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「高野、父さんの仕事ってどんなことしてんの?」
サッカー観戦後、俺はリムジンに星を詰め込むことに成功した。
鴉間と三津谷にも手伝ってもらったけれど。
そして、三人をそれぞれの家に送り届けてから、高野に聞いてみた。
俺が父さんの仕事を継いだとして、そこにはどんな未来が待っているのだろうか?
ちなみに、俺は子供の頃から会社のことは気にしなくてもいいと言われている。
たまたまこれまで世襲で問題なかっただけで、世襲させるという家訓があるわけではないらしい。
「世襲よりは、能力のある者に任せたほうがいいだろう」というのが父さんの考えだった。
「星様の影響ですかな?」
鴉間と三津谷が星のことを名前で呼んでいるのを聞いた高野が「私も葛城様のことをお名前でお呼びしたいですな」なんて言い出して、星はそれにあっさりと許可を出したのだ。
「俺には苗字で呼ぶようにって厳しいのに、ひどくない?」
そう拗ねると、仕方ないから学校以外では俺も星と呼んでもいいことになった。
ある意味、高野のおかげである。さすが星に認められた最強サポート役だ。
「遥翔様から直接旦那様にお聞きすれば、旦那様がお喜びになるでしょう」
別に父親を喜ばせる必要はないだろう。
俺はただ、星の話を聞いて将来のことを考えてみたいと思ったのだ。
そんな気持ちが露骨に顔に出ていたようで、高野は笑った。
「それでしたら、私からお話しいたしましょう」
高野は父さんの社長業というものをざっくりとだが、俺にもわかりやすく教えてくれた。
そして、やりがいや面白さというものについては、やはり父さんに聞いてみるのがいいだろうと話を締め括った。
確かに、高野から聞いた社長業の要点だけでは、社長業の面白さややりがいについてはよくわからなかった。
しかし、あらゆる状況を俯瞰して、適切な状況になるように調整するというような部分については、星が行っていることに似ているような気もした。
まぁ、星の場合は、その後の行動も全て自分で行っているわけだが。
その後、俺は、芸能界のことや、研究職というものについても自分なりに調べてみた。
好きな人に言われたから興味を持った……我ながら、実に単純な思考である。
「なぁ、星は俺にはどんな将来が似合うと思う?」
あの後、年末年始になり、なかなか星には会えない日々を過ごした。
星に会えないつまらない日々の中で色々調べはしたけれど、結局、自分が何をしたいのかはわからなくて、冬休み明けのいつもの自習室で星に聞いてしまった。
しかし、星からは率直なアドバイスは出てこず、とりあえず、呼び方を注意された。
「学校では、下の名前で呼ばないでって言ったよね?」
「そのルール、二人きりの時は無効になりませんか?」
「なんで敬語?」
「敬語なのは、願いが叶うといいなという願掛け的な?」
「願掛けするほど呼びたいもの?」
「下の名前のほうが親しい感じがするから」
「それはそうかもだけど……二人きりの時だけのルールにした結果、油断しやすくなって、二人きりじゃない時に出ちゃったりしない?」
「それは大丈夫だと思う。小学校の時に女子が三津谷を呼び出したのは、俺も結構トラウマだから」
星は俺をじっと見て、それから頭を撫でた。
俺から星の頭を撫でることはあっても、星が俺の頭を撫でるのは初めてだったから驚いたし、緊張した。
「……何?」
「小学校の頃の遥翔くんを撫でてあげたかったなと思って」
「慰めてくれるの?」
「慰めるというか、褒めてるんだよ」
「褒める? 何を?」
「僕なんて、高校生になっても女の子たちが怖いんだよ? 女の子というか、恋する乙女が怖い感じ……」
恋する乙女というか、飢えた獣というか、欲望と願望を垂れ流した存在だ。
もちろん、そうじゃない女生徒たちもいるのだが、ぐいぐい来る子たちはそんな感じだ。
「それなのに、遥翔くんは小学生の時にはもうそういう子たちと向き合ってたんでしょ? 偉いよね」
「向き合ってたというか、子供だったから逃げようがないというか……逃げようがないのは、今も同じかもしれないけど」
狭い学校の中では逃げるのも一苦労だ。
「避けようがないから結果的に向き合っただけでも、偉いね、頑張ったねって褒めてあげたいよ」
そう言った星がまた俺の頭を撫でる。
「……なんか、今になって褒められるのも、悪くないな」
「そう? よかった」
その日はそんな穏やかな時を過ごして、勉強して、校門で「じゃあ、また明日」って手を振る星を捕まえてリムジンに詰め込んで家に送ったりして、帰ってから肝心なことに答えてもらっていないことに気づいた。
「星、昨日、聞き忘れたんだけど」
「あ、気づいちゃった?」
「わざとか?」
「いや、僕も家に帰ってから気づいたんだよね。遥翔くんの質問に答えてないことに」
「でも」と、星は困った表情を見せた。
「遥翔くんはなんでもできそうだから難しいね。やっぱり、自分で好きなことを探したほうがいいと思うよ」
「やっぱりなんでもできる俺じゃ少年漫画の主人公にはなれそうにないな……」
俺は自分の有能さに深くため息をつく。
サッカー観戦後、俺はリムジンに星を詰め込むことに成功した。
鴉間と三津谷にも手伝ってもらったけれど。
そして、三人をそれぞれの家に送り届けてから、高野に聞いてみた。
俺が父さんの仕事を継いだとして、そこにはどんな未来が待っているのだろうか?
