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60.

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60.

巨大な蛇 フカワは、君と目が合うと スーっと体を引き、水中へと姿を消した。

「リノ!」

君の声と ほぼ同時に、リノが木の実を床に叩きつけ、割れた木の実を大牛の方へと投げつけた。
割れた木の実が大牛の前に落ちると、その臭いに気づいた大牛が目を覚まし、すぐさま起き上がる。
大牛は 匂いの元から逃げ出そうと、その巨体を素早く動かした。


「ブゥモォォォ!」


大牛の動きを止めるように、水中からフカワがその巨体に絡みつく。

ボキッ!バキッ!
ボキボキッ!

フカワに締め付けられる大牛の 骨が折れる にぶい音が周囲に鳴り響く。

「リュート兄ちゃん、モョエルが.......。」

二人の目の前で 大牛は締め殺され、その巨体は 大きめの肉の塊へと変わってしまった。
周囲の水は 大牛の血で赤く染まるが、フカワを警戒しているのか、他の生物の姿はない。

フカワは 大牛だったものを一口で飲み込むと、君たちの方に 頭を向け、ゆっくりと水中に姿を消した。

「満腹になったのかな?
 おいらたち、助か...。」

「リノ、何かに掴まれ!」

次の瞬間、馬車の後方にフカワが噛み付いたのだろうか、馬車が激しく揺れる。
その衝撃で小柄なリノは 空高く舞い上がり、水面へと叩きつけられた。

フカワは リノに気づかなかったのだろうか、それとも君を狙っているのか、馬車の後方に噛み付いたまま馬車に巻き付き締め上げ始める。


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