悪役令嬢?なら、トコトンやってあげましょう

七海のうえ

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作戦実行らしい5

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【おはようございます、アレン様】

「……」

やけに眩しい光と私の相棒とも言えるハイタカの声で目を覚ます。
重い瞼をこじ開ければ、ハイタカがベットの丁度真横にあるカーテンを開けている姿が良く見えた。
いつもなら直ぐに活動を再開する体が今日は、どうしても動かない。それに、体は熱っぽいし、まるで人ひとりが乗りかかっているかのように体が重い。オマケに頭痛もある。明らかに風邪という症状が頭を過ぎったが、私はまだやらなければいけないことがあると、無理矢理にでも体を起こそうと力を入れた。

【無理し過ぎですってば、ええ加減大人しく寝てください】

何とか上半身を起こした所でハイタカに肩を押され、またベットに後戻りだ。
嫌だの言葉ひとつ出たらいいのだが、どうやら風邪のせいで喉までやられてるらしく声が思うように出せなかった。
何とかハイタカに目で訴えかけるが、流石に今回は駄目ですよと静かな微笑みで返されてしまった。

「……ゴボッ、ゲホッ」

痛い。喉が裂けるように痛い。
咳をしただけで喉に激しい激痛が走る。前世でも今世でもここまでの痛みを喉に感じた事が無いというほどの激しい痛みに私は表情を歪めた。咳をした反動からか少し後から頭痛も襲ってくる。

【……なんでこんなんなるまで無理したんですか】

「……(しょうがない事だったんだよ)」

ハイタカは目尻に涙を浮かべ、悲しそうな表情をしている。こんな表情をさせたい訳じゃ無かったのにな、と私も悲しくなった。
ハイタカは私の従者の中でも一番、私を支えてくれてる人物で私の考えを見透かしてるような人物だった。
私も、チートな魔法を使いハイタカに気付かれぬように記憶を見たりしてお互いに考えを読み合っていた。

それを私は利用してハイタカと色々な行動を共にしてきた。この調査だってタイガやヴォルクにも手伝ってもらうことはあったが、大体はハイタカと私の二人での調査であった。
ハイタカは私のどんな無茶な要望も聞き入れてくれた。文句を言う事も有るが、いつも頼んだ事を完璧に終わらせてくれる。
一言で言うなら、完璧な人材。これに尽きるだろう。こんな素晴らしい人材を長年持っていたヴォルクと相方のタイガが羨ましい限りだ。(ハイタカの記憶読んだ)
まぁ、この話は置いといて。
取り敢えず、私達はそれなりの距離にいる主従関係にあった。
遠くて、近いような関係。上司と部下の関係でも無く、相棒でも無い。主従関係であった。
唯一、私を本気で止めないで自由に行動させてくれる相手でもあった。

【だからって!心配はしますから!】
ハイタカが声を荒らげた。
この間も私の考えを読めるハイタカはとうとう涙がこらえられなかったのか大粒の涙を零して、鷹の姿に戻ってしまった。

「……」
心配してくれたのは嬉しかったよ。

でもね、私はまだやらなければいけないことがある。それだけは見逃してね、ハイタカ。








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