴンを引き連れている。
アニキ「お前ら、少しは役に立てよ。」
そういうと、集団の近くに、煙を出す弾を打ち込んだ!
バベルは本能的に、とっさに大きく息を吸う。
アニキとタンクトップは、ガスマスクを着用する。
そのとき、ガスを少し吸い込んだのか、頭の中が朦朧としていく。
開けている目は、涙で視界が悪くなる。
涙を拭い、周囲を確認する。
さっきまで、一緒に戦っていた兵士たちのドラゴン化が止まらない。
アニキが引き連れていたドラゴンは、宿舎内に残っていた人間だったものなのか?
急速に、ドラゴン化が進んだ兵士たちは、大型のドラゴンや、アニキ達に襲い掛かる。
アニキ達に近づくドラゴン化の兵士は、二人の放つ弾丸で傷ついていく。
まだ意識が多少あるのか、野生のドラゴンと違い、傷つくのを恐れているようにも見える。
アニキが口を開く
アニキ「扉の化け物を倒したら、人間に戻してやるよ!」
その言葉を聞くと、ドラゴン化した兵士たちは、一斉に大型のドラゴンに攻撃をしかける。
やはり、まだ人としての意識があるようだ。
しかし、力の差は歴然で、ことごとく、返り討ちにあう。
ただ、大型のドラゴンも顔にまとわりつくドラゴン兵を振り払うように、顔をシェルターから出す。
タンクトップがバベルに近づいてくる。
タンクトップ「ごめんね。バベルちゃん。マスク、2つしかないの。それに、もうガスを吸ってるみたいだから、助からないから。私に殺してほしい?それとも、自分で死ぬ?」
そういって、銃口を向ける。
バベルは、朦朧とする意識の中、銃を払う。
タンクトップ「そう、残念ね。バベルちゃんがドラゴンになって出てきたら、殺してあげるからね。」
そういうと、アニキと共に、シェルターの扉を出て行った。
バベルは、意識を失いそうになりながらも、司令室へと逃げ込む。
司令室の扉を閉めると、そのまま気を失った。
どれだけ気を失っていたんだろうか、バベルは意識を取り戻した。
まだ、口や手足の痺れがある。
痺れがとれるまで、しばらく休む。
司令室の外は静かなものだ。
痺れが取れ、大きく息を吸い、司令室から出る。
外に向かう途中、武器を拾い、外に出る。
~シェルター外~
外に出ると、外は完全に日が落ちている。
木々が倒れ、その跡は、西の方に続いているようだが、皆は大丈夫だろうか。
バベルは近くに隠してあったバイクの元に向かう。
バイクは、倒れ傷は入っていたが、問題なくエンジンはかかる。
バベルは周囲を警戒し、安全を確認すると、西へ向かう。
~1時間後~
バベルは、集合場所のヒマワリ畑にたどり着いた。
集合場所までドラゴンが来た形跡もなければ、戦闘の後もない。
バベルは、一安心し、近くの飲料工場で休むことにした。
~飲料工場~
工場内に入ると、奥に人影がある。
バベルは、警戒して、銃を構える。
男の声「ちょ、ちょっと!待ってください!アムロです!アムロ!」
バベルは、気づいたが、顔を見るまで警戒する。
アフロ「いや、すいません。アフロです。アフロ。」
そういって奥の暗がりから、アフロが出てくる。
バベル「どうしてここに?」
アフロは、バベルの横にきて、話し始める。
アフロ「実は俺、短期出張で、こっちに来てたんですよ。で、実家で親と暮らしてたんですけど、母さんが足が悪いから・・・。その心配で・・・。
それで、北に向かうことにしたんですよ。で、せっかくだから、バベルさんに挨拶していこうと思って。みんなに言って別れたんですよ。クルマヤくんは、分かってくれましたが・・・。他の人は・・・。」
バベル「なんて言ったの?」
アフロ「ごめんよ、まだ僕には帰れるところがあるんだ。こんなうれしいことはない。って。」
バベル「あ、ああ、そうなんだ。実家は海を渡る?」
アフロ「いえ、あの、そこまでは。・・・話きいてました?」
バベル「ごめん。何かのネタでしょ。」
アフロ「そうです。なんかすみません。」
バベル「じゃあ、明日の夜明けに出発だ。免許コンプリートなら、バイクの運転もできるでしょ?」
アフロ「バベルさん・・・。やるとは言えない。けど、やるしかないんだ!」
バベルは、横になった。
バベル「アフロも早く寝ないと、夜明けに移動は疲れるよ。」
アフロは、トイレにいった隙に、置いていかれたんじゃないのか?
