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夾竹桃

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近づくべきか遠のくべきか

12. 玉石混淆(ぎょくせきこんこう)

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[健太郎]


__放課後


生徒は桜の散る様にさっさとはけていき
僕は風情な窓の外なんかには目もくれず
これから何が起こるのか分からずに身構えていた。


教室には僕と名前も知らない義足の男子だけ



「あのさ」



ストレスで胃が痛いや…





「さっきは変な風にいじったりしてごめんな、まだあんま話した事ないのに」



……あぁ…やっぱりそうなんだ…



義足の彼は申し訳なさそうでもなく、ただ顔をしかめて投げやりに言うだけだったけど



そういう人なのかとやっと理解出来た




というか、確信できたことに僕は安心してしまった



「別にいいです…!
こ、これからもいじっていい…です」


必要に思えない回答ばっかりだけど

緊張でつい出ちゃうんだ…




特にこの人に対しては




どうも緊張が解れる事が無いみたいだ



人からの評価なんて気にもしてなかったけど。




何故かこの人には嫌われたくない、むしろ好かれたい




そんな風に思った。


「プッ、いじっていいって何それ笑、やっぱ変なやつだわ笑」

「ふふっ…僕、変なやつだけど、あの…」

「…?」



「…もし良かったら…友達になってくれますか…?」


今まで彼を見る度にもどかしく思ったのは、友達になりたかったから…


なのかな……?


「いーよ、これから宜しくな」


そう言って少し困った顔になった彼は、優しく握手してくれた


「俺は一葉仁、お前は奏…」

「か、奏健太郎です!…じ…一葉君…」

「仁でいいって笑」

「仁…君…あ、慣れたら言えるかもだから…」

「ふっ奏って相当人見知りだろー?笑」

「ははっ、かなりね…」



なんだろう、ここまで良くしてもらってるのに緊張が全く取れないや


心臓の動きが早くて、顔がものすごく熱い


「俺、実はあるグループと仲良くなって、今日から一緒に居るんだけどさ」

「あっうん…」

「本当は、俺も人のこと馬鹿にする奴とか苦手だし、正義感もって対応したいんだけどさ…」

「うん…」

「出来なくてお前に変な事言うかもだけど、気にしないでくれよな…」

「うん、うん大丈夫…!」





この人ってなんで




こんなに素敵に見えるんだろう
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