#LA一軍男子の正しいなり方

ゆくる

文字の大きさ
2 / 3
#正しいLA一軍男子のなり方

2

しおりを挟む
4歳までの幼少期をアメリカで過ごした俺は、日本語が下手だった。
アメリカ人の母親が死んで、日本に移り住んでからも、ハーフって容姿もあってか俺は周りからは浮いた存在だった。

純粋無垢な周りの子供は、純粋な目をして辛辣な言葉を俺に向けてくる。
相手に合わせ、空気を読む事は自然と身についた。
器用にならざるを得なかったのかもしれない。

---

叔父の家はビジネス街の一画にあるアパートだった。
派手な色の壁紙を除けば悪く無いセンス。
一つ一つの部屋も広いし、2人で当分暮らしていくには不自由しないだろう。
家電だって何なら俺んちより立派に見える。
物価高円安の影響でひーひー言っている日本人の中では、庄司は楽な生活をしている方じゃないだろうか、高校生の俺が言うのもなんだが。

昨晩真夜中に家に到着した俺は、荷解くこともせずに当てがわれた自室のベッドに早々に横になった。
フライト中寝ていたとはいえ、長旅は疲れないはずもなく、目を閉じてからは夢も見ずに朝までぐっすり寝てしまった。
微睡む意識の中で、叔父が出勤する声をかけてくれたような気もする、夢じゃなければだけれど。

---

「フレイ!留守番大丈夫だったか!?いきなり
1人にして心細かっただろ!ちゃんと飯食ったか?その服、そんな服持ってきてたのか?」

庄司は帰宅して早々早口で喋りまくるから、返事をする隙間もない。
片手で耳を塞ぐジェスチャーをしてみたが、相手は全く興奮冷めやまぬ感じだ。

「あー‥庄司さん、俺もう17歳だよ、子供じゃないし留守番くらい1人でできる、あと服は近くのショップで買ってきたやつで散歩してたら見つけて買った」
「あのなぁ17歳はまだまだ子供だぞ、お前になにかあったら兄さんに殺されちまう、え、ちょっとまて、買い物1人で行けたのか?変なやつに捕まらなかっただろうな?」
「大丈夫だったよパパ」
「その呼び方やめてくれ」

冗談のパパ呼びが余程嫌だったらしくブンブンと庄司は顔を振った。
しばらく小言が続きそうだったので、俺は彼の背中を押しながらぐいぐいとリビングの方へ無理やり歩かせた。

「お腹減ったし、食べながら話そ」

庄司の眉間の皺は取れなかったが、リビングに到着したところでやっと彼の意識はテーブルに向けられる。
リビングには空腹には辛い食事のいい匂いが漂っていたからだ。

「‥これ全部フレイが作ったのか?」
「そ、勝手に冷蔵庫のもの借りた、ごめんね」
「そんなの全然いいが、そうかーー料理つくれたのかフレーーイ!」

テーブルに置かれた料理の数々を見ながら、庄司が俺の方へくるりと回って、ぎゅっと俺の肩を抱きしめた。リアクションがいちいち欧米くさい。
内心びっくりしながらどうしようか考えていたら、数秒抱きしめられただけでパッと庄司は離れていった。心なしか瞳が潤んで見えたぞ。

「そうだよな、元は兄さんと二人暮らし、家事スキルだって嫌でも身につくもんな」
「待って、しんみりするの無しね」
「ああ、うん‥早速食べようか」

仕事用のジャケットをハンガーにかけた庄司は、テーブルの椅子を引いてそこに座った。
切り替えの早さに俺もつられて笑いながら、彼の正面に座る。

卓上に並べられたのはトマト缶で煮た鶏肉と豆、簡単なスープにマッシュポテトの付け合わせ、蜂蜜のヨーグルトがけに、カットしたバケットだ。
庄司の冷蔵庫には日本っぽい食材は調味料くらいしか見当たらなかった。日本料理を作るのは早々に諦めたが、訳の分からないジャンボサイズの野菜やロブスターなんかが入っていたらお手上げだったけれど、まぁなんとかなる食材をなんとかして作っただけだ。
特に手の込んだ料理でもないけれど、それでも庄司はキラキラした目でそれらをうまいうまいと食べていく。
その表情は少しだけ親父と似ていた。
言ったらまたやめろと言われそうだから言わないが。

明後日の学校初日に向けて本格的な買い出しはいつにしようかなんて話していた時、不意にアパートのチャイムが鳴った。
時計を見れば20時を回ったぐらいだ。
こんな時間に誰だろうと庄司が玄関に向かう前に、玄関のドアが開く音がした。

「誰このこ?」

現れたのはサラサラの茶髪をストレートに伸ばした30代くらいの女性だった。つやつやの唇に、はっきりとした眉はいかにもアメリカの白人といった風貌で、中々に美人だ。

いきなりの登場に驚いて固まっている俺たちを一目見た彼女は、眉を吊り上げて庄司を睨む。

「この子いったい誰なの!?」

同じセリフを二度繰り返したが、聞きたいのは俺も同じだ。誰だこの人は?
明らかに怒った雰囲気の彼女が庄司を睨むと、顔面蒼白な庄司が天井を仰いでオーマイゴットと呟いていた。

「ジョージ、ちゃんと説明して!」
「ジョージ?」

俺の聞き間違えじゃなければ今ジョージって聞こえたぞ。

「ああ‥庄司より呼びやすいからジョージにしているんだ」

なるほど、デコピンをデコイと呼ぶ現象と同じか。

「今そんな事どうでもいいから、何で私の知らない子がこの家にいるの?私をこの家から出て行かせたのはこの子の為?まだティーンじゃない!まさか、ちょっと待って、あなたゲイなの?だとしても未成年を囲うなんて最低よ!」

なんてことだ、このままではまたしても庄司にゲイ疑惑が浮上する。勿論そんな訳無いと思うが、連日ゲイに疑われるとは、実は素質があるのかもしれない。
NOと叫んだ庄司さんは、椅子から立ち上がりそそくさと彼女に近寄った。

「彼は俺の甥なんだ!日本からこっちの学校に留学するために昨日入国したばかりで、住むところがないから俺のところで預かる事にしたんだ」
「留学?嘘でしょ!私との結婚を後回しにしてその子の留学を優先したの?」
「え、何?叔父さんこの人と結婚するの?」
「ああ、えーっとそうなんだ、この人は俺のフィアンセのジェシカ」

情報が混雑している。
えーっと、庄司はこのジェシカと結婚予定で、同棲かなにかしていたところに俺が突然転がり込んできたおかげでジェシカはこの家から追い出されたと。
いや、全然そんなの聞いてないけど!

「それなら最初から言ってくれたらよかったのに!」

そんな状況だと知っていたら、居候なんてお願いするつもりなどなかった。親父は知っていたんだろうか?
今俺すげー空気読めないやつじゃん!?

「ハハ兄さんにお前を頼まれたとき嬉しくってさ、つい」
「「ついじゃない」」

俺とジェシカの声が被った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

処理中です...