と、バベルは深読みした。
アフロは、電気の消えた自動販売機前に置かれた段ボールから、ジュースを持ってきて、バベルに渡す。
アフロ「おごりです。」
バベルは、ぬるい炭酸飲料を渡された。
バベルは確信した。
~翌朝~
すでに太陽は空高く上ってしまっている。
バベルもアフロも寝過ごした。
二人は、バベルの持っていた携帯食料で食事を済ませ、アフロの運転で、北へ向かうことになる。
アフロはハンドルを持つと性格がよくわかる。
バベル「もうちょっと、スピード出してもいいんじゃない?」
アフロ「死にたくないから、やっているだけさ!」
バベル「アフロ、・・・疲れたら、運転を変わるよ。」
~病院跡研究所~
アフロは運転が好きなんだろうか?
二人が、病院跡研究所にたどり着いたのは、その日の深夜過ぎだった。
二人は、研究所内で眠れそうな場所を探し、そのまま寝てしまった。
~朝~
目が覚めると、バベルは異変に気付いた。
アフロ「バベルさん、どうしたんですか?」
バベル「いや、ここの建物・・・。」
アフロ「ずいぶん前から廃墟になってる病院ですよね。」
アフロが廃墟になってると思うのも仕方ない。研究所内の機器類は全て撤去されていた。
二人は、パオの家に移動する!
パオの家は、玄関が壊され、扉が開いた状態になっていて、エレベーターも破壊されていた。
パオ「バベルさんの実家とかですか?」
バベル「まあ、そんなもんだ。」
バベルとアフロは、エレベーターを降りるために、ロープになりそうな物を探す。
バベルは1階と外。アフロは2階に手分けして探すことになった。
しばらく探すと、外に倉庫を見つける。
倉庫の中には、少し細めだが、十分な長さのロープもある。
アフロ「バベル兄さーん!!!!」
2階を探索していたアフロが慌てて駆け下りてくる!
アフロ「バベル兄さん!この美少女は、妹さんですか!」
アフロの手には、一冊のアルバムがある。
写真を見ると、そこには、パオらしき人物の写真がある。
パオの成長を写したものだろうが、写真が古い。
後半は、姉の写真に変わっているようだ。
どの写真も、一人で写っている、よほど溺愛されていた姉妹なのだろう。
冷静に回答するバベル、肩にはロープをかけている。
バベル「いや、新天地を任せている仲間だ。」
アフロの表情が変わる!