ちなみに、俺は子供の頃から会社のことは気にしなくてもいいと言われている。
たまたまこれまで世襲で問題なかっただけで、世襲させるという家訓があるわけではないらしい。
「世襲よりは、能力のある者に任せたほうがいいだろう」というのが父さんの考えだった。
「星様の影響ですかな?」
鴉間と三津谷が星のことを名前で呼んでいるのを聞いた高野が「私も葛城様のことをお名前でお呼びしたいですな」なんて言い出して、星はそれにあっさりと許可を出したのだ。
「俺には苗字で呼ぶようにって厳しいのに、ひどくない?」
そう拗ねると、仕方ないから学校以外では俺も星と呼んでもいいことになった。
ある意味、高野のおかげである。さすが星に認められた最強サポート役だ。
「遥翔様から直接旦那様にお聞きすれば、旦那様がお喜びになるでしょう」
別に父親を喜ばせる必要はないだろう。
俺はただ、星の話を聞いて将来のことを考えてみたいと思ったのだ。
そんな気持ちが露骨に顔に出ていたようで、高野は笑った。
「それでしたら、私からお話しいたしましょう」
高野は父さんの社長業というものをざっくりとだが、俺にもわかりやすく教えてくれた。
そして、やりがいや面白さというものについては、やはり父さんに聞いてみるのがいいだろうと話を締め括った。
確かに、高野から聞いた社長業の要点だけでは、社長業の面白さややりがいについてはよくわからなかった。
しかし、あらゆる状況を俯瞰して、適切な状況になるように調整するというような部分については、星が行っていることに似ているような気もした。
まぁ、星の場合は、その後の行動も全て自分で行っているわけだが。
その後、俺は、芸能界のことや、研究職というものについても自分なりに調べてみた。
好きな人に言われたから興味を持った……我ながら、実に単純な思考である。
「なぁ、星は俺にはどんな将来が似合うと思う?」
あの後、年末年始になり、なかなか星には会えない日々を過ごした。
星に会えないつまらない日々の中で色々調べはしたけれど、結局、自分が何をしたいのかはわからなくて、冬休み明けのいつもの自習室で星に聞いてしまった。
しかし、星からは率直なアドバイスは出てこず、とりあえず、呼び方を注意された。
「学校では、下の名前で呼ばないでって言ったよね?」
「そのルール、二人きりの時は無効になりませんか?」
「なんで敬語?」
「敬語なのは、願いが叶うといいなという願掛け的な?」
「願掛けするほど呼びたいもの?」
「下の名前のほうが親しい感じがするから」
「それはそうかもだけど……二人きりの時だけのルールにした結果、油断しやすくなって、二人きりじゃない時に出ちゃったりしない?」
「それは大丈夫だと思う。小学校の時に女子が三津谷を呼び出したのは、俺も結構トラウマだから」
星は俺をじっと見て、それから頭を撫でた。
俺から星の頭を撫でることはあっても、星が俺の頭を撫でるのは初めてだったから驚いたし、緊張した。
「……何?」
「小学校の頃の遥翔くんを撫でてあげたかったなと思って」
「慰めてくれるの?」
「慰めるというか、褒めてるんだよ」
「褒める? 何を?」
「僕なんて、高校生になっても女の子たちが怖いんだよ? 女の子というか、恋する乙女が怖い感じ……」
恋する乙女というか、飢えた獣というか、欲望と願望を垂れ流した存在だ。
もちろん、そうじゃない女生徒たちもいるのだが、ぐいぐい来る子たちはそんな感じだ。
「それなのに、遥翔くんは小学生の時にはもうそういう子たちと向き合ってたんでしょ? 偉いよね」
「向き合ってたというか、子供だったから逃げようがないというか……逃げようがないのは、今も同じかもしれないけど」
狭い学校の中では逃げるのも一苦労だ。
「避けようがないから結果的に向き合っただけでも、偉いね、頑張ったねって褒めてあげたいよ」
そう言った星がまた俺の頭を撫でる。
「……なんか、今になって褒められるのも、悪くないな」
「そう? よかった」
その日はそんな穏やかな時を過ごして、勉強して、校門で「じゃあ、また明日」って手を振る星を捕まえてリムジンに詰め込んで家に送ったりして、帰ってから肝心なことに答えてもらっていないことに気づいた。
「星、昨日、聞き忘れたんだけど」
「あ、気づいちゃった?」
「わざとか?」
「いや、僕も家に帰ってから気づいたんだよね。遥翔くんの質問に答えてないことに」
「でも」と、星は困った表情を見せた。
「遥翔くんはなんでもできそうだから難しいね。やっぱり、自分で好きなことを探したほうがいいと思うよ」
「やっぱりなんでもできる俺じゃ少年漫画の主人公にはなれそうにないな……」
俺は自分の有能さに深くため息をつく。
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