【CHANGEL】魔界姫マリーと純粋な見習い天使ジャスの不思議な魔界記

黒山羊

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その世界に降臨する者

051・護る者の為に(2)

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ベルゼブイとジョチが、一撃必殺の消耗戦をしている部屋の前には、ドン・キホーテ、銀月の騎士、そして多くの天使兵が集まっていた。


「ドン・キホーテ殿、この部屋の中から邪悪な気配を感じますね。」

「うむ、扉の向こうから響き渡る爆発音、そして、この邪悪な気配。
 魔界でも感じたことがないほどの邪悪さじゃゾイ!」


そんな二人の会話に天使兵の隊長らしき人物が割って入る。

「悠長に話している暇はありませんよ!
 この部屋はベルゼブイ長官の研究室です。きっと悪魔がベルゼブイ長官を襲っているのです!」


ドン・キホーテは呟く...。

「ベルゼブイ、寿命の短い天使でありながら、数千年の時を生きる...。」

銀月の騎士は部屋に押し入ろうとする天使兵を先に行かせ、ドン・キホーテに声をかける。

「どうしましたか?」

「いや、大天使は神々との盟約により、仕える神と生涯を...生死を共にすると聞いておる。
 この世界に存在する神は、マリー様のみ。
 だのに奴は マリー様を知らず、不敬にも攻撃を繰り出しておった。」

「なるほど。
 神に直接仕えていないとすると、ベルゼブイ長官は大天使ではなかったと言うことですね。」

「そんな単純な話ではないゾイ。
 大天使でないのであれば、奴の長寿の理由はなんだと思うかの。」

「我々と同じ、肉体を与えられた使い魔…ではなさそうですね。」

「うむ。おそらく奴は・・・。」



「「「うわぁぁぁ!」」」

「「「助けてー!」」」


部屋の中に入った天使兵たちの悲鳴が聞こえてくる。


「ベルゼブイ長官、お気を確かに!」


ドン・キホーテと銀月の騎士は、お互いに見合わせ部屋へと突入していく。






部屋の中では、突入した天使兵の数は半数近くに減っており、天使兵だった者たちの花が咲いていた。

「どうしたというのですか!?」

銀月の騎士の言葉に、ベルゼブイが笑みを浮かべながら答える。

「ぐふふ、いいところに来たわい。
 銀月の騎士よ。強大な悪魔を倒すために我が糧となるのだ。」

そう言いながらベルゼブイは 銀月の騎士に掴みかかってきた。
ベルゼブイの咄嗟の行動に銀月の騎士は右手首を掴まれてしまったのだが・・・。


「ガウ!」

ジョチの鋭いキバが、銀月の騎士の右肘を噛み千切る。
激しい痛みに襲われながらも、銀月の騎士は目の前の光景に目を疑った。

ベルゼブイの持つ銀月の騎士の右腕は生気を吸われるように干からびていき、最後には消滅してしまった。

「な!
 いったい何が!?」

混乱する銀月の騎士の背後からドン・キホーテが前に躍り出てベルゼブイに渾身の一撃を繰り出す。


ベルゼブイは完全に見切っていたが、二人の傍にいるジョチに警戒したのか瞬時に距離をとると離れた位置から特大の炎を召喚し、不敵な笑みを浮かべる。

「蒼き狼よ。貴様は強い。
 おそらく神々と等しい力を持った わしに匹敵するほどの強さだ。
 しかし、その人として生まれたもった甘さが貴様の弱さとなるわい。
 ・
 ・
 ・
 この炎から護りきれるかな。」


ベルゼブイの放った炎は、ドン・キホーテと銀月の騎士を襲う。
ジョチは、二人の前に立ち大きく吠えた。その衝撃波で炎はかき消される。

「ぐふふ、護れ護れ!
 その命、尽き果てるまで!!!」

ベルゼブイの頭上には、無数に召喚された炎の塊が浮かんでいる。
その数は、どんどん増えていき、何十、何百となっている。

ジョチは防ぎきれないと判断したのだろう。回避に専念しベルゼブイの隙をみて必殺の一撃を狙う戦法を捨て、真っ向勝負でベルゼブイに襲い掛かる。

ベルゼブイは襲い掛かってくるジョチに全ての炎を狙い放つ。
ジョチは炎を被弾しながらもベルゼブイに一直線で近づき、その喉元に鋭いキバを立てる。



しかし、ジョチのキバはベルゼブイに届くことはなかった。



ベルゼブイの放った防壁の魔法により、ジョチはその動きを止められてしまう。

「ぐふぐふぐふふ、天使たちの得意魔法を忘れていたようだな。
 先ほどの天使兵たちも わしの役に立てて光栄というものだわい。」

ベルゼブイは身動きの取れないジョチの喉元に優しく手を添えると、その手から最大級の炎を召喚する。

「転生後に死んでしまっては徳もなく、使い魔にもなれない。
 貴様の無様に滅びる姿、わしの脳裏に永久に留めておいてやろう。
 ・
 ・
 ・
 そうそう、貴様が消滅した後に 奴の小娘も命乞いをさせ ゆっくりと殺し、その魔力を取り込んでやるから安心するといい。
 ぐふ、ぐふふ、ぐふふふふふふ。」

身動きを封じられているジョチは、激しく抵抗しようと暴れている。
決して炎に焼かれる苦痛から暴れているのではないだろう。
大切な者を奪われる恐怖と、護ることのできない自身への怒りに耐え切れず暴れているようあった。


その様子を遠くから見守っていた銀月の騎士は、ドン・キホーテに提言する。

「ドン・キホーテ殿、いまの我々では万が一にも勝てないでしょう。
 しかし、貴方を逃がす時間くらいなら稼ぐことができます。
 女神ディーテの御息女に危機をお伝えください。」

「・・・すまぬ。」

ドン・キホーテが指標玉を起動し始めると、何かに気付いたようにベルゼブイが視線をドン・キホーテに送る。
ドン・キホーテの体が光に包まれ始めたとき、ベルゼブイは目にも止まらぬ速度で一直線にドン・キホーテに詰め寄ってきた。


「させません!」

銀月の騎士は、ベルゼブイとドン・キホーテの直線上に立つと、ベルゼブイの接近を身を挺して防いだ。

「ぐぬぬぬ、銀月の騎士よ、なぜ邪魔をした!」

「さあ、なぜでしょう。
 宿敵に会い、昔を思い出したから・・・でしょうか。」

 

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