アフロ「なんですと!新天地!!!・・・新天地に行けば良かった・・・・・・。」
そういって振り返る、アフロの後ろポケットは、やたら膨らんでいた・・・。
バベルは、地下研究所に移動する。
アフロには、罰として上でロープを見張る役目を任せた。
ロープは、バイクに結んであり、エレベーターの滑車を経由して下に下ろした。
これで、上りは楽に行けるだろう。
ちなみに、アフロは、最後まで包帯用の布にするつもりだったと弁解していたのだが、さすがに無理だろう。
地下に降りたバベルは、倉庫にあった、ライトを点灯する。
地下研究所も荒らされている。
持ち出せるものは全て持ち出してあるようだ。
バベルは、ライトの光に反射する、宙を舞う細かい埃の動きを注視した。
埃が、一定方向に流れている。
その方向をライトで追う。
先には、研究室の隅に作られた1畳ほどの休息スペース。
その横には、本棚を見つける。本棚の一番上と一番下の段は綺麗な彫刻が施してある観音開きになっている。本棚に本は入っておらず、高そうな洋酒が並んでいた。
埃は、本棚の後ろに吸い込まれていく。
しかし、本棚は重厚な造りで、倒れないように、床と天井に固定されている為、動かせそうにない。
ふと、休息スペースに置かれた読書用のインテリアライトが視界に入る。
インテリアライトは、天秤のように左右に分かれた先に、明かりが灯るデザインだ。
ライトのON/OFFは、土台のスイッチを回すようになっている。
バベルが気づいたのは、そのライトの分かれ目の部分、その一部だけが、すこし変色している。
バベルは、変色してる部分を調べた。
どうやら、変色している部分だけ、回せるみたいだ。
バベルが、その部分を回すと、横の本棚から、何かが開くような音がする。
バベル「あれ?なにか変わったのかな?」
バベルは、本棚を動かしてみるが、やはり動かない・・・。
まさかと思い、本棚の足元のに取り付けられていた、観音開きの戸を開ける。
40cm四方の観音開きの戸を開くと、空になっていて奥が通路になっている。
バベルは、ライトで中を照らす。
奥は広そうだったので、そのまま隠し通路?をくぐりぬける。
かなり狭い。パオの家の思い出は狭い!で確定した。
~隠し研究所~
奥に行くと、表の研究所より広い研究スペースがある。
パオも奥のスペースに入ることがなかったのだろうか、埃の積もり方が尋常じゃない。
もう2~3年は放置されているような積もり方だ。
その研究スペースには培養液だろうか、大きな円柱の水槽がある。
中には、一糸まとわぬ女性が、眠るように入っている。
その女性は、先ほどアルバムでみた、パオの姉のようだ。
ふと、机の上の書類が目に留まる。
≪ Obedient Angel Program ≫
我が最愛の一人娘、レイアに捧げる。
バベルは、見てはいけないものを見てしまったようだ。
バベル「あの写真・・・。」
この部屋では、OAPの資料以外見つけることはできなかった。
バベルは、部屋を出ることにした。
ドン!ドン!ドン!
バベルが部屋を出ようとした時、背後で音がする!
先ほどの女性が、水槽の内側から、必死にガラスを叩き続けている。
バベルは、水槽に近寄った。
中の女性は、必死にガラスをたたき続ける!
バベルは、日本刀を抜き、切る!とジェスチャーで伝える。
中の女性も笑顔で頷き、水底に屈むように縮こまった。
バベルは、日本刀を鞘に納め、集中する。
キーーーーン!
甲高い音が響き渡る。
ザッパーーーーン!
水槽の中身が流れ出す。
ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!
