上 下
102 / 103

87.

しおりを挟む
87.

野営地に迷い込んできた、透き通るような白い肌をした美しい女性は、君とリノの近くに歩み寄ってきた。


「始めまして。
 わたしはルシア。
 あなたと少し話しがしたいのだけれども。」

リノは警戒しながらも返事をする。

「オイラたちに何か用事があるのかよ。」

君はリノの敵意むき出しの態度に戸惑いながらも、リノにだけ聞こえるように小声で話しかける。


(リノ、ちょっとキツイ話し方じゃないか?)

(リュート兄ちゃん、コイツ・・・きっと悪魔だぜ。)


女性は、リノの声が聞こえていたのだろうか、軽く頷くと話を続ける。

「ええ、わたしはアタナたちとは種族が違うわ。
 でも安心して。あなた達に危害を加えるつもりはないから。
 わたしは弟を殺した悪魔を探しているの。」


「弟を殺した悪魔?」

「ええ、私の可愛いセフィラルドを殺した悪魔をね。」


「悪魔同士の殺し合いかよ。
 おいらたちには関係ない話だろ。」

リノの言葉に、女性は妖しい笑みを見せると、君を見つめる。

「関係ない話かしら。わたしの探している悪魔の名は、エイルシッド。
 偶然かしら、貴方と同じ名前みたいだけど...。」

ゆっくりと目を閉じたルシアが、再び目を開け、君を見つる。

その瞳は、恐ろしいまでに青く淀んでいる。
そんなルシアに見つめられている君は、自身の身体に異常を感じ取った。



しおりを挟む

処理中です...