肺に入った水を大量に吐き出す女性。
女性「・・・助けてくれて、ありがとうございます。」
バベル「君は・・・。レイアさん?」
女性「はい。私を、助けに来てくれたの?」
女性の目から涙がこぼれている・・・。
バベルは状況が理解できなかった。
とりあえず、自分の上着をレイアに着せた。
バベル「レイアさん、外に出よっか?」
レイア「はい。お願いします。」
そういうと立ち上がろうとするが、体は細く、上手くたつこともできそうにない。
バベルは、彼女を抱きかかえる。
彼女は、とても軽く、抱いているのも忘れそうになるくらいだ。
バベル「とにかく、ここを出よう。」
バベルは、彼女を連れて、地下研究所まで引き返した。観音扉を通るのが苦労したのは言うまでもないだろう・・・。
~地下研究所~
壊れたエレベーターの前に着く。
バベル「おーい!アフロー!」
アフロ「何ですかー!」
バベル「新しい下着や服を落としてくれー!」
アフロ「分かりましたー!バベルさんも好きなんですねー!」
アフロが階段を駆け上がる音が聞こえる。
しばらくすると、上からバックに入った服が落ちてきた。
アフロ「バベルさーん!いま落としましたー!」
バベルはバックをレイアに渡す。
レイアは、服を着ようとするが、力が入らないのか、上手くできない。
バベルはレイアを手伝ってあげた。
レイア「あの、何から何まで、ありがとうございます。」
バベル「気にしなくていいよ。・・・でも、」
アフロの選んだ服は、夏服なのか、どれも薄着の物が多い。
バベル「アフロー!冬用の服が欲しいー!」
アフロ「オッケー牧場でーす!そういう指向なんですねー!」
また、しばらくすると、ビニール袋に入った服が落ちてきた。
バベルは、レイアに上着を着せる。
毛皮のモコモコが、見ているだけでも暑そうな感じの服だが、それでも細身の彼女は、寒そうに身を縮めている。
服を着終わると、バベルは最後に、地下研究室の腕時計を彼女の腕にはめる。
バベル「38、適合者みたいだ。」
不思議そうに見つめるレイアの顔は、パオによく似ている。
バベル「大丈夫、安全な場所まで連れていくよ。」
そういって、レイアと握手をする。
うれしそうに、微笑むレイア。
パオの元に連れて行っても大丈夫なんだろうか?問題にならないかな?
いろんな疑問もあったが、レイアが疲れているので、とりあえず、移動することにした。
バベルの体にロープを結びつける。レイアは、負担がかからないように、バベルが抱きかかえる。
ロープが、少し喰い込んで痛いだろうが、仕方ない。
バベル「アフロー!なるべく慎重に引き上げてくれー!」
徐々にバベルの体が、徐々に持ち上がる。
~10分後~
さすがに、安全運転にも程があるだろう。
バベルの手が届くところまで上がってきた。
バベルは、左手を伸ばし、最後はアフロに協力した。
1階に上がると、最初の位置から、動かしていないバイクがある。
まさか・・・!!!
ロープの行方を追うと、汗だくのアフロが居る。
バベル「アフロ、バイク使わなかったの?」
アフロは下を向いたまま答える。
アフロ「はぁ、はぁ、いや、パンツ物色してる間に、鍵を落とし・・・。」
アフロは、バベルを見た。その時に、バベルが抱きかかえる美女も視界に入ったのだろう。
アフロ「ふん、ふんん、いや、運動不足だったんで、それで!」
鼻息がうるさい。
レイアは完全に警戒している。
バベル「まあ、とにかく今日はこの家で休もう。レイアの部屋は2階?」
レイア「ごめんなさい。よく覚えてないの。」
アフロ「2階の部屋を使ってください!俺らが、1階で見張りをしてますから!」
不安そうなレイアに、バベルが優しく話す。
バベル「レイア、部屋の前で待機しておくから、何かあったら、音を出してくれ。さっきみたいに、すぐ駆けつけるから。」
レイアは、嬉しそうに微笑む。
バベルは、レイアを部屋に連れていき、約束通り、部屋の扉の前で休むことにした。
シャワーを浴びてさっぱりした、アフロも便乗して部屋の前で寝ている。
アフロ「バベルさん、明日は、俺が着替えを手伝いましょうか?」
この時、いつか、アフロを置いていく!と決心をしたらしい。
~ to be continued
ゲート付近では、混乱が起きていた。
ドラゴンの灼熱の呼吸に、肺が焼かれ、窒息死するもの。
巨大な咆哮を間近で聞き、耳から血を流し動けないもの。
ドラゴンの進行を止めようと、必死に攻撃を続けるもの。
その場で泣き崩れ、身動き一つ取れないもの。
まさに、地獄の扉とそれを守る門番のような構図になっている。
バベルが咆哮を聞き、駆けつける。
バベル「落ち着け!いったん、司令室まで後退するんだ!敵はそこまで入ってこれない!」
バベル「動けない者を担いででも連れていけ!」
そういうとバベルは、迎撃用のガトリングガンでドラゴンを攻撃し始める。
大型のドラゴンには、あまり効いていないようだが、注意を引くことはできているようだ。
バベルの行動に、多くの兵士が気を取り戻す。
アニキ「おい!どこに逃げても一緒だよ!」
司令室に引き上げようとする兵士を、アニキが止める。
アニキの後ろには、どこから連れてきたのか、小型のドラゴンを引き連れている。
アニキ「お前ら、少しは役に立てよ。」
そういうと、集団の近くに、煙を出す弾を打ち込んだ!
バベルは本能的に、とっさに大きく息を吸う。
アニキとタンクトップは、ガスマスクを着用する。
そのとき、ガスを少し吸い込んだのか、頭の中が朦朧としていく。
開けている目は、涙で視界が悪くなる。
涙を拭い、周囲を確認する。
さっきまで、一緒に戦っていた兵士たちのドラゴン化が止まらない。
アニキが引き連れていたドラゴンは、宿舎内に残っていた人間だったものなのか?
急速に、ドラゴン化が進んだ兵士たちは、大型のドラゴンや、アニキ達に襲い掛かる。
アニキ達に近づくドラゴン化の兵士は、二人の放つ弾丸で傷ついていく。
まだ意識が多少あるのか、野生のドラゴンと違い、傷つくのを恐れているようにも見える。
アニキが口を開く
アニキ「扉の化け物を倒したら、人間に戻してやるよ!」
その言葉を聞くと、ドラゴン化した兵士たちは、一斉に大型のドラゴンに攻撃をしかける。
やはり、まだ人としての意識があるようだ。
しかし、力の差は歴然で、ことごとく、返り討ちにあう。
ただ、大型のドラゴンも顔にまとわりつくドラゴン兵を振り払うように、顔をシェルターから出す。
タンクトップがバベルに近づいてくる。
タンクトップ「ごめんね。バベルちゃん。マスク、2つしかないの。それに、もうガスを吸ってるみたいだから、助からないから。私に殺してほしい?それとも、自分で死ぬ?」
そういって、銃口を向ける。
バベルは、朦朧とする意識の中、銃を払う。
タンクトップ「そう、残念ね。バベルちゃんがドラゴンになって出てきたら、殺してあげるからね。」
そういうと、アニキと共に、シェルターの扉を出て行った。
バベルは、意識を失いそうになりながらも、司令室へと逃げ込む。
司令室の扉を閉めると、そのまま気を失った。
どれだけ気を失っていたんだろうか、バベルは意識を取り戻した。
まだ、口や手足の痺れがある。
痺れがとれるまで、しばらく休む。
司令室の外は静かなものだ。
痺れが取れ、大きく息を吸い、司令室から出る。
外に向かう途中、武器を拾い、外に出る。
~シェルター外~
外に出ると、外は完全に日が落ちている。
木々が倒れ、その跡は、西の方に続いているようだが、皆は大丈夫だろうか。
バベルは近くに隠してあったバイクの元に向かう。
バイクは、倒れ傷は入っていたが、問題なくエンジンはかかる。
バベルは周囲を警戒し、安全を確認すると、西へ向かう。
~1時間後~
バベルは、集合場所のヒマワリ畑にたどり着いた。
集合場所までドラゴンが来た形跡もなければ、戦闘の後もない。
バベルは、一安心し、近くの飲料工場で休むことにした。
~飲料工場~
工場内に入ると、奥に人影がある。
バベルは、警戒して、銃を構える。
男の声「ちょ、ちょっと!待ってください!アムロです!アムロ!」
バベルは、気づいたが、顔を見るまで警戒する。
アフロ「いや、すいません。アフロです。アフロ。」
そういって奥の暗がりから、アフロが出てくる。
バベル「どうしてここに?」
アフロは、バベルの横にきて、話し始める。
アフロ「実は俺、短期出張で、こっちに来てたんですよ。で、実家で親と暮らしてたんですけど、母さんが足が悪いから・・・。その心配で・・・。
それで、北に向かうことにしたんですよ。で、せっかくだから、バベルさんに挨拶していこうと思って。みんなに言って別れたんですよ。クルマヤくんは、分かってくれましたが・・・。他の人は・・・。」
バベル「なんて言ったの?」
アフロ「ごめんよ、まだ僕には帰れるところがあるんだ。こんなうれしいことはない。って。」
バベル「あ、ああ、そうなんだ。実家は海を渡る?」
アフロ「いえ、あの、そこまでは。・・・話きいてました?」
バベル「ごめん。何かのネタでしょ。」
アフロ「そうです。なんかすみません。」
バベル「じゃあ、明日の夜明けに出発だ。免許コンプリートなら、バイクの運転もできるでしょ?」
アフロ「バベルさん・・・。やるとは言えない。けど、やるしかないんだ!」
バベルは、横になった。
バベル「アフロも早く寝ないと、夜明けに移動は疲れるよ。」
アフロは、トイレにいった隙に、置いていかれたんじゃないのか?
と、バベルは深読みした。
アフロは、電気の消えた自動販売機前に置かれた段ボールから、ジュースを持ってきて、バベルに渡す。
アフロ「おごりです。」
バベルは、ぬるい炭酸飲料を渡された。
バベルは確信した。
~翌朝~
すでに太陽は空高く上ってしまっている。
バベルもアフロも寝過ごした。
二人は、バベルの持っていた携帯食料で食事を済ませ、アフロの運転で、北へ向かうことになる。
アフロはハンドルを持つと性格がよくわかる。
バベル「もうちょっと、スピード出してもいいんじゃない?」
アフロ「死にたくないから、やっているだけさ!」
バベル「アフロ、・・・疲れたら、運転を変わるよ。」
~病院跡研究所~
アフロは運転が好きなんだろうか?
二人が、病院跡研究所にたどり着いたのは、その日の深夜過ぎだった。
二人は、研究所内で眠れそうな場所を探し、そのまま寝てしまった。
~朝~
目が覚めると、バベルは異変に気付いた。
アフロ「バベルさん、どうしたんですか?」
バベル「いや、ここの建物・・・。」
アフロ「ずいぶん前から廃墟になってる病院ですよね。」
アフロが廃墟になってると思うのも仕方ない。研究所内の機器類は全て撤去されていた。
二人は、パオの家に移動する!
パオの家は、玄関が壊され、扉が開いた状態になっていて、エレベーターも破壊されていた。
パオ「バベルさんの実家とかですか?」
バベル「まあ、そんなもんだ。」
バベルとアフロは、エレベーターを降りるために、ロープになりそうな物を探す。
バベルは1階と外。アフロは2階に手分けして探すことになった。
しばらく探すと、外に倉庫を見つける。
倉庫の中には、少し細めだが、十分な長さのロープもある。
アフロ「バベル兄さーん!!!!」
2階を探索していたアフロが慌てて駆け下りてくる!
アフロ「バベル兄さん!この美少女は、妹さんですか!」
アフロの手には、一冊のアルバムがある。
写真を見ると、そこには、パオらしき人物の写真がある。
パオの成長を写したものだろうが、写真が古い。
後半は、姉の写真に変わっているようだ。
どの写真も、一人で写っている、よほど溺愛されていた姉妹なのだろう。
冷静に回答するバベル、肩にはロープをかけている。
バベル「いや、新天地を任せている仲間だ。」
アフロの表情が変わる!
アフロ「なんですと!新天地!!!・・・新天地に行けば良かった・・・・・・。」
そういって振り返る、アフロの後ろポケットは、やたら膨らんでいた・・・。
バベルは、地下研究所に移動する。
アフロには、罰として上でロープを見張る役目を任せた。
ロープは、バイクに結んであり、エレベーターの滑車を経由して下に下ろした。
これで、上りは楽に行けるだろう。
ちなみに、アフロは、最後まで包帯用の布にするつもりだったと弁解していたのだが、さすがに無理だろう。
地下に降りたバベルは、倉庫にあった、ライトを点灯する。
地下研究所も荒らされている。
持ち出せるものは全て持ち出してあるようだ。
バベルは、ライトの光に反射する、宙を舞う細かい埃の動きを注視した。
埃が、一定方向に流れている。
その方向をライトで追う。
先には、研究室の隅に作られた1畳ほどの休息スペース。
その横には、本棚を見つける。本棚の一番上と一番下の段は綺麗な彫刻が施してある観音開きになっている。本棚に本は入っておらず、高そうな洋酒が並んでいた。
埃は、本棚の後ろに吸い込まれていく。
しかし、本棚は重厚な造りで、倒れないように、床と天井に固定されている為、動かせそうにない。
ふと、休息スペースに置かれた読書用のインテリアライトが視界に入る。
インテリアライトは、天秤のように左右に分かれた先に、明かりが灯るデザインだ。
ライトのON/OFFは、土台のスイッチを回すようになっている。
バベルが気づいたのは、そのライトの分かれ目の部分、その一部だけが、すこし変色している。
バベルは、変色してる部分を調べた。
どうやら、変色している部分だけ、回せるみたいだ。
バベルが、その部分を回すと、横の本棚から、何かが開くような音がする。
バベル「あれ?なにか変わったのかな?」
バベルは、本棚を動かしてみるが、やはり動かない・・・。
まさかと思い、本棚の足元のに取り付けられていた、観音開きの戸を開ける。
40cm四方の観音開きの戸を開くと、空になっていて奥が通路になっている。
バベルは、ライトで中を照らす。
奥は広そうだったので、そのまま隠し通路?をくぐりぬける。
かなり狭い。パオの家の思い出は狭い!で確定した。
~隠し研究所~
奥に行くと、表の研究所より広い研究スペースがある。
パオも奥のスペースに入ることがなかったのだろうか、埃の積もり方が尋常じゃない。
もう2~3年は放置されているような積もり方だ。
その研究スペースには培養液だろうか、大きな円柱の水槽がある。
中には、一糸まとわぬ女性が、眠るように入っている。
その女性は、先ほどアルバムでみた、パオの姉のようだ。
ふと、机の上の書類が目に留まる。
≪ Obedient Angel Program ≫
我が最愛の一人娘、レイアに捧げる。
バベルは、見てはいけないものを見てしまったようだ。
バベル「あの写真・・・。」
この部屋では、OAPの資料以外見つけることはできなかった。
バベルは、部屋を出ることにした。
ドン!ドン!ドン!
バベルが部屋を出ようとした時、背後で音がする!
先ほどの女性が、水槽の内側から、必死にガラスを叩き続けている。
バベルは、水槽に近寄った。
中の女性は、必死にガラスをたたき続ける!
バベルは、日本刀を抜き、切る!とジェスチャーで伝える。
中の女性も笑顔で頷き、水底に屈むように縮こまった。
バベルは、日本刀を鞘に納め、集中する。
キーーーーン!
甲高い音が響き渡る。
ザッパーーーーン!
水槽の中身が流れ出す。
ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!
肺に入った水を大量に吐き出す女性。
女性「・・・助けてくれて、ありがとうございます。」
バベル「君は・・・。レイアさん?」
女性「はい。私を、助けに来てくれたの?」
女性の目から涙がこぼれている・・・。
バベルは状況が理解できなかった。
とりあえず、自分の上着をレイアに着せた。
バベル「レイアさん、外に出よっか?」
レイア「はい。お願いします。」
そういうと立ち上がろうとするが、体は細く、上手くたつこともできそうにない。
バベルは、彼女を抱きかかえる。
彼女は、とても軽く、抱いているのも忘れそうになるくらいだ。
バベル「とにかく、ここを出よう。」
バベルは、彼女を連れて、地下研究所まで引き返した。観音扉を通るのが苦労したのは言うまでもないだろう・・・。
~地下研究所~
壊れたエレベーターの前に着く。
バベル「おーい!アフロー!」
アフロ「何ですかー!」
バベル「新しい下着や服を落としてくれー!」
アフロ「分かりましたー!バベルさんも好きなんですねー!」
アフロが階段を駆け上がる音が聞こえる。
しばらくすると、上からバックに入った服が落ちてきた。
アフロ「バベルさーん!いま落としましたー!」
バベルはバックをレイアに渡す。
レイアは、服を着ようとするが、力が入らないのか、上手くできない。
バベルはレイアを手伝ってあげた。
レイア「あの、何から何まで、ありがとうございます。」
バベル「気にしなくていいよ。・・・でも、」
アフロの選んだ服は、夏服なのか、どれも薄着の物が多い。
バベル「アフロー!冬用の服が欲しいー!」
アフロ「オッケー牧場でーす!そういう指向なんですねー!」
また、しばらくすると、ビニール袋に入った服が落ちてきた。
バベルは、レイアに上着を着せる。
毛皮のモコモコが、見ているだけでも暑そうな感じの服だが、それでも細身の彼女は、寒そうに身を縮めている。
服を着終わると、バベルは最後に、地下研究室の腕時計を彼女の腕にはめる。
バベル「38、適合者みたいだ。」
不思議そうに見つめるレイアの顔は、パオによく似ている。
バベル「大丈夫、安全な場所まで連れていくよ。」
そういって、レイアと握手をする。
うれしそうに、微笑むレイア。
パオの元に連れて行っても大丈夫なんだろうか?問題にならないかな?
いろんな疑問もあったが、レイアが疲れているので、とりあえず、移動することにした。
バベルの体にロープを結びつける。レイアは、負担がかからないように、バベルが抱きかかえる。
ロープが、少し喰い込んで痛いだろうが、仕方ない。
バベル「アフロー!なるべく慎重に引き上げてくれー!」
徐々にバベルの体が、徐々に持ち上がる。
~10分後~
さすがに、安全運転にも程があるだろう。
バベルの手が届くところまで上がってきた。
バベルは、左手を伸ばし、最後はアフロに協力した。
1階に上がると、最初の位置から、動かしていないバイクがある。
まさか・・・!!!
ロープの行方を追うと、汗だくのアフロが居る。
バベル「アフロ、バイク使わなかったの?」
アフロは下を向いたまま答える。
アフロ「はぁ、はぁ、いや、パンツ物色してる間に、鍵を落とし・・・。」
アフロは、バベルを見た。その時に、バベルが抱きかかえる美女も視界に入ったのだろう。
アフロ「ふん、ふんん、いや、運動不足だったんで、それで!」
鼻息がうるさい。
レイアは完全に警戒している。
バベル「まあ、とにかく今日はこの家で休もう。レイアの部屋は2階?」
レイア「ごめんなさい。よく覚えてないの。」
アフロ「2階の部屋を使ってください!俺らが、1階で見張りをしてますから!」
不安そうなレイアに、バベルが優しく話す。
バベル「レイア、部屋の前で待機しておくから、何かあったら、音を出してくれ。さっきみたいに、すぐ駆けつけるから。」
レイアは、嬉しそうに微笑む。
バベルは、レイアを部屋に連れていき、約束通り、部屋の扉の前で休むことにした。
シャワーを浴びてさっぱりした、アフロも便乗して部屋の前で寝ている。
アフロ「バベルさん、明日は、俺が着替えを手伝いましょうか?」
この時、いつか、アフロを置いていく!と決心をしたらしい。
~ to be continued
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
6